第17話

「はぁ…。平気です…。自分の部屋に戻れます…。」 

私は必死でそう訴えたのだが、またレイ様の寝室に寝かされた。 

 

「ダメだ。」

そう言ってレイ様は私のおでこに触れた。 

「やっぱり熱いじゃないか…!なんでもっと早く言わなかったんだ?」 

 正直に言うと熱はそこまでない。(たぶん37.6度くらい) 

昨晩眠れなかったせいでひどい寝不足に襲われて、頭がぼんやりしているだけだ。朝は平気だったので、てっきりティアがショートスリーパーなのだと油断しきっていた。 

「熱は平気だよ…。それより、今すぐに寝たいのと頭が痛い…。」 

「すぐにメイドを呼んで来る…。」 

 私はすかさずにレイの腕を握って首を横に振った。 

寝不足が原因だから、寝れば治るんだよ…!そんなに事を大きくしないでいいだろう。 

私はレイ様を引き留めるためにとっさに口にした。 

「一人にしないで…。」 

レイ様は少し顔を赤くして「しょうがないな」と呟き、私の手を握ってくれた。 

 

 今のは、目有度を呼ばないでほしいがために放ったとっさの一言。つまり本心ではない。 

 そう自分に言い聞かせて高鳴る鼓動を沈めると、気が付いたころには眠りについていた。 

  

*** 


 レイ様の部屋で宿題を手伝って、体調が悪くなって。たしかその時が昼の11時くらいだった。

 私はぼんやりと目を開けた。辺りが暗いということはもう夜か。ざっくりと見積もって最低でも6時間くらいは寝たようだ。 

 だいぶ寝てしまったなと思うが、おかげで眠気も頭の痛みもバッチリとれた。 

私はゆっくりと体を起こそうとして体を右に向けると…。 

 

 レイ様が眠っていた。 

 

えぇぇぇぇ!これはまずいだろう。 

 体調が悪くて完璧に爆睡だったので「一夜の過ち」とかそういうのはないと思うが、さすがに年頃の男子と同じベッドはまずい。 

 私はそっとベッドを抜け出そうとした。 

「うっ…。起きたのか…?」 

レイ様は目をしょぼしょぼとしながら私に声をかけた。なんで目を覚ますんだよ! 

「はい。体調は大丈夫ですので、部屋に戻ります。」

 私は焦って早口になりながらお辞儀をした。 


「いいけど、もうすぐ夜の11時だぞ。」 

夜11時だと!?私はそんなに寝たのか!なんでもいいから「部屋に戻ります」と言おう。そっと口を開こうとすると…。 

「こんな時間に俺の部屋から出ていくところを誰かに見られたら…。またあの女たちに目をつけられるぞ?」 

レイ様はいたずらっぽくそう言った。

 「何を考えているのか知らないけど、この部屋に残るのが一番安全だ。」 

レイ様はそう言って悪い笑顔を見せた。  


 悪い笑顔もかっこいいって、反則だ。

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