・3

「あー!!!!!!」



「うるせーな、なんだよ‥‥‥‥」麻美さんの声に、泉君が呆れたように答える。







麻美さんの明るすぎる色に、思わずヘッドフォンををぎゅっと押しつける。



突然明るい場所に出た時みたいに、目の前がチカチカする。







「数学の宿題忘れてた‥‥‥‥!!」



「あ、やべ。おれもだ」



2人して鞄からノートを取り出したかと思うと、競うように教科書のページを捲り始める。



「シノ、宿題やった?」



「最後の問題だけ、難しかったです‥‥‥‥」



「しののめさん、宿題やったの!?」すかさず麻美さんが、筆箱を探しながら声を掛けてくる。




神様!!とでも言いたそうな目だ。いつのまにか、泉君もこっちを見ている。








「「見せて!!!!」」







えっと‥‥‥‥。



ちら、と桜庭君を見ると、「いいんじゃない?」と背中を押してくれる。






「合ってないかもしれませんが‥‥‥‥」











ガラッ____と音がして、担任の先生が教室に入ってくる。






「やべー!!!」言いながら、すごい速さで宿題を写していく泉君。



「東雲サン、まじサンキュー!!!」



「‥‥‥はい」と私が返す頃には、もう自分の席に座っていた。



嵐みたいな人だな‥‥‥。






「しののめさん、ありがとう!!助かったよー!!」麻美さんが黄色い笑顔で、私のノートを返してくれた。













なんか、不思議な朝だったな、なんて。



夢見心地な気分で授業を受ける。



クラスの人とまともに話したの、いつ以来だろ。





「‥‥‥‥」





やっぱり、ちょっと嬉しい。




口元が緩んでいるのが自分でも分かる。










「しののめさん‥‥‥」



「‥‥‥‥!!」



声のした方を見ると、麻美さんが、じっと私を見ていた。



私、変な顔してた‥‥‥‥?





リスみたいな大きい瞳で見つめられてると、逸らせなくなる。


しばらく、彼女と見つめあってしまう。



大きくて。きらきらして。きれいで_____。





「なんかずっと、嬉しそうだなぁって‥‥‥」



「えっ!?あ‥‥‥‥」





どうしたらいいか分からなくて、「すみません」と反射的に謝ってしまう。




「なにが?」と首をかしげてこっちを見つめてくる。



また、が逸らせなくなる。






訳がわからなくなってあわあわしていると、「ふふふ」と笑われてしまった。



私、変なことしたのかな‥‥‥‥?





「しののめさんて、面白いね」



「えっ‥‥‥‥?」



「今まであんまり話したことなかったけど、結構イケるなーって」



「‥‥‥‥?」





イケるな、とは‥‥‥‥?



隣でにこにことしている彼女を見つめながら、「?」を浮かべる。








「あ、あの‥‥‥‥」イケるな、がよく分からないので、話題を変えることした。





「お弁当‥‥‥‥」



「お弁当?」一瞬不思議そうな表情をして、



「あ、一緒に食べる?今日」と嬉しそうにする。少しだけ声が黄色くなる。





私は今朝のお弁当のことを聞きたかったんだけど。



意外な答えが返ってきて動揺してしまう。





「ぇ、‥‥‥‥えっ!?」いきなり、そんな。



しかも、お昼に誘われるなんて‥‥‥‥。



改めて話してみると、普段はそこまで色が激しくないみたい。



これなら、眩しすぎることもなさそう。






「いつもどこで食べてるの?」



「食堂‥‥‥‥」





言ってから、あ、と思う。



麻美さんはお弁当なのに‥‥‥‥。






「一緒に、食べれないですね‥‥‥」



「いいよ、持ってくし!!あと、誰か適当に誘ってい?」



「あ‥‥‥‥、はい」  






誰が来るんだろ。



ちょっと緊張する。







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