第16話
「魔法ですか?そんなもの使えませんが…。」
私の言葉にレイ様はひどく動揺していた。まずい事を言ってしまったかも。
「魔法が使えないって、正気か…?」
レイ様はそう言って立ち尽くしていた。私はさっさとプリントの束を拾って机の上に乗せる。
「ええ。この世界では、人間は魔法が使えるのですか?」
私はおそるおそる尋ねた。
「いや。魔法を使えない人の方が多い。世界の人口の3割が能力者で、残る7割は使えないが…。」
じゃあ、なんで私が魔法を使えないことにそんなに驚くんだよ…!
「この間、俺を助けてくれた時とか昨日とか…。魔法なしにどうやって戦ったんだよ?」
レイ様は不思議そうに私に尋ねてきた。
「身体能力なら誰にも負けません。」
私はきっぱりと言い切った。もしかしたら、魔法が使えないことを理由に解雇されるかも。ボディーガードという肉体労働ならなおさらだ。
「なんだよ!かっこいいな!」
レイ様はそう言ってけらけらと笑っていた。
解雇は免れそうなので安堵したが、『かっこいい』と言われたのが気にかかった。
三澄玲奈はかわいいよりもかっこいいと言われたほうが嬉しかったが、
ほんの少し俯くと、レイ様はそれに気づいたのか私の傍にそっと寄ってきた。
「魔法が使える・使えないなんて関係ない。俺のために戦ってくれるなら、それだけで十分だ。」
レイはそっとそう言ってくれた。えっと…。もしかして。
「強い女は嫌じゃないの…?」
私はレイをそっと見上げた。
「何言ってるんだ?お前は俺に会うために強く生まれてきた。違うか?」
「バカっ!」
私は軽くレイ様の肩を叩いた。
か弱き乙女じゃなくても…。強い私を認めてくれるだなんて…。
ティアじゃなくて、美澄玲奈になったとしても、きっと彼は私を見てくれるんだ。
***
「えっと…。炎を合成して、威力を強化できるということは…?」
「もとの構造も炎か。つまり答えは③!」
意外な事にも、魔法化学はレイ様に教えてあげられるほどの知識があった。
もちろん三澄玲奈は魔法化学なんて言葉すら知らなかったため、おそらくティアが魔法化学が得意だったのだろう。人間が記憶喪失になっても四則計算は普通に理解できるように、ティアも日常レベルで魔法化学を勉強していたのかもしれない。
ということは、ティアは魔法を使えるのか…?
「これで全部終わったな。ありがとう。」
「別に、たいしたことではありません。」
そう言って椅子を立ち上がろうとすると、急にフラッとして倒れそうになった。
「ティア!」
レイ様に抱えられて何とか地面に倒れこまずにすんだ。
「お前、すごい熱…!」
レイ様はそう言うと、ふらふら歩く私に肩を貸してくれた。
そういえば私、寝不足なんだった…。
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