第8話
「どうかな。似合ってる?」
私はレイに勧められたワンピースに着替え、試着室を出たのだが…。
レイがいなくなっていた。
レイの警護のためにここにいるのに、レイから目を離すなんて…!
私はありったけの金(といってもたったの2万)をレジのお姉さんに渡し、急いで店を出た。
まだ数秒しか経っていないはずだから視界に入るはず…。
左右を見渡すとレイは男三人に腕を引かれ下の階へ連れられそうになっていた。
「見つけた!」
私は走ってレイを追いかける。彼らはショッピングモールを出てすぐ右の角に曲がった。
私も急いでその後を追い、人通りの少ない通りで男たちに追いついた。
「ふっ!」
私は一番後ろを走っていた男に飛び蹴りをきめた。見事に男の背中に命中し、男は地面に倒れこんだ。
「なんだ!お前は!」
残る二人の男が私を警戒する。
私はすぐに左の男と間合いを詰めて大外刈りで男を投げ飛ばした。ティアの体は小さいので力いっぱい身を切って投げ込んだ。
よし、あと一人!
もう一人の男とも間合いを詰めようとした時の事だった。
男は杖を出して、私をめがけて呪文を叫んだ。
「イエロ!」
私は急いで受け身を取って倒れた。何とか回避したのだが…。私の後ろの壁は氷で包まれていた。敵が魔法を使えるだと?
そうだ、ここはあくまで異世界なのかと思い出し私は起き上がろうとした。
「デスパシオッ!」
まずい。寝転がっているから、こんどはよけられない…。私はもろに呪文を食らってしまった。
しかし。…。痛くない。
私は急いで立ち上がった。
その時に呪文の正体に気が付いた。動きが遅くなってしまう…!私は素早く動いているつもりなのに、どうも動きが遅い。
私は久々に本気を出して、すぐにその男の杖に向かって回し蹴りを入れた。
「運が悪かったな!
最大出力を出せば速度低下なんて関係ない。
その後杖を落とした男は本当に無力だった。私はすぐに男を体落としで投げ飛ばした。
「あんたたち、何者なの?」
地面に倒れこんだ3人に向かって私は尋ねた。私を見上げる3人の泣きっ面はいい気味だ。
「英雄になる予定だったんだよ!お前こそ何者だよ?」
一人の男は叫んだ。そしてもう一人の男も叫ぶ。
「魔王をかばうとか、お前も魔王の仲間なのか?」
はぁ?何を言ってるの?
「私の蹴りを食らって、頭がおかしくなったみたいだね。じゃあ、ファンサでもう一回っ!」
私は3人にもう一度蹴りやかかと落としを入れてあげた。
そして、レイの手を引いて走って逃げた。
***
「ここなら平気そうだね!」
私たちは人のいないところまで逃げて、立ち止まった。
「はぁ…はぁ…。お前、何者なんだよ…。」
呼吸が荒く、レイはだいぶ疲れている様子だ。(私の方が疲れてるのに!)
そんなことより…。
「大変申し訳ございませんでしたっ!」
私は地に頭をつけ、レイに謝った。
まだ2日目だから1億しかもらえない…。
頼むから私をクビにしないでくれ…!
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