第14話

「レイ様…!ここは危険ですっ!」 

私は急いで立ち上がった。先ほどまで痛みで力が動かなかったはずなのに、レイ様を守ろうと思うと勝手に体が動いた。

 

「お前こそ…。探したんだぞ?」 

見ると、そこにはもう魔物の姿はなかった。 

「ケガはないか?」

レイ様はそう言って心配そうに私を見つめてきた。 

「平気です!」 

私が元気よく答えるとレイ様も安心したように笑った。 

  

 それと同時に、私は安心して気を失ってしまった…。

  

 目が覚めると、私は天蓋付きのベッドにいた。左右を見るとカーテンで覆われていて、女王にでもなった気分だ。

 「起きたか。ティア?」 

体を起こすと、すぐにレイ様が声をかけてくれた。 

 どうやらここはレイ様の寝室らしい。 

 警護対象の前で意識を飛ばした上に、警護対象のベッドで寝かしつけられているなんて…。私はそろそろクビになってしまうかもしれない。


「心配をかけてしまいすみませんでした。」 

「俺がお前の心配をすると思うか…?」 

出た。気まぐれツンデレ男。助けてくれた時は死ぬほど心配したと言っていたのに、今度は知らないフリか。 

「失礼いたしました。それでは、私はもう平気ですので。」

私はそう言って立ち上がり、部屋を出ようとした。 

なんだよ。あの時、私を助けてくれたレイ様の後ろ姿を見てちょっとでも「かっこいいかも」とか思った自分が馬鹿だった…。

  

「おい。まだ俺が動いていいと言ってないだろう。」

 そう言ってレイ様はひょいと私を抱きかかえた。 

「ちょっと待ってっ…。」

 軽々とお姫様だっこをされた。そしてベッドに戻される。 

「体調がよくなるまでここで休んでいろ。」

レイ様はそう言って私をそっとおろした。見上げると、レイ様と目が合ってしまい思わず照れる。 

 

 美澄玲奈は男子をお姫様抱っこできる体型だったので、こんな経験は一生しないと思っていたのだが…!恥ずかしいけれど、なんか嬉しい。 

 「なんだよ。照れてるのか?」 

レイ様はそう言ってからかってきた。 

「レイ様だって、照れているのでは…。」

「二人きりの時はレイと呼べと言っただろう?」 

レイはそう言ってそっぽを向いた。 

「シーナの仕業か?」

レイ様は続けてそう呟いた。 

なんだ、私がされたこともちゃんと気づいていたのか。

「はい。でも、私が騙されてしまったので…。」 

 こうなることは何となく想像できていたのだが、お遊びに付き合っていた私がバカだった。 

「お前ひとりすら守れないなんて、情けないな…。」 

レイ様はそう言って悲しそうな表情を浮かべた。 

 

 あの後、残りの魔物はレイが倒してくれていた。それも魔王レイがうみだした魔物だからか、私よりもずっと早く、いとも簡単そうに決着をつけていた。 

「いいえ。私はちゃんと、レイに助けてもらいましたよ。」

私はゆっくりと首を横に振ってそう言った。 

そしていたずらっぽく付け加えて笑った。 

  

 「かっこよかったよ。」

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