第9話 るんるんらんらんー

「ランランランルーン♪」


「ご機嫌だね」


「当たり前じゃないですか!お兄さんと付き合えるんですよ!嬉しいに決まってます!」


「そっか...。まぁ、付き合うって言ってもあくまでお試しっていうかさ、俺のことをちゃんと知ってから付き合いたいみたいな」


「試用期間ってことですか?」


「まぁー、みたいなもの?勿論、それでも風夏が付き合いたいっていうなら全然いいんだけどね?付き合ってから嫌われるのは怖いから。ちゃんと知ってほしいんだ」


「分かりました!」と、そのままルンルンで持ってきたものを温め始める。


「あとこれ、鍵」


「もしかしてお家の鍵ですか!?」


「うん。だから、家の前で待つとかああいうのはもうしないでね。それに家の鍵があれば浮気の心配とかも少なくて済むでしょ?」


「はい!ありがとうございます!」


「いえいえ」


 正直、心のどこかでは俺のだらしなさとかそういうのを知って幻滅されて、嫌われたりするかなと本気で思っていた。


「...はい!出来ました!今日はパスタ作ったんです!ソースがオリジナルなんですよ!」


「そいつはすごいな」


「はい、あーん!」と、口を開けることを催促される。


 仕方なく口を開けてあーんをする。


「あーん」


「どうですか?美味しいですか?」


「うん。すごく美味しいよ」と、お世辞抜きで褒める。


「やったー!お兄さんはこういう味が好きなんですね!...ていうか、お兄さん呼びもあんまり良くないですよね。恋人っぽくないので。かほで、千くんって呼びますね!」


「うん。呼び方はなんでもいいから好きに呼んでもらっていいよ」


「じゃあ、ダーリン?」


「...まぁ、2人きりのときならそれでもいいけど」


「じゃあ、千くんで!」


 何で一回ダーリン試したんだよ。


 そうこうしていると、10時近くなってしまう。


「あぁ、もうこんな時間。送るよ」


「え?お泊まりじゃないんですか?」


「帰りなさい。家にはいつでも来れるようになったんだし、今日は大人しく帰ること。車で送っていくから」


「でもでも...」


「聞き分けの悪い子は嫌いだよ」


「...分かりました。そう言われたら仕方ないです」


 そうして、風夏を送り届ける。

流石にお母さんに改めて挨拶しようと思ったが、時間も時間なのでまた後日来ますと伝えておいてと伝言を残して帰宅するのであった。

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