第23話
「ちょっと…。」
レイ様は近づくと私を抱きしめた。
「お前、俺に言ってないことがあるだろう。」
何の話だろう。そんな事たくさんあるけれど…。
「俺の事、嫌いじゃないって言ったよな?」
そういうことか。でもそれはレイ様も同じではないか。
「そっちこそ。言葉にしてくれた事はありませんよね?」
まあ、態度でバレバレですよと付け加えて私は笑った。
「命令だ。聞かせてくれ。お前の気持ちを。」
ずるい男だ。私はレイ様の瞳を見た。
ほんの少し息を吸って、口を開こうとした時の事だった。
コンコン
レイ様の部屋の扉が何者かにノックされた。
「…!私はベッドの下に隠れておりますので。」
「ああ。俺が出るからお前は隠れていろ。」
すぐさま二人は冷静さを取り戻し、私は自然と戦闘体制になった。
「ブラインです。夜分に大変失礼いたします。」
レイ様が扉を開けた瞬間にブライン様の声が聞こえた。
普段落ち着いているブライン様だが、ほんの一瞬聞こえたその声に落ち着きはなかった。
その後の会話の内容は全く聞こえなかったが、1分もしないうちにレイ様は私の元に戻ってきた。
「ティア。今すぐに部屋に戻って荷物をまとめろ。必要最低限の着替えとお前の大切なものだけ持ってすぐに出発するぞ。」
レイ様の声も表情もひどく焦っているようだった。
「何かあったのでしょうか?」
私はレイ様に尋ねる。
「この屋敷が
「わかりました。」
私は急いで部屋を飛び出した。
「あっ…!」
レイ様の部屋の扉の前にはまだブライン様が立っていた。
「えっと…。これは…。」
私はしどろもどろになりながら言い訳を考え
る。
ブライン様はにっこりと微笑んで全てを察してくれたようだ。なんか恥ずかしい。
「探す手間が省けました。こちらをどうぞ。」
ブライン様はそう言って一枚の紙を渡してくれた。
「こちらは我が一族の別荘のありかです。ひとまずはここで身を隠してください。」
「かしこまりました。」
所見の地図だったが、すぐに経路が頭に浮かんだ。
ここから電車で二時間くらいか。駅から別荘までは情報を残さないために歩いた方が安全かもしれない。
ティアの潜在的な頭脳に感謝しながら私は急いで荷物をまとめた。
リュックに着替えだけ詰めて、私はレイ様の元へ戻る。
「さあ、行きますよ!」
不安そうな表情を浮かべているレイ様の手を引いて暗闇へ飛び出した。
ついに私の仕事が来た…!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます