第21話 今は少しだけ
カレーを一緒に食べながら、昔話に花を咲かせる。
その流れで高校の卒業アルバムをみる流れになり、あの子は今どうしてるとか、あの子とあの子が結婚したとか...。
クラスごとの写真を眺めていると、俺より先に俺のことを見つける玲さん。
「見つけるの早いね」と笑うと「た、たまたまだよ//」と、少し赤くなる。
10年後にこうして二人で卒アルを見ているなんて...想像もしなかったことだが。
そうして、ひと段落つくと「お風呂借りて良い?」と聞かれる。
「あっ、どうぞどうぞ。タオルはこっちにあるから」と、バスタオルとフェイスタオルを渡す。
「ありがとう。...一緒に入る?」と、イタズラ笑みを浮かべながらそんなことを言ってくる。
「そ、それは...流石に...」
「風夏とは入ってるのにー?」
「いや!入ってないから!」
「ふーん?その感じは本当に入ってなさそうだね?良かった良かった。覗いてもいいからね?」と、言いながら去っていくのだった。
「の、覗かないから!//」
そのまま無心でいようとするが、シャワーの音で妙に緊張してしまう。
一枚壁を隔てて...向こうには...ばか!想像するな!
そうして、パチンと顔面に一発気合いのビンタを食らわせて、平常心に戻る。
そのまま、お風呂から上がってきた玲さんと交代して今度はお風呂に入ると、扉の奥で玲さんが「チラチラ」と言いながら覗こうとしてきた。
もしかして、欲求不満だったりするのだろうか...?などと、童貞思考を拗らせるのだった。
お風呂から上がり歯を磨くと、後は寝るだけになった。
「...じゃあ、俺はソファで寝るから」と、告げるがパジャマの裾を掴まれる。
「...ここまできて一人は寂しいというか...」
「いやいや、でも流石に一緒に寝るのは...」
「...嫌?」
「嫌なわけないよ...!...その...けど...風夏に流石に悪いっていうか...」
「...そうだね。付き合ってるのは...風夏だもんね。ご、ごめんね?なんか調子に乗っちゃった?」と、つらそうな顔で笑う。
「...そんな顔しないでよ」
「え?」
思わずそのまま抱きしめてしまう。
ダメだと分かっているのに。
けど、玲さんは拒絶することなく俺を受け入れて優しく俺を抱きしめる。
「...ごめんね。わがまま言っちゃって...困らせて...。千くんが困るのわかってるのに...。嫌な女だよね」
「そんなことないよ。ずっと...好きだったから。元カノと付き合ってても...風夏を見てても...ううん。風夏を見ているようで俺は...昔の玲さんを重ねていただけだったかもしれない」
「...そうなんだ...嬉しいな」
「だから、待って欲しい。もう少しだけ」
「...うん」
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