第12話
4日目
今日は天気が悪かった。日付が変わった頃から降り始めた雨は、今日一日中降りつづく予報で午後には雷を伴う予定だ。
私はゆっくりと起き上がり窓の外へ目を向ける。
まだ大雨ではなさそうだ…。それでも少し憂鬱な気分になりながら私はレイ様に買ってもらったワンピースに着替え、髪を整えて部屋を出る。
一階へ続く長い階段を下り、朝食をとりに向かった。
「おはようございます。ブライン様。」
私が軽く会釈をすると、彼も低く落ち着く声で「おはようございます。ティア様。」と返してくれた。
今日の朝食はフレンチトーストコーンポタージュ、ポテトサラダと朝からお洒落だ。私は優雅に朝食を取り終え自分の部屋に戻った。
自分の部屋に戻ると私は、いかにして記憶を取り戻そうかと思考を巡らせた。
漫画や映画で見る転生というものは、高いところから落下して頭を強く打ったり、鏡や秘密の扉を介して世界を移動できたりする。
私は試しに、床に頭を打ち付けてみた。
ゴンッという鈍い音が響いたと同時に強烈な痛みに襲われた。
…。やっぱりダメか。
正直、レイ様に溺愛される日々も悪くないのだが、どうしても魔王の味方になるという事実が引っかかる。
彼は命を狙われているわけだし、私の命も常に危険にさらされる。
元の世界に戻れるなら戻ったほうが良いことは事実だ。
今後のことをぼんやりと考えていると、誰かに部屋の扉をノックされた。
『どうぞ』と返す前に、勝手に部屋に入ってきたのはシーナと名乗る女性だった。
「あなた、今日の午後予定はある?」
鼻が高くキリッとした眉が特徴の凛々しい女性は部屋に入ってきて早々にそう尋ねてきた。
「午後ですか…?今のところ予定はありませんが…。」
シーナと名乗る女性はおそらくレイ様の側近の侍女なのだろう。一般の侍女よりも良い服を身にまとっている。
レイ様は、お気に入りの女にはわかりやすく特別待遇をするのか。
「それなら、午後から手伝ってほしいことがあるの。部屋の掃除なのだけど、人手が足りなくて。」
シーナはそう言ってニッコリと笑った。レイ様が気に入る理由がわかった気がした。笑顔が可愛い人だ。
「わかりました。任せてください!」
私も笑顔で返した。
シーナに指示された通り私は午後から部屋の掃除を手伝うことにした。
集合場所の3階の渡り廊下付近に向かうと、シーナ以外にも6人ほどの侍女がいた。
「これで全員そろったわ。では、向かいましょう。」
シーナがそう言うと、5人の侍女達もクルリと振り向き彼女の後を歩き始めた。
「初めまして。ティアです。レイ様のボディーガードになりました…。」
すぐ傍を歩いていた女性に声をかけてみたのだが、わかりやすく無視されてしまった。
まあ、新人に厳しいのは想定内だ。
のんきに後をついていくと、だんだんと人のいない棟へ連れてこられた。
3階に集合させられたのに、おそらく今は地下にいる。
やはりこのお屋敷は広いなと感心していると、シーナは『着いたわ』と言うと何重にも鍵がかかった複雑な扉を開けて部屋に案内してくれた。
「あなたは、奥の棚の掃除をお願い。」
シーナに指示された通りに奥の扉へ向かったのだが…。
「じゃあ、お片付けお願いね!」
シーナと周りの侍女は満面の笑みを浮かべると、部屋を出ていった。
ちょっと待って!これは…!
今更気が付いて部屋の扉を開けようとしたが、もうすでに扉の鍵は閉められていた。
やっぱり、はめられたか。私はふぅとため息をつく。
それだけだったら良かったのだが…。
「キシャァァァー!」
謎の生き物の鳴き声がした。
奥を見つめると、色とりどりの魔物と目が合う。
片付けろって
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