第4話 おしかけJK
「いやぁ...うん...えっと...」と、言いよどんでいるとカラオケ特有の隙間のガラスからこちらを見つめる二つの目...。
あいつ...いつから見てたんだ...。
そして、大きく口を開けて『お・れ・か・え・っ・た・ほ・う・が・い・い?』と聞いてくる。
いやぁ...雰囲気的にはお帰り下さいなんだろうが...。
すると、俺の顔を両手でつかみ無理やり顔と顔を合わせられる。
「よそ見しないでください。私の目を見て答えてください」
「えっと...その...ご...ごめん...」と、俺は答えた。
「...わかりました。...今はこうして会えただけでもうれしいですし、時間はたっぷりありますから。10年待ったんですから...あと少しくらいなら待てます。絶対...私のこと好きになってもらいますから」と、宣言されるのだった。
その後は俊樹にRINEにて『戻ってこい』と伝え、何事もなかったように歌うのだった。
一応、連絡先の交換は行いお開きとなったのだが、正直彼女には悪いとは思いつつもやっぱり今は彼女なんていらないし、何よりきっと風夏に感じたこの胸の高鳴りはきっと...風夏に対してのものではなく、あの頃の...識宮さんに抱いた感情だ。
そんな不純な感情を彼女に向けるわけにはいかないし、もうこれっきり...そう思っていたのだが...。
◇6月27日(日) 10:15
さぁて、今日は1日のんびりするぞー。
部屋の掃除でもするか。
そうだ、洗濯もしなきゃかぁー。でももう少しだけ...。
『ピーンポーン』
えぇ、なんだよ。こんな時間に...。
あぁ、そっか...。なんかこの前通販したやつ届いてなかったっけ。それかな?
置き配にしてなかったっけ...?
『ピーンポーン』
出ないとダメか...。よし、起きよう...。
『ピーンポーン』
「あぁ、はいはい出ますよ出ますよ」
そうして扉を開けるとそこに立っていたのは...風夏だった。
「え?」
家を教えた覚えがない。
俊樹も今の俺の家は知らないはず...。
「お届け物です」
「...お届け物?」
「はい。おしかけJKのお届けです」
「はい?えっと...その...今...超家が汚くて...その...」
「それはちょうどよかったです」と、袋の中から色々と掃除用の用品が出てくる。
「男の一人暮らしですから、何かとお困りかと思いまして」
「いやいや...その...とてもその...女の子に魅せられるような部屋の状況じゃなくて...」
「ですから、それなら私がお掃除をしないとだめですよね?」
最初に汚いから入れない...ということを言われるのを想定して、こういったものをもってきたのだとしたら...。なかなかの策士である。
なら、こちらもドン引きさせるしかない。
そう...そもそも彼女が俺に抱いているイメージを...ぶっ壊すしかないのだ。
「えっと...その...き、汚いと言っても...その...単純に汚いっていうより...そのいろいろあるといいますか...」
「もう...まどろっこしいのはやめてください。お掃除されて困ることはないですよね?」
「...し...こ...ってぃがいっぱいあるから」
「何ですか?」
「だから...その...しこった後のティッシュがそこらへんに落ちているから!ね!だから!今日はかえって?ね?」
「...興味あります」
「はい?」
「どういうものなのか知りたいです」
「知らなくていいから!ね!俺は知られたくないし!ね!」
「...そんなに拒絶しなくてもいいじゃないですか」と、急に下を向き始める。
そして、ぐすんぐすんと泣き始めてしまう。
そんな瞬間、となりのおばさんが出てきて、こちらを見る。
まずい!おっさんがJKを玄関前で泣かせているとか、色々アウト過ぎる!
「わ、分かった!OK!部屋に入って話そう!」と、無理やり引きずり込む。
よくよく考えればJKを家に入れるのもまずいのでは?もうどうすればよかったんだよ!と思っていると、すぐに靴を脱ぎ、「わーーーー」と言いながら家に入っていく風夏。
「ちょいちょい待ってって!」
そうして、部屋に入ると「全然汚くないじゃないですか?私を追い返すために嘘ついたんですか?」
「いやぁ...俺的にはこれでも結構汚いというか...」
そのまま勝手に部屋の扉を開けると寝室に入っていく。
「ちょいちょいちょい!!」という俺の静止もむなしく、ベットの上に置いてあった丸めたティッシュを手に取る。
「あっ、だからそれダメな奴だって!」と、取り返そうとするがそのまま胸ポケットにしまう楓夏ちゃん...。
「ちょい...それ返してよ」
「返してほしいなら取ってみてください」と、どや顔で胸を突き出す...。
いやいや...だまされるな...俺。
おそらく、彼女の中ではここまで想定の範囲内。
この後の流れは容易に想像がつく。
俺があのティッシュを取ろうとしたら、どうしたって彼女の制服の胸らへんに俺の指紋がつく。
それでまた何か違うことを要求してくるという方法では?
「はぁ...好きにしていいよ。もう...」
「ありがとうございます」と、楽しそうに笑うのだった。
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