第25話 答え
無言のまま、玲ちゃんの家に入る。
お互い少し緊張したような空気が走る。
「...何か飲む?」
「うん。なんでも...大丈夫」
そうして、コーヒーを持ってきてくれた玲ちゃん。
そのままコーヒーに口をつけて...ゆっくりと深呼吸する。
「...俺は...風夏と...そして玲ちゃんとこうしてまた会えたこと...すごくうれしく思ってる」
「うん」
「風夏は純粋でまっすぐで...本当に昔の玲ちゃん...俺が見ていた玲ちゃんに近くて...多分、風夏の姿に玲ちゃんを重ねてみていた...と思う」
「...うん」
「...けど、俺の見ていた玲ちゃんっていうのはたぶん...無理をして頑張って見せていた姿なんだってことを知って...知ってる気になって何にも知らなかったんだなって思ったり...して...。だからこそ、本当の玲ちゃんの姿を見せてもらって...すごくうれしかったんだ」
「...うん」
「...ごめん...はっきり言わなくて...俺は...「ちょっと!待って...気持ちの準備がしたい...」
そうして、ゆっくりと深呼吸をする玲ちゃん。
「...いいよ?」
「...うん。...俺は...玲ちゃんと...付き合いたい」
「...え?」と、目を丸くする玲ちゃん。
「...」
「...ほ、本当に...?」
「...うん」
すると、目に涙を貯め始める玲ちゃん。
そうして、こぼれた涙を抑えるように両手で顔を覆う。
そんな彼女を俺は抱きしめた。
風夏は...とても魅力的な女の子だ。
でも、やっぱり俺の心の中にはずっと...ずっと玲ちゃんがいたのだ。
それはどれだけ年を重ねても、どれだけいい人に出会っても...変わらなかった。
元彼女が結婚するという話を聞いたとき、心が痛かったがそれでもなんとか耐えられたのはきっと...本当の心の中には玲ちゃんが居たからだ。
その日はそのまま玲ちゃんと抱き合って...そうして...、そのまま玲ちゃんの家に泊まるのだった。
翌朝、風夏に会いに行った。
けど、すでに分かっているといった表情で無理な笑顔を浮かべて、「私は...お兄さんが幸せなら...それでいいんです」といった。
本心ではないことはわかっていた。
けど、それでもそんな言葉をかけてくれる風夏の頭を撫でるのだった。
まるで昔のように...。
◇数年後
「...おぎゃああ!!」
「元気な女の子ですよ」
俺と玲ちゃんの間に子供ができた。
それを自分事のように喜んでくれる風夏。
俺はその子の頬を撫でながらこうつぶやいた。
「...生まれてきてくれてありがとう...玲夏」と。
俺の彼女は本日(他の男と)結婚しました~彼女に捨てられた俺に友人が紹介してきたのは、高校時代に一番可愛いかった女の子...の妹だった~ 田中又雄 @tanakamatao01
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