第14話 識宮風夏の日常

「るーんるーんるんるんるんー」


「たのしそうだねぇ」


「楽しいですよ!お兄さんと一緒にいれるだけで、出来ればお兄さんのを入れられたらもっと楽しいかもですけど//」


「唐突な下ネタやめい」と、チョップする。


「もー!いいじゃないですか!私だって立派な大人なんですよ!」


「立派な大人ねぇ。立派な大人はそんな下ネタ言わないと思うけど?」


「っふ、しかしJKでこの胸の大きさはなかなか稀有なんですよ?」


「ほら、大人っていうのは体とかじゃなくて、生き方とか佇まいとかそういうところに出るんじゃないかなー」


「...意地悪。もう知らない」


「ごめんごめんwいじめすぎちゃったね。そう言えば風夏は学校ではどんな感じなの?」


「どんな感じって??」


「うーん?ほら、俺に接しているみたいにこういうラフな感じなのかなー?とか。友達とか多いの?」


「...うーん?どう思います?」


「いや、多いのかなって思ってるけど...。ほぼ毎日のようにうちに来たりしてるわけじゃん?友達と遊んだりしないのかなって」


「内緒でーす」


「内緒って...」



 ◇識宮風夏の日常


 ...はてさて、ここで私の日常についてお話ししよう。


「あっ、見て見て...識宮さん...。いつ見ても綺麗だよねー」

「本当...美しすぎる」


 そんな人たちの羨望の眼差しと憧れの声を聞きながら廊下を通り抜けていく。


 そうして、一息呼吸をついて自席に座る。


 一挙手一投足が注目を浴び続ける。

精神を削られるというか、神経を擦り減らされるといか...。


「おっはー!ふうふう〜!」と、テンション高く私に話しかけてきたのはこの学校で私の唯一友達、風蔵かぜくら珠那しゅなだった。


【挿絵】

https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093079616797195


「おはよ、珠那」


「ね!レジミラの新曲聴いた!?」


「いや、聞いてないよ?そもそも誰?」


「レジーミラクルだよ!知らない?」


「ごめん、知らない」


「全く、家に帰ったら聞くこと!いいね!」


「うん。聞いてみるね」


 こうして、私に気さくに話しかけてくれるのは彼女だけだ。


 仲良くしようとしても皆んな距離を感じるというか、なんというか...。


 ちょっと人見知りな事もあって最初におとなしいキャラが定着しちゃったせいで、今更キャラ変もできないしな。


 あぁ、はやくお兄さんに会いたい。

イチャイチャしたい。チュッチュっ、ギュッギュしたい。はぁ...。


「ね!ね!そういえば他校の男子にふうふうを紹介してって言われたんだけどー、連絡先教えていい?」


「無理。絶対嫌。死んでも嫌」


「あっとうてきぃきょぜつぅ〜って、ふうふうは青春したくないの?彼氏いないんでしょ?作ろうと思えばこの星の7割の男子は落とせる見た目してんのにさー」


「いや、いるから。彼氏...」


「あー、そっかー。ふうふうには彼氏がいたんもんねー。そっかーそっかー...って、ふうふう彼氏できたの!?」と、拡声器を使ったかのように大声で叫ぶ珠那。


「...声でかいんだけど」


「ご、ごめんごめん...。いやでも...まさかふうふうに彼氏ができてるなんて...」


 そんな珠那のデカボイスにより、クラス内から学校内に噂が伝達していく。


 帰るころにはみんなそんな噂で持ちきりだった。


「知ってる?識宮さんの彼氏」

「え?誰なん?」

「なんかモデルらしいよー?」

「私は売れっ子俳優って聞いたけど」

「私はAV男優だって...」


 おい。最後の噂流したやつ出てこい。


 そんなふうに聞き流していると、隣にいる珠那が「ごめんねー?私のせいで」と謝ってくる。


「いいよ。別に。変な虫が寄るよりマシだし」


「でも本当にいるの?彼氏」


「うん」


「そっかそっかー。いつか私にもしょーかいしてね?」


「まぁ、珠那の口が固くなったらね?」


「えー、それ一生無理じゃん!」


「努力をしなさいよ、努力を」


 そんなくだらないやり取りをして私たち家に帰った。



 ◇


 識宮風夏の背中を見ながら私はポツリとつぶやいた。


「風夏を紹介して欲しいって言ってきた人、私の好きな人だったんだよねーなんて、言えるわけないよね」

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