第2話 子供じゃないです
◇6月26日(土) 13:15
「...なぁ、今からでもキャンセルできないか?」
「無理に決まってんだろ。どんだけビビってんだよ」
「...だって...てか、何で俺なんかに会いたいんだよ」
「しらね。そこまで詳しく聞いてねーし。まぁ、お前が年下が無理ってことならちゃんとお前の口から言うべきだろ」
「...いやいや...まぁ...そうなのかもしれんけど...」
すると、「お、お待たせしました//」と言われて振り返るとそこには写真以上に可愛らしい女の子が立っていた。
【挿絵】
https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093079023574327
いや、そうじゃなくて...なんだこの格好...。
エロすぎないか?
肩も出てるし、谷間も...と、思わず凝視してしまうと「あの...//そんなに見れるのはちょっと...//」と、胸を手で隠す彼女。
「ね?言ったしょ?こいつこういう服好きなんだよ!」
てめぇの仕業か!おい!現役高校生になんちゅう服を着させてんだよ!
「あはは...//その...喜んでもらえたならよかったです...//」と、照れながらも笑う姿はまさに識宮さんそのものだった。
「よーし!んじゃ、揃ったし行くぞー!」という掛け声とともに俊樹の後ろを2人で歩く。
「えっと...初めまして。
「...初めまして?...あっ、識宮...風夏です//...あの...俊樹さんから話聞きました...。最近彼女さんと別れたって...//」
「あぁ、まぁ彼女曰く付き合っていなかったから、彼女ですらなかったんだけどねwいやー、この年までまともに恋愛してないとこんなことになるんだなー」と、自虐風笑いを取ろうとするが「...そうなんですね」と、哀しそうな顔をされる。
やめてくれ。そんな可哀想な奴を見る目で見つめるのは...。
「そういえば、えっと...識宮ちゃんは...」「
「あっ、ご、ごめん...。えっと、風夏さん「風夏です」
「風夏...は...どこの大学に行ってるの?」
「松葉女子大学です...//」
松葉女子だと?まじかよ。超頭のいいお嬢様学校じゃねーか。
「ふぇー、すっごいね。松葉女子か...」
「お兄さんはどこで働いてるんですか...?」
お、お兄さん!?何だその最高な響きは!!
「...えっと...普通の中小企業で事務関係の仕事してるよ。経理とかそういうのをメインに」
「そうなんですね...//かっこいいです//」と、目をキラキラさせている。
いやいや全然かっこよくないぞ。
俺は6年目だがまだ下っ端だし、仕事はできんし...。
そんな会話を交わしていると、「よし!ここだ!」と言われて到着したのはカラオケだった。
「って、いきなりカラオケかよ」
「いやいや、盛り上がるところと言えばカラオケっしょ!歌を歌えばすーぐ仲良くなれるだろ!」
「...てか、こっちはカラオケなんて大学以来なんだが?」
「俺だってちょー久々だから!安心しろ!」
そうして、カラオケ屋の店員に「なるべく狭い部屋でお願いします!4畳半...いや!3畳半くらいの!」
「すみません...。大きい部屋はありますが、小さい部屋は...」
「おい、店員さんを困らせんなよ」
「だってー!」
「普通の部屋でお願いします」と、伝えて普通の部屋を案内してもらう。
そうして、俊樹が向かいに座り風夏は俺の隣に座るのだった。
「風夏はカラオケにはよく来るの?」
「友達とたまに...」
「そうなんだ。いいね。青春だ」
「俺たちは高校時代なーんにも青春っぽいことなかったもんなー。誰かと付き合うこともなければ、結局は彼女もできんかったしー。やり直してーよなー」と、俊樹がマイクを使ってそんなことを言う。
「まぁ、確かにやり直せるならやり直してーなって、俊樹は女子との絡みは結構あったろ」
「いやいや、彼女が欲しかったんよ。彼女が」
「彼女ねぇ...」
まぁ、俺の場合はやり直したところで結果は変わらんのだろうがな。
そうして、平均並の歌唱力で歌うと、拍手しながらキラキラとこちらを見つめてくる風夏。
いやいや、全然上手くないからそんな目で見つめられても困るな...。
「んじゃ、次は風夏ちゃんの番なー!」
「はい」
おいおい、俊樹からのちゃん呼びはいいのかよ。
彼女がかけたのは俺が高校時代よく聞いていた曲...。君の知らない物語という曲だった。
「...いつも通りのある日の事、君は突然立ち上がり言った、今夜星を見に行こう」
その歌声は本当に綺麗で美しくて...人を魅了する魔力が籠ったような歌声であった。
「...すげぇ」と、思わず言葉を漏らすと彼女は照れたように笑うのだった。
そのまま、久々のカラオケに盛り上がり、高校時代に大好きだった歌を風夏に歌ってもらったりなど、まるで本当に昔にタイムスリップしたような感覚に陥るのだった。
「んじゃ、飲み物とってくるわー」
「あっ、俺もいくよ」
「いいっての!俺が2人の分も取ってくるから!ごゆっくり!」というと、そのまま去っていく俊樹であった。
2人きりになると少しだけ気まずくなるかと思いきや、「よいしょよいしょ」と言いながら少し空いていた隙間を埋めるように真横に座り直す風夏。
「ちょっ...//ち、近くない?」
すると、耳元でこんなことを囁く。
「お兄さんは高校時代に戻りたいですか?」
「...え?」
「お兄さんがしたかったこと私がしてあげます。Re:高校生活ってやつです」
「...どゆこと?」と、言った瞬間俺の頬にキスをする風夏。
「ちょっ!?な、何してんの!?//」
「私はもう子供じゃないですよ?キスぐらいします」
「じゃなくて!えっと...//俺はその...大人で...//君はまだ学生で...」
「...じゃあいつになったら私のこと大人だと認めてくれるんですか?」
「え?」
「10年...。10年も待ったのにまだ待てっていうんですか?」と、涙ながらにそんなことを言う。
その時、俺はあることを思い出した。
そう...10年前のある出来事を。
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