第24話 識宮さんとの大人デート

『住所のURL送って!』と玲ちゃんに連絡する。


 あくまで今日はデートをするということ以外は伝えていなかったため、少し困惑しながらも承諾してくれた。


 そうして、玲ちゃんの家まで車で迎えに行く。


「お待たせ!」


「...待ってはいないけど...まさかのドライブデート?」


「うん。もしかして...嫌だった?」


「いやいや!...びっくりしただけ...。というか...ドライブデートとか初めてでなんかちょっと緊張するかも」と、少しはにかみながら助手席に座る。


「とりあえず、海に行こうと思います」


「はい、わかりました」と、なぜか二人とも敬語になってしまいお互いに顔を見て笑う。


 車の中では高校時代に流行っていた懐メロを流しながら、二人で歌ったりしていた。


「そういえばさ...千くんってどういう仕事をしてるんだっけ?」


「うーん、事務系だね。メインは経理とかそういう感じ」


「ふーん、そうなんだ!じゃあ、丁度いいかも。今、事務系で優秀な人が辞めちゃって大変らしいんだよねー。どう?やってみる気ある?」


「え...まじ?」


 ヘッドハンティングされてしまった。


「でも、俺別に...優秀じゃないよ?」


「大丈夫大丈夫!気楽にやればいいから!ね!どう?やってみるきない?」


「...うーん...ちょっと...自信ないなぁ...。だって玲ちゃんって...めちゃくちゃいいところで働いてるよね...?」


「別に?普通の会社だよ?」


「...嘘つけ!」と、チョップする。


「いてっw」と、かわいく舌を出す。


「まぁ、別に関係ないよ?私がごり押しすればね...?」


「...いや、それ入った後に困るやつじゃん!ぜったい!」


「...そこは千くんになんとかしてもらってー」


「なんとかはできませんー」


「えー。一緒に働きたかったのになー」と、頬を膨らませて少し不満げな顔をする。


「...まぁ...うん。考えてはおく」


「本当!?やったー!w」


 そんな風に楽しみながら海に到着する。


 あまり時期ではないこともあり、人はほとんどいなかった。


「ふへー...気持ちねぇ...」


「そうだね。風が心地よい...」


「水着持ってくれば良かったなー。あぁ、でもあれもう結構小さくなっちゃってるかな?あっ、今どこが?って思ったでしょ?えへへ、おっぱいだよー?w」と、両手で胸を持ち上げてにやにやと笑う。


「...確かに見たかったかも」


「えっちーw下着でよければ見る?w」


「え!?//」


「いやいや冗談だよ?wけど...どうしてもみたいなら後で物陰とかでいいなら...ね?」と、相変わらず人の心をもてあそぶのが上手な彼女であった。


 そのまま、海で水を掛け合いっこしたり、浜辺に座って海を眺めたり...。

のんびりとした時間を過ごしていた。


「...楽しいね」


「うん!」


 そんな彼女の笑顔はやっぱりとてもきれいで...美しかった。


 少ししてから近くにある海鮮が有名なお店で海鮮丼を食べて、そのまままた少しドライブをする。


「...今日は天気よくて助かったなー」と話すも無反応な玲ちゃん。


 ふと横を見ると...眠ってしまっていたようだった。


 そんな彼女の頬を優しくタッチする。


「...えへ。起きてるよ?」


「起きてたんかい//」


 それからは久しぶりに高校の前まで行き、校舎を眺める。

昔と何も変わらないその姿に思わず感嘆の声を上げる。


「懐かしい!」


「だねぇ...」


「さすがに生徒は...見えないかなー」


「制服も変わってないねぇ」


「ねー」


 そんな話をしながら夕方ごろに玲ちゃんの家に到着する。


「...もう解散??」


「...答え出たから」と、小さくつぶやくと、玲ちゃんも覚悟したように「わかった」と言って二人で玲ちゃんの家に行くのであった。

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