第3話 レベリング



「よっしゃあああ!!これでレベル20―――!!」



――

【ステータス】《称号》深淵ノ死者

《名前》リン《ジョブ》白魔道士

レベル:20

HP:248/340

MP:180/560

筋力:72

魔力:211

精神:98

俊敏:287

詠唱:173


《装備:武器》

R3『クリスタルの杖+3』攻撃力(物):46 攻撃力(魔):128

《装備:防具》

N1『魔道士の外套』防御力(物):11 防御力(魔):18

《スキル》

★【魔眼】:消費MP――

☆『魔弾』:消費MP30

《魔法》

☆『ヒーリング』:消費MP15

☆『エアマジック』:消費MP5

☆『マジックバースト』:消費MP20

☆『エアリアルヒール』:消費MP20


――


「いやあ、しかしクリスタルの杖がドロップするとは……しかも+3とか!強運かよ!」


武器にはレア度の他に強化値がある。同じ武器を重ね合わせることで武器名の右に+1~10までの数値が段階的につき、元の武器よりも強くなる。

ただし強化するには同じ数値の同じ武器でしかできず、+1なら+1と。+4を重ねたい場合は+4どうしでしか合わせることができない。


しかしごくまれにあらかじめ+値が付いたアイテムが魔獣からドロップすることがある。


「いやはや、やっぱりレアドロは嬉しいものですなあ!……まあ夢中になりすぎて9層まで降りてきてしまったわけなんですが。あはは、は」


これは割とゲーマーあるあるなのではないでしょうか。「あとちょっと、あとちょっと……!」と言いながらも気が付けば数時間やっている。それでなんど徹夜で学校や職場にでたことか……。

リトルオーク12体、リトルゴースト11、レッサーゴブリン18、ゴブリン9体、角ウサギ8体、クリスタルゴーレム15体←こいつからクリスタルの杖がドロップした。

かなりの数の魔獣を狩ったな。時間にしておそらく1時間……いや、体感で1時間ならもっと経ってるか?


迷路のような広範囲のダンジョン。初心者であればレベリングはおろかマッピングするだけでも2時間弱はかかるだろう。しかし俺は前世で幾度もこのダンジョンに来ているため、マップは当然のこと更には魔獣の密集している地点、沸く(リポップ)タイミング全てを覚えている。なので効率的にハイスピードでレベリングすることができた。普通ここらでレベルを15も上げようと思ったらまだまだ……かなりの時間がかかるはずだ。


(さらに今の俺には【魔眼】がある……ほとんど一撃で魔獣を仕留めているから、速度的にその分も上がっているはず。やり過ぎた感はあるけども)


大きな扉を見上げた。この部屋にはボス【デビルオーク】がいて、その奥に次の下層へ行くための階段がある。推奨レベルは32。こいつも倒しておきたい気持ちはあるけど、ボス部屋は入ればプレイヤーかボス魔獣のどちらかが死ぬまで出られない。セーブも出来ないこの状況、死んだらどうなるかわからないし万が一にも死ぬことはできない。それを考えると安全マージンをとってレベル35は欲しいな。


「あっ……やばい」


ふと我に返り青ざめる。上で幼馴染たちを待たせていることを思い出し、俺は慌てて走り出した。


(うわぁ、人でなし過ぎる!人待ちぼうけさせてレベリングとか最悪なんだけど!!)


NPCである以上、彼らは俺がチュートリアルを済ませ戻るまでは下層に来ることはできない。だから彼らが俺を探しに来て魔獣に殺されてしまうなんて事はないから、その点は心配ないけど。


(でもどうなんだ?ここがあの【LASTDREAM】のゲームの中だとするなら、彼らはAIによって作られているんだよな。その人格も、意思も、行動も……であれば、俺を心配なんてするはずもないのか?いやしてるふりくらいはするだろうけど)


上層へと上がるための階段を発見。上り始めた時、足音が聞こえた。誰かが下ってくる。他のプレイヤーか?と考えが過ったが、しかしすぐに違うと分かった。


「リン……!!」


階段を降りてきたのはなんと幼馴染であり、パーティーの一員。ジョブ戦士のラッシュだった。短い金色の髪、青い瞳。黒くくすんだ革の鎧、年季の入った銅の剣を背負った少年。

彼は俺の顔を見るなり泣きそうな顔で駆け寄ってきた。


「み、見つかってよかった、リン!おまえ……めちゃくちゃ探したんだぞ……!!」


「あ、え、えっと……ごめん。ちょっと迷っててさ」


(むぐ、ぐ。本当に悲しそうな顔……胸が痛むなぁ、これ。いや、それよりもなんでこの階層にラッシュが来れているんだ?まだ俺のチュートリアルは終了してないだろ)


「まあ、リンが無事でよかったよ。早く帰ろう、ここは魔獣のレベルが高い。危険すぎる」


「うん、わかった」


ラッシュは俺を安心させるように微笑んだ。ここまで来るのにそうとう怖かったのだろうか、その笑顔はぎこちないものだったが本気で俺の身を案じているのが伝わってくる。この世界のAI、やっぱりすごいよな。


「ちょっと、なにちんたらしてるのよ!見つかったならはやくいくわよ!」


苛立ちを含んだ声色。ラッシュの後ろにいた同じく幼馴染の一人。黒魔道士のコクエ。

主張の強いとんがり帽子に漆黒のローブ、これぞ黒魔道士のようないでたち。燃えるような朱色の髪色と気の強さを表すかのようなツンとした目尻。魔法を極めんとする気の強いお転婆少女だ。


「ごめん、コクエ。行こう」


ぎろりとこちらを睨みフンとそっぽを向くコクエ。


(おお、こわっ)


彼女が怒るのも無理はない。俺が勝手にこんな深くまできちゃったせいで、危険な目にあっているんだから。

俺は二人を注視する。視界の左に小さなウィンドウが現れ、二人のレベルが確認できた。


☆【ラッシュ】レベル5。戦士。

☆【コクエ】レベル5。黒魔道士。


ここに徘徊している魔獣のレベルは10~18。この二人がエンカウントすれば間違いなく殺されてしまうだろう。まあ、そもそもの話NPCが魔獣とエンカウントするのかは疑問だけども。って、あれ?


「そういえばウルカは?」


「「!」」


きょろきょろとあたりを確認する二人。ラッシュとコクエがひきつった表情で互いの顔を見合った。

そしてラッシュが震える声でこういった。


「……は、はぐれた」




______________________________________



【皆様へのお願い】


こちらの作品が面白い!先が気になる!と思われた方は、作品のフォロー、♡、☆☆☆で応援していただけると嬉しいです。


作品を続ける活力にもなるので良ければお願いします。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る