第20話


 「ウィレット・ジェシーという人物を探してほしい。」

 山積みの資料を手に取るとレイ様は目標人物ターゲットの名を述べた。

「どのような人物なのでしょうか?」  

 手がかりがあった方が探しやすいと思い、私はレイ様に尋ねた。

 「中性的な名前だから、性別も年齢も全くわからない。それどころか、現在生きているかすらもわからない。」  

 それって、探す意味あるのか…?

 「唯一確かなのは、ジェシーがウィレット・フィーガス総裁の子だということだ。」

 よくわからないが、要するにすごい人らしい。

 

「ウィレット総裁は、『アレース』のトップなんだが。」 

レイ様の表情が曇った…。

 「『アレース』は魔王討伐を謳った市民団体だが、本当は政府の組織なんだ。」 

 目眩ましのつもりだろうが筒抜けだぞとレイ様は笑った。 

「総裁は、1ヵ月ほど前に亡くなった。俺の父が1ヶ月前にそいつにられたから、仇をとったというところだ。」 

 「レイ様がお父様の後を継いだように、ウィレット総裁の後はジェシー様が継ぐということでしょうか。」 

 「そういうことだ。」 

レイ様はそう言って頷いた。  

未来の敵だから、早いうちに片付けたいということか。 

 

 不幸にも、大量の資料の中からジェシーと思われる人物の情報は得られなかった。

日が沈んだ後も、夕食の後も、二人で資料をあさり続けたが収穫は無し。名前以外の情報がないため仕方ないだろう。

 

 だが私は、ある不審点に気がついた。

 「総裁の奥様…。つまり、ジェシーの母親にあたる方は今どちらに?」 

あえて感情の起伏を付けずに尋ねると、レイ様も淡々と答えた。 

「ああ。俺が殺した。」

 つまり、現在ジェシーは孤児ということだ。国の管理下におかれている子供なので、なんともいえないが、両親が不在の子供なんてすぐに噂が広がる。

 「総裁とその嫁はったが、その他にも数十人は殺した。もしかしたら、その中にジェシーがいたのかもな。」 

 「そうだと話が早いですね。そして存命だったとしても、近いうちに居場所は割れるでしょう。」  

 

 レイ様も「そうだな」と安心したような顔を見せ、サッとソファーから立ち上がった。

 「さて、そろそろ寝るか。」 

 「私も、部屋に戻ります。」

そう言って私も立ち上がると、レイ様に腕を引かれた。 

 「今、何時かわかるか?」 

レイ様はそう言って時計を指さした。

 「10時30分です。」 

そう答えてから気が付いた。まさか、こいつ…! 

こんなに長い間私を部屋に留めていたのはこのためだったのか。

 「変な時間に俺の部屋を出て、誤解されたら困るんだろう?」

レイ様はそう言ってニヤッと笑った。

 そうだけど。そうだけど…!さすがに二日連続は…。 


「なら、今晩も俺と一緒だな。」 

反射的に首を縦に振っていた自分に一番驚いた。 

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