第13話 18の彼女と28の元カノ

「お、お姉ちゃん!?」


「...なんで制服着てるの?しかもそれ...うちの高校のやつじゃないよね?」


「...」


 もはや俺は声を出すこともできず、完全に思考が停止してしまうのである。


「こ、これは誤解だよ!私がどーしても制服デートがしたいって言って...その!無理やり着せてるだけだから!」と、必死にフォローしてくれるのだが、もはや手遅れ。


 識宮さんのあの引いた表情...今更何を言っても後の祭り...意味ないのである。


「...帰ります」


「待ってください!まだ、プリ撮ってないじゃないですか!あっ!そうだ!3人でプリ撮りましょう!ね!」と、風夏もいよいよバグったのか訳のわからない提案をしてくる。


「いや、帰るから!何でこの状況でプリ撮るんだよ!」


「...いいよ、別に」


「「へ?」」


「プリ撮ってもいいよ?」


 何故か識宮さんが同意したため、3人でプリを撮ることになった...。


「ちょっと、お兄さんもうちょっと右に詰めてくださいよ。こっち狭いんですけど」


「い、いや詰めろって言ったって...」


「もういいです!お兄さん後ろに立ってください!」


『3.2.1!』


 10年前に俺にはきっと想像もつかないであろう。

まさか、識宮さんの妹と付き合っているなんて。

まさか、識宮さん、風夏、俺の3人でプリクラを撮るなんて...な。


 そうして、出来上がったプリクラを切り始める風夏。


「...っぷ」と、改めて俺の姿を見て笑う識宮さん。


「...笑わなくたっていいじゃないですか」


「ふふふ、そうだね」と、それでもニヤニヤが止まらない様子の識宮さん。


「てか、識宮さんは何しにゲーセンに来てたんですか?」


「私、お休みの日はいつもゲームセンターに来てるの。ヘビーユーザーなの」


「...マジですか?」


「えぇ。特に音ゲーは全国レベルなの」と、ドヤ顔をしてくる。


「...なるほど」


「そしたらまさか風夏とコスプレしてる添田くんが居るんだもん。一瞬、風夏が男友達を連れているのかなと思ったけど、どうみても高校生って見た目じゃなかったからさ」


「ぐっ...」


「けど、楽しそうで羨ましかったな。私も...もっと青春してればなーなんて...思ったり」


「識宮さんは結構青春謳歌してませんでした?」


「ぜーんぜんだよwもっーとできた気がするんだよねー」


「ちょっと、何イチャイチャしてるんですか?」と、3人分に分けたプリクラを手渡される。


「ありがとう。ふふっ、これはお財布に入れとくわね」


「いや、捨ててくださいよ...」


「お兄さんは捨てたら殺すからね...?」


「いやこえーよ。俺は捨てねーよ」


「そりゃそうでしょうね?彼女との初プリですから」


 その後は3人でご飯を食べて解散となった。


 風夏はこのあと俺の家にこようとしていたようだが、識宮さんに連れていかれるのだった。


 そうして、1人で駅前を歩いていると目の前にコンビニから出てきたカップル。


 仲良く手を繋いでいやがる。

かぁー、仲良くて羨ましいこと。


 そうして、女が横を向く。


 それは...元カノだった。


 それはそれは楽しそうに男と会話をしていたのだった。


 すると、こちらを振り返りそうになったので、急いで物陰に隠れる。


 俺、一体何してんだ。


 風夏と制服デートなんてはしゃいでいるのに対して、彼女は...旦那さんとしているとかな。


 途端に自分がしていたことがおままごとに感じて、ものすごく恥ずかしく、情けなくなってくる。


 あー、マジでバカみたい。

いや、馬鹿なんだろうな。


 そうして、少し遠回りをして帰宅をするのだった。

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