第27話

「あなたが魔王じゃなくなって、困る人もいますよ…?」

  

 レイ様が突拍子もなく弱音を吐いたせいで、私も変なことを言ってしまったではないか。 

 

 「そんな奴、どこにいるんだよ…?」


 レイ様はそう言って悲しそうに笑った。 


 やはり、そう来るよな。仕方ない。私はそっぽを向いて呟いた。  


「私のためだけに生きていればいいのです。他のことは考えないでください。」  


 顔が赤くなっていったのは、私だけではなかった。 

  

 ***


 その後は今後の行動計画を話し合って、レイ様が少し仮眠をとった。  


 私はというと睡魔との格闘が続いた。


 レイ様には「お前も寝た方がいいんじゃないか」と言われたが、そういうわけにはいかないのがこの仕事だ。


 私は、すやすやと眠るレイ様の隣で常に意識を切らさずにあたりを警戒した。

  

 安心しきって無防備に眠るレイ様の姿は見物だった。


 洞窟内には彼の吐息以外に音は無く、幸せそうに眠るレイ様が気になって仕方なかった。


 さすがの私でもこれほどの隙を見せられて、何も思わないほど恋愛に疎くない。


 触れてみたいと思ったり、本当は気づいてほしい気持ちを囁いてみようと思ったり、欲求との戦いだった。

 

 思えば、レイ様は夜に私を誘っても何もしてこなかった。

 しかも二日とも。(まあ二日目はドタバタして何もできなかったと言った方が正解か。)

 

 おそらくレイ様は、私をボディーガードとして大切にしてくださっているわけで、私が想像しているような関係は望んでいない。


 きっと、あと4日で契約は切られてしまうのだろう。 

 

 「契約延長してもいいんですよ?」  

 思わず口に出していたがレイ様はぐっすりと眠ったままだった。 


 やがてジリジリと日が登っていき、洞窟内にも少し日の光が差し込んできた。  


 契約終了まであと4日か…。

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