第11話
次の日
私はレイ様に買ってもらったワンピースを着て彼の部屋を尋ねた。
「おはようございます。本日のご予定は?」
「今日は一日屋敷で過ごす。一応、命を狙われている身だから、俺は基本的には外出はしないんだ。」
じゃあ、なんで昨日外出したんだよ?余計な仕事を増やしやがって…。と思うものの、ずっと屋敷にこもっているのも退屈なのだろう。
『それなら、私が遊び相手になってあげようか』と言おうとした時のことだった。
「どうせ暇だろう?俺の遊び相手になれよ。」
レイ様はニヤッと笑ってそう言った。
こいつはどこまで人をイライラさせれば気が済むのだろう…!一気にイヤになった。
「遠慮いたします。」
私はきっぱりとそう言って部屋を出ようとした。
「待てよ。」
レイ様はそう言って私の右腕を引いた。
思わずドキリとした。意外と力が強いんだ。
振り返るとレイ様と目が合う。
「ごめん…。ずっと一人だと退屈なんだ。相手しろ。」
どうやら今回は真面目だ。
「しょうがないな…。」
私はレイの部屋のソファーに飛び込んだ。
「いいよ。何するの?」
「これとかどうだ?」
レイ様はチェスを引っ張り出した。
チェスか。将棋はできるがチェスはやったことないな…。
「チェス?やったことないけど…。」
「なら俺が教えてやるよ。」
まだやると言っていないのに、レイ様はコマを盤上に並べていった。
まったく…。自由な人だ。
「これがビショップでこっちがルーク。それで相手のキングを取れば勝ちだ。」
ピースは6種類しかないので一見将棋よりも簡単ようだが動かし方が複雑だ。
なんとか一通りの動かし方を覚え、私はレイ様と試合をしてみる。
「あっ。チェックメイト。」
レイ様が弱すぎるのか私が強すぎるのかは知らないが、簡単に勝ててしまった。
「くっ…!お前、絶対初めてじゃないだろう!」
「いや。武道と同じ感覚だったね。どれくらい間合いを詰めるとか、相手の隙はどこだろうとか、考え方が似てた。」
「武道…?」
しまった。うすうす気が付いていたがこちらの世界に武道の概念はないようだ。
これでは私が転生してきたことがばれてしまう…!
まあ、こいつも魔王だという秘密を教えてくれたわけだし、私も秘密の一つくらい教えていいか。
「実はね、私…。転生してここにいるの。」
「転生…。本気か?」
私はこくりと頷いた。
「交通事故にあって、目覚めたらあなたを助けたことになってた。それで今ここにいる。」
レイ様はあまり驚いていなかった。まあ、魔王よりはつまらない秘密だしな。
「お前、転生する前の『ティアの記憶』はあるか?」
レイ様はそんなことを聞いてきた。
私は首を横に振る。
「おそらくだが…。ティアの記憶が戻ると、元の世界に戻る方法もわかるぞ。」
「どうすればいいの?」
私は食い気味にレイ様に尋ねた。前世の私が今どうなっているのかは知りたい。
それに、親や友達なども心配しているだろうし…。戻れるものなら早く戻りたい。
「嫌だ。教えたくない。」
「レイのいじわるっ!」
ここまで言っておいて最後まで話さないのは反則だろう。
しかし、レイは俯いてぼそぼそと口を開いた。
「だって…。それを知ったらティアは前世に戻るんだろう?それは…。」
「困る」と呟いていた。
こいつ、ティアのこと好きすぎるだろう…!
私は思わず照れた。
「とりあえず契約期間の10日が過ぎるまでは教えないからな!」
レイ様はそう言って私を部屋から追い出した。
なんだよ。こいつも照れているのかよ…!
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