第20話 だから...言わせて?私は...添田千くんのことが大好きです」

「今日会社でね、面白い子がいてね?」


「...うん」


「そうだ!添田くんはどういう系のお仕事してるんだっけ?」


「まぁ...事務とか経理とか...そんな感じかな?」


「そっか...カレーもう少しでできるから!隠し味は何か当ててみてね?」


「...うん」


 まさに心此処にあらず...といった感じである。

いや、それも当たり前か...。

元彼女さんと再会してしまったわけだし...、気になっているのは間違いないだろう...。


 はぁ...なんでこのタイミングでそういうことになっちゃうかな...。

折角、二人でご飯を食べるチャンスが巡ってきたのに...。


 ...違う!ここでへこんでいるようじゃダメだ!

元気を出せ!私!


 あとは待つだけとなっていた私はソファに座っていた添田くんの真横に座る。


 少しびっくりした顔をした後、優しく微笑むのだった...。

それは無理をしているときの...添田くんの笑顔だった。


「...無理しなくていいよ?」と声をかけると...「...ごめん」と、涙ぐむ添田くん。


 そういう顔をさせないために...私がそばにいてあげたいのに...。

私には彼を抱きしめる資格も、勇気もない。

だから、今できる精いっぱいを...やる。


 彼の手にそっと触れる...。


「...私にできることがあれば何でも言って...。添田くんがしたいこと...なんでも...」


「...俺は...高校のころ...識み...玲さんのこと...好きだったんだ」と、突然の告白と名前呼びをされてしまう。


「...そ、そう...なんだ//」


「気づいてた...?」


「も、もしかしたらな...とは思ってたけど...私...自分に自信なかったから...」


「...そうなんだ...。でもそれは俺も一緒でさ...あの玲さんが自分と付き合うなんて想像できなくて...結局、告白もできず卒業しちゃって...。それから忘れよう忘れようって思ったけどなかなか忘れられなくて...そんなときに出会ったのが元カノだったんだよね」


 そっか...全部一緒だったんだ。


「...そうなんだ」


「...うん。だけど、そんな元カノにも...彼氏ですらなかったって言われてさ...。まぁ、本当に心が抉れたけど...けど、なんだか納得しちゃった自分も居て...。きっと、俺が彼女を好きだったっていうのはたぶん...玲さんの穴埋めとしてで...そして初めて異性に求められてそれがうれしくて...だったと思うんだよね。そんなことに分かれた後に気づかされて...そして、風夏と再会して好きだって言われて...余計にわからなくなっちゃったんだ。この感情は風夏に向けてのものなのか、それとも10年前の玲さんに重ねた感情なのか...。それが申し訳なくて...どうしたらいいかわからなくて...」


 すると、私の手を強く掴む添田くん。


「...俺は...一体どうしたらいいんだろう」


「...いいんだよ。いっぱい悩んでいっぱい...苦しんで...いっぱい傷ついたとしても...私はずっと待ってるから。10年でも20年でも...添田くんが出した答えなら...私はそれでいいの...。だから...言わせて?私は...添田千くんのことが大好きです」


 あの時言えなくて言いたかったこと。

10年越しに伝えられただけでも私は幸せだった。


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