警護対象は魔王さまっ!?

しろ

第1話

 美澄玲奈みすみれなは女子からモテる女だった。 

 高校1年生にして、生涯女子からもらったバレンタインチョコは53個。それも友チョコではなくガチ恋の方。

 53と言う微妙な数字は戦闘能力になってほしいと願いつつ、私は今日もJKを名乗って学校へ向かった。 

 

 短いスカートの丈は、足の長さ故のものでけっして足を長くするために折ったり切ったり加工したわけではない。 

 生まれての方伸ばしたことのない短い髪は、今日も寝ぐせがついていないため無加工のまま家を出る。 

  

 無加工のまま生きてる私だが、別に男子にモテたいとは思わない。 

いや。正確には彼氏はほしいのだが、不可能であると察している。 

  

 父は柔道八段、母は剣道六段。そんな武道家サラブレッドの両親を持つ私は、歩けるようになった次の日には柔道を習わされていた。 

 幼稚園に入る頃には剣道も習わされ、小学校に入学する頃にはどちらも段位を取り現在は柔道五段、剣道三段を所持している。

 それだけでは飽き足らなかった私は武道という武道を極めつくした。小学校三年の時に始めた空手は現在二段で、居合道も初段を取得した。 

  

 そんなこんなで、勇ましく育ちすぎた私は男子から見ればただの「武道ゴリラ」というわけだ。 

 体格はそれほどごつくないけれど、上背と筋肉質な四肢のせいでどうも女として見られない。(見た目だけじゃなく、勇ましい性格に問題があることもわかっている。) 

 

 別に彼氏が欲しいなんて思わないから。いなくたって人生楽しいし。私は武道と結婚するの!

 そう自分に言い聞かせ信号を待っていると。 

 不運にも自動車事故に巻き込まれた。どれだけ武道が得意だったとしても、相手が人ではなく車なら勝ち目はない…。 

 一瞬で車の下敷きになった。多くの人に「大丈夫か!」と叫ばれている。しかし、返事もできないまますぐに私の意識は飛んでしまった。 

 

 目を覚ますと、私はベッドの中にいた。 

なんだ。交通事故に巻き込まれても生きているだなんて。やっぱり私は超人武道家ゴリラなのかもしれない。

 両腕に力を入れてベッドから起き上がろうとすると。 

 

 「お目覚めですね。お嬢様。」 

知らない男の声がした。まずい。これは敵か?私は急いで間合いを取ろうとした。 

 

「無理に動かないでください!」

 私は声の主に体を支えられ何とか起き上がることができたのだが…。 


 自分の髪が長かった。肩の下くらいまであってくすぐったい。 

 四肢に目をやると明らかに今までの腕よりも細いことに気が付いた。それに色白だ。 

 

 「えっと…。」 

これはいわゆる転生というやつか?私は恐る恐る男性と目を合わせた。 

 

「この度は大変申し訳ございませんでした。」 

 意外にも良い声の持ち主のその男性は深々と礼をして私の前にひざまずいた。

  

 謝られる心当たりは…。ありません。

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