第22話 レベリング完了


ダンジョンを出ると空は群青に染まり、もうすぐ陽が顔をみせようとしていた。レベルは71。

30層のボス、イグゼアの鬼刃王を撃破し42層までたどり着くことができた。ボスを倒した方が経験値の実入りが大きいと判断し、40ボス部屋を目指し一直線で駆けた。道中の魔獣を倒しながら進んだというのもあり、40層ボス【ギュラガレーデ】を撃破した時にはレベル68まで達していた。


【ギュラガレーデ】戦では何度か死にかけたけど、いい練習になった。なんせレベル88の高位魔族だからな。村を襲いに来る軍団長のレベルが70。これならレベル差的にも間違いなく倒せる。

問題はあの段階で殺せる敵かどうか、だ。HPを削れることはシーフの時に確認できたが、その数値を0にできるかはまだわからない。


出来なければもうどうしようもない。あとは全力で村の人たちを逃がすために時間を稼ぐしかなくなる。もしかしたらそれでも、ゲームのシナリオという強制力が働いてその行為すらも無意味になるかもしれない。


(けど、やらないよりは良い)


――それから時間は過ぎた。念には念を入れ、レベルを上げ続け装備も更新。夜通し通っていたダンジョンは最終的に50層ボス前までたどり着いた。そこで村の人間に洞穴が見つかり、入れなくなった。


そして、魔族が攻め入ってくる日の前日。



――

【ステータス】《称号》深淵ノ死者

《名前》リン《ジョブ》白魔道士

レベル:78

HP:3120/3120

MP:5780/5780

筋力:328

魔力:2880

精神:549

俊敏:1428

詠唱:965


《装備:武器》

SR14『ルベウスダガー』攻撃力(物):1480 攻撃力(魔):680

SR10『葬星の封杖』攻撃力(物):420 攻撃力(魔):1080

《装備:防具》

SR10『深闇のドレス』防御力(物):809 防御力(魔):1128

《装備:装飾》

SR9『破魔の指輪』魔力+680

SR11『深淵のローブ』魔力+180 防御力(魔)+300 MP+900

《スキル》

★【魔眼】:消費MP――

☆『魔弾』:消費MP30

☆『ダブルバースト』:消費MP×3

☆『ファントム』:消費HP1/3

☆『キュア』:消費MP15

☆『魔引』:消費MP10

☆『マジックブレイク』:消費MP800

《魔法》

☆『ヒーリング』:消費MP15

☆『ヒーリン・ガ』:消費MP30

☆『エアマジック』:消費MP5

☆『マジックバースト』:消費MP20

☆『エアリアルヒール』:消費MP20

☆『ホワイトガード』:消費MP15

☆『ヒーリングレイ』:消費MP150

☆『聖海ノ宝光』:消費MP1800

――


プレイヤーのカンストレベルは120まで。そしてレベルアップで習得できる白魔道士の覚えられるスキルと魔法はこれで全て。あとは各地のイベントクエストをこなすか、プレイヤークラフト制のモノを譲渡してもらうことでしか追加されない。


できる限りのことはできた。あとは夜を待つだけだ。来るタイミングは日付が変わった時。あと数時間もすれば魔王軍幹部【ヴァリダンデ】の配下【ガルドラ】の一軍が村の東の方に集結するだろう。そこを潰す。


(……行くか)


家を出て村の出口へ。砦に囲まれているこの村では魔獣の侵入を防ぐため出入口は北の門の一つで、そこには昼夜問わず必ず一人門番が立っている。

さて、これをどう突破するか。勿論策は考えている。自分のHPを1/3消費することで実体の無い自分の分身を作ることができるスキル『ファントム』。これを使い門番をあの場から引きはがし、その隙に村を出るというのがその策だ……が、しかしうまくいく保障は無いし下手すればただHPを消費しただけになる。


(……まあ、最悪そうなったら門番を気絶させてでも行くしかないか)


「リン」


呼ばれた気がして目をやると物陰に誰かがいた。足元の白狼でそれがウルカだと気が付く。


「……ウルカ、どうしてここに」


「今日のリンの雰囲気がいつもと違ったから。何かあるんだと思って追跡のスキルをかけていたんだ。ごめん」


「え、うそ……気が付かなかった。心配させたかな、こっちこそごめんね」


追跡スキル……思いつくものはいくつかあるが、プレイヤーにかけられるスキルはなかったはず。もしかしてNPC専用の固有スキルだったりするのかもな。

首を横に振ったウルカが門番を見た。


「その様子からするとリンは村の外へ出たいのかな」


「……うん、ちょっと。詳しくは言えないけど」


「そっか。なら僕とカムイで強力しようか」


「それは……」


「大丈夫。協力したからと言って見返りを求めたりはしないからさ。任せてよ」


「いや、そうじゃなくて。ウルカはダンジョンへ繋がる洞穴の件で……」


発見されてしまった洞穴にはウルカのモノであるラックが掛かっていた。その為、故意に隠していたことがバレ、長老と一族の長である父にかなり叱られたらしい。

本人はそのことを全く話さないが、こんな狭い村だ。噂話は一瞬で巡っていき俺の耳にも届いた。


「ああ、それか。やっぱり知ってたんだね……ごめん」


「え、なんでウルカが謝るの?」


「気に病ませていたら申し訳ないなって。けど、あれは僕の臭い消しが甘かっただけだからね。私の叔父さん、族長のパートナーの鼻をちょっと舐めていた……だから失敗した僕が悪いんだ」


「違うよウルカ。元はと言えばウルカが私に協力したからでしょ」


「それもそうだね。でもこれは僕がしたくてしたことだからさ」


「……前に言っていた」


彼女の母親の事。ダンジョンに放置され回収できなくなった母との再会。


「ああ、まあ……それもあるけど。でもそれだけじゃないからさ」


「?、どういうこと?」


「僕は昔から君が好きだから」


心なしか少し困ったような表情のウルカ。決してそういう意味ではなく友達としてという意味んだろうけど、これでも元は男の俺だ。そんなことを言われると無駄に心音が大きくなり顔が赤くなってしまう。


「君の役に立たせてほしい。だから嫌だと言っても僕は強力する……たとえまた罰を受けることになったとしても、これが僕の想いだからね」


言葉に強い意志のようなものを感じた。それと同時にその気持ちが揺らぐことがないことを理解する……なら。


「わかった。お願いするよ」


俺のその返答に彼女は満面の笑みで頷いた。



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