転生蛇は生き残りたい
@banananeko
プロローグ―生まれる
「かハッ!」
強烈な痛みとともに視界がちかとかと歪む。苦しげに細められた視界には、強く光る車のライトだけが鮮明に映った。
そして初めて理解した。俺は車に轢かれたのだと。そして、自分の体だからわかる。これは死んだな、と。
俺は大学生だった。普通に友達がいて、犯罪などに手を染めた経歴もない、テストも平均点くらいのごく普通の。
だから、別に車に轢かれる前だって、別に信号無視をして渡ったとかではない。普通に大通りの信号を渡っていたら、不幸にも飲酒運転と思しき車が突っ込んできたのだ。
ああ、そういえば一つだけ普通じゃないところがあった。今の事故からもわかる通り、俺は不幸体質なのだ。しかも結構の。
視界が暗くなっていく中で、そこら中に悲鳴が飛び交うのが聞こえた。早く助けろ、とか言っている気がするが、薄れゆく意識の中では、良く分からなかった。
―――――――
ぽかぽかと体が温かい。ここは天国か。目も見えないし。
天国って本当にあったんだなあ。俺は信じてるわけでも、信じてないわけでもなかったけど。なんというかその中間って感じ…?だった。
それにしても考えているのって脳じゃなかったのか。現に今普通に考えられている。
前世の常識で少し不思議に思いながら、ぽかぽかとした感覚に意識を集中させた。
天国なら前に亡くなったお祖母ちゃんもいるだろうけど、この暖かい感じをもう少し味わかった。
―――――――――
何時間経っただろう。こたつにぬくぬくと包まれているときくらい長居してしまった。後ちょっと、後ちょっとと思ってたら、いつの間にか時間が経っていたのだ。もし天国なら時間はないかもだけど。
ちなみに今はその暖かい感じが消えて、なぜか体の芯が通っている?感じがするから出てみようと思ったわけだ。まあ、消えてから出ようと思ったことを許してほしい。そういうもんなのだ。
そんな誰にか
上下がぐるぐると回転する。慌てて掴まる暇もなく、何度もぐるぐると回転し、吐きそうになっていたところで止まり、バリンと卵が割れるような音がした。
うえ、吐きそうである。吐かなかったのは胃の内容物がなかったからだ。あったら、吐いてた。こちとら乗り物酔いがしやすかったほうなのだ。地獄だった。
「しー、しゅー、しー、しゅー」
ふう、やばい。吸って吐いて、吸って吐いて。
それにしてもここ天国じゃなかったんだ。周囲を見渡し思う。
ここは大きな洞窟で、殻のようなものが俺の周りに散らばっていた。
そして蛇?たちがたくさん俺の周りにわらわらとまみれていた。
さっきは天国だと思ったけど、今はなんか普通に目も見えるし感覚もある。今から考えてみれば、あのときは今ここに散らばっている卵の殻?の中で体が作られていたのだと思う。
ということは輪廻に則って俺は転生したってこと…?
でももしそうなら前世の記憶を引き継いでいるのはおかしい気がする。前世で、もし前世の記憶を持ってる人が生まれていたら大騒ぎになったはずだし。
ということは俺は例外な可能性が高い。前世の不幸体質云々が関係して輪廻の装置?みたいなのから外れたのかもしれ…。
「グラアアアアアアア!!!!」
大きな咆哮が俺の思考を途切れさせた。
いつの間にか眼の前に、いた。前世の知識で言えば、ドラゴンとしか言えない、途方もない生物が。
漆黒の
それはまさにこの世の理不尽を体現していた。
その生物―まあ仮にブラックドラゴンとでも呼ぼう―は、20匹ほどまとまっている―俺とともに生まれたのは100匹ほど―蛇たちをじっと見ているようだった。
よだれを垂らしながら、鋭い牙をむき出しにしている。
その蛇たちは危険を感じたのか慌てて逃げようとするが、鋭い牙が音もなくその体を引き裂き、飲み込んだ。
その体から大量の血があふれる。
もうその光景を見たときには走り出していた。
もうさっきまで考えていたことなんてどうでもよかった。ただ、あの怪物から逃げたかった。
「しゃっあ、しゃあっ、」
あの怪物から逃げることだけが頭を占める。
だが。
「ガアアアアアア!!!!」
凄まじい鳴き声が俺の後を追った。
他にもたくさんいたのに俺を狙ってきたってことは、やっぱり不幸体質引き継いでたんだね。どうでもいいことを考えながら、人生一の全力疾走をした。
逃げる、逃げる。
――――――――
投稿はじめました。これから数日間毎日投稿させていただきます。
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少し誤字があったので変更させていただきました
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