第3話
「全部、聞いておられたのですよね?明後日から10日間私がレイ様の警護を担当いたします。よろしくおねがいいたします。」
丁寧な言葉遣いは意識しなかったが、自然と出たものだ。こいつが相当身分が高いことは想像がつくので本能がそうしろと言ったのだろう。
私がそう言うと、レイ様は椅子から立ち上がった。その瞬間初めて彼と目が合う。
大きくて、美しい瞳だった。引き込まれるような美しい瞳に私は思わず息を呑む。
「気安く俺の名前を呼ぶな。」
彼はそう言って部屋を出ていった。
ひとこと話しかけただけで嫌われるなんて…。なんと生意気な小僧なんだ。
あいつの警護を10日間もするのか?今のほんの数秒で、二度と会いたくないと思った。あの目つきに声とくると、確実に性格が悪い男だ。レイ様は人をイライラさせる才能があるのだろう。
ボディーガードという立場を利用して、あいつをこらしめてやるっ!
何事もなく私の入院生活は過ぎ去り、退院の日の朝にあの時の男性が私を迎えにきてくれた。
「申し遅れましたが、私はブラインといいます。レイ様の執事でございます。」
あのクソガキにもこの執事のような態度を見習ってほしいと思った。
扉は率先して開けてくれるし、車に乗る時すらもエスコートしてくれるなんて本物の紳士だ。
そんな召使を傍においていて、どうしてあんなクズに成長するのだろうか。親の顔が見てみたいわ。
車の中でブラインは様々なことを説明してくれた。
レイ様は由緒ある家系の長男らしい。(どうりでわがままなわけだ。)
ボディーガードは3人ほどいたのだが、先日彼が命を狙われたときに全員亡くなったらしい。その時に一人で走って逃げたレイ様が階段から転落し、それをかばってレイ様を助けたのが現在の私らしい。
あんなクソガキなんて死んでしまえばよかったのに…!
だが、私は冷静に考えてある問題に気が付いた。
「レイ様は命を狙われるような身分なのですか…?」
ということは私が10日間彼のボディーガードをするのも、けっこうリスクがあることではないか。つまり私も死ぬの…?
「お答えできません。」
執事はそう言って黙って車を運転した。
私は、関わらないほうが良いことに足を突っ込んでしまったのか。
クソガキを助けるとか、命がけのボディーガードとか、転生した現在の私はミスを犯しまくっている…!
まあ、どうせ死んだ身だからいいか。
「一つだけお尋ねしたいことがあります。レイ様は私のことを嫌っておられますか?」
私はブラインに尋ねた。
運転しているブラインはハンドルを右に切りながら答えた。
「逆です。もうすでにあなたを好いておられます。」
ちょっと待て。ちょっと待て。ちょっと待て。
あいつが私に惚れているだと…!?
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