第21話 王と十二の騎士
――ガキィイイイインン!!!
8体目。
ゴトリと落ちた白銀騎士の頭。王が背後の俺へと振り向き赤の大剣をこちらへ投げてくる。俺はそれに向かい走り出す。ルベウスダガーを投げられた大剣の腹へあて逸らしパリィを決める。軌道がそれた巨大な赤の大剣は天へ突きささり内包されていた炎の魔法が天を吹き飛ばした。
ゴゴゴゴゴゴゴ、と崩れ落ちる轟音。瞬く間に距離を詰めてくる残りの白銀騎士の攻撃を躱し杖とダガーの連撃で沈めていく。杖が頭に当たるインパクトの瞬間『エアマジック』後方に吹っ飛んだ瞬間、カウンターで振り下ろされる騎士の刀剣をダガーで逸らし、そのまま首筋の【死門】へ。突き刺し、斬り落とす。糸の切れた人形のように地に伏す王の騎士たち。
ガラーンと投げ出された剣は王の足元へころがった。
9体目。残り3体……そして、王。
イグゼアの鬼刃王。奴は赤の大剣【ヘルバウダー】と青の大剣【ヒョウカゲツ】を使う。赤は物理アタッカーが倒された数だけ攻撃力が、青は魔法アタッカーが倒された数だけ魔力が上がる。
(そして王自身のステータスも上がっていく)
全ての白銀騎士を倒してしまうと王は無類の強さを誇る化け物と化してしまうため、12人フルパーティーでの攻略では白銀騎士を何人かでひきつけておいて、王を倒してしまうのが通常のやりかただ。
しかしソロの場合、ひきつけ役がいないため白銀騎士を処理してからじゃなければまともに王と戦うことができないため、奴らを倒しきらなければならない。
ドシャアッ。【死門】を突き蹴り飛ばした白銀騎士が床を転がる。これで12体目。ゆらりと王は歩き距離を詰めてくる。左手に握られている青の大剣【ヒョウカゲツ】は凍てつく氷結系の魔法が宿る。あれに触れれば一瞬で体を凍らされ砕かれてしまう……つまり即死だ。
王が間合いに入り青の剣を振り下ろしてくる。全ての騎士を倒しているため奴のステータスは約3倍になっている。とてつもない速度の一撃。しかしそれを躱し接近、『ダブルバースト』を詠唱し杖を向ける。
「……!」
しかしその瞬間、赤の剣が王の手元へ戻ってきた。後方から飛んできたそれをしゃがんでよけ、王の振り下ろされた拳を転がり躱した。ヒヤリと冷気を放つ床、俺は距離をとった。
青の剣が刺さっている一帯に巨大な氷柱が突き出し山ができる。
ホッとするのもつかの間。王は凄まじいスピードで再び距離を詰めてくる。赤の剣、青の剣、二つの大剣を駆使し連撃を繰り出す。ただでさえステータスの高いボスであるイグゼアの王。その身体能力が3倍もの強化がなされた今、攻撃予兆を頼りに技を躱すという戦法は取り得なかった。
しかし、俺には動きが視えている。レベルが上がるたびパラメーターへ振り分けられるポイント。これまでそのほとんどを「俊敏」へ振っていたのはこのためだ。各パラメーターには伸ばすことで表には記載されていない能力が得られる隠しステータスがある。「俊敏」は動体視力の向上。数値差次第では相手の動きが止まって見える。
(さすがに完全に強化された状態の王が止まって見えることは無いが、攻撃の出がわかるくらいには動きが視える)
――ギリギリで猛攻を躱し続ける。必ずくるはずの王の僅かな隙を撃つそのために、この間合いで。
一瞬の油断、少しでも大剣の攻撃を喰らえばその時点でアウトだろう。バランスが崩れ瞬く間に連撃が俺の体をバラバラにする。しかし恐怖心はなかった。
(俺にはやらなきゃならないことがある!こんなところで死んでられないんだよ――!!)
――バキキキ!!
床に突き刺した青の剣。氷のエリアが部屋全てを覆い、大技が来る予兆。赤の剣に強大な魔力が溜まり紅く輝いている。
俺は、それを待っていた。
床が凍り付く前に俺は床へ『ダブルバースト』で強化した『エアマジック』を放ち床を吹き飛ばした。できた足場に残り、魔力を溜めている王を見上げる。
(……【死門】は胸元か)
振り下ろされた赤の剣。しかしそれよりも早く、俺のルベウスダガーは王の胸へと吸い込まれ、彼の命を絶った。
――ガラン、と王の剣が硬い床に落ちた。
王の魔力が発散され、床の氷が砕けた。膝をついて首を垂れる王。
「……次、いくか」
――
【ステータス】《称号》深淵ノ死者
《名前》リン《ジョブ》白魔道士
レベル:59
HP:1980/1980
MP:1630/2200
筋力:267
魔力:1228
精神:349
俊敏:928
詠唱:665
《装備:武器》
SR14『ルベウスダガー』攻撃力(物):1480 攻撃力(魔):680
R12『碧石の法杖』攻撃力(物):208 攻撃力(魔):910
《装備:防具》
R13『闇子の外套』防御力(物):109 防御力(魔):128
《スキル》
★【魔眼】:消費MP――
☆『魔弾』:消費MP30
☆『ダブルバースト』:消費MP×3
☆『ファントム』:消費HP1/3
☆『キュア』:消費MP15
☆『魔引』:消費MP10
《魔法》
☆『ヒーリング』:消費MP15
☆『ヒーリン・ガ』:消費MP30
☆『エアマジック』:消費MP5
☆『マジックバースト』:消費MP20
☆『エアリアルヒール』:消費MP20
☆『ホワイトガード』:消費MP15
☆『ヒーリングレイ』:消費MP150
――
……あと11。
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