第2話

「この度は大変申し訳ありませんでした。」

 男性は私にひざまずいて深々とお辞儀をしてきた。格式の高そうな彼が私にひざまずいて謝っているので私は混乱した。 


「レイ様はあなたのおかげで一命をとりとめました。あなたはレイ様の命の恩人でございます。」

 どうやら私は、「レイ様」という偉そうな人を助けたようだ。その時に病院に運ばれて、目覚めたらこいつに体が乗り移っていたわけだ。 

 

「そして、こちらは我々からの提案なのですが…。」 

男性は続ける。

「よろしければ、レイ様のボディーガードになっていただけないでしょうか?」 

ほう。面倒くさそうな話だ。私は『嫌です』と即答しようとしたのだが。 

 

「もちろん、ただでとは言いません。一日につき800万ザーウお支払いいたします。」   

男性はそう言った。 

 800万ザーウだと?よくわからない単位だけれど、換算すると一日5000万円か。(というか、なんでこの単位を変換できるんだ?) 

 一日5000万円と聞くと、断る理由がないだろう。 

 

「やります!」

私は笑顔で即答した。ああ、なんてちょろい女なのだろう。 

 

「ありがとうございます。警護はお嬢様が退院される明後日から、我々が次の正式なボディーガードを見つけるまでの10日間だけでかまいません。」 

 なるほど。仮のボディーガードということか。それでも10日で5億円。なんと良い話だ! 

 

「それでは、警護対象はあちらに座っていらっしゃるレイ様です。明後日からよろしくお願いいたします。」

 男性はそう言って部屋を出て行った。雰囲気的にこの男性はレイ様の側近なのだろう。 

 

 男性が示した方を見ると、頬杖をつきながら窓の外を見ている青年が椅子に腰かけていた。 

 彼は15歳から20歳くらいだろうか、私の方は一切見ようとせずに窓の外を眺めている。

  

 キリっと上がった目尻に整えられた眉。鼻筋は高く美しい肌をしていた。風が吹くとサラサラと髪がなびいていて…。 

 かっこいい人だと思った。

 認めたくないが、一目ぼれだ。

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