第4話
「さあ、お屋敷に到着いたしましたよ。」
ブラインはそう言って大きな門の前で車を止めた。
私は扉を開けて車から出ようとしたが、ブラインに引き留められた。
まだですよ、と首を横に振るブラインを見つめているとすぐに門が開いた。
そこから、ブラインはもう一度車を走らせた。
門から屋敷までさらに5分ほど車を走らせ、ようやく屋敷の入り口に到着した。
なんだここ。ほんとうのお屋敷じゃん。というか、どんだけ金持ちなんだよ!
車を降りると私はブラインに屋敷を案内された。
「一階の大広間です」
「こちらは侍女たちの待機部屋です」
「あちら扉の奥がレイ様の部屋です」
「厨房です」
「あの、何部屋あるのですか?私の部屋だけ教えていただければ十分です。」
あまりにも情報量が多いが、自分の部屋さえわかれば十分だ。
「21LDKです。お嬢様の部屋は2階の東側です。レイ様の部屋のすぐ傍です。」
ブラインはそう言ってにっこり笑った。そして、「レイ様のご希望ですよ」といらない情報を付け足した。
「今日から基本的には屋敷で自由に過ごしていただいて構いません。お仕事は、レイ様が外出されるときの同行と、お屋敷に来客があった時の警護をお願いいたします。」
何もない日はただ屋敷で過ごしているだけで良いと言われた。それでもちゃんと給料は支払われるらしい。
なんだよ、やっぱりいい仕事ではないか。
「とりあえず、レイ様にご挨拶だけ済ませてください。それでは。」
ブラインはそう言って深々とお礼をし、どこかへ行ってしまった。
「失礼いたします。」
私はコンコンと部屋の扉をノックし、返事を待つ。
「入れ。」
レイ様にそう言われ私は部屋の扉を開ける。うわ。この扉けっこう重いぞ。
中に入るとレイ様は大きなソファに腰かけスマホをいじっていた。ただのゲーム少年のようだ。
「おまえか。」
レイ様は私に気づいたのかスマホを置いて立ち上がった。
「おまえ、名前はなんという?」
へっ?名前…。前世は
「名乗るほどの名ではないので。お好きにお呼びください。」
私は機転を利かせてそう言ったのだが。
「面白い女だ。お前はまだ俺に反抗的な態度をとるのか?」
さすがにこれは怒りを買うか。悪気はないのだが私はペコリと謝っておいた。
「そうだな。なら俺が名前を付けてよいのか?」
さっきから、そうして良いと言っているではないか。本当に面倒な男だ。
彼はブツブツといろんな単語を呟いて、途中で納得したの一人で頷き始めた。
「決めた。お前の名はティアだ。ローレンティアがぴったりだ。」
ろーれんてぃあ?食べれるのか?
「失礼ですが、ローレンティアとは…。一体何なのでしょうか。」
「お前には関係ない。とにかくお前はこれからティアだ。いいな?」
「かしこまりまりました。」
これ以上いろいろ尋ねると、またよくわからない怒りを買ってしまいそうなので私は挨拶だけして部屋を出た。
ティアか…。なんかいい名前だ。
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