第21話
「なら、今晩も俺と一緒だな。」
得意げそうに笑うレイの言葉に私は思わず頷いていた。
「まあ、あんたがそこまで言うなら仕方ない。」
すぐに首を縦に降ってしまったが、『私がレイと一緒に寝たい』と思っていると勘違いされるのは困るので、私はそっぽを向いた。
「なんだ?照れてるのか?」
わざわざ顔をそらしたのにレイ様に覗き込まれた。
「…!やめてよ!」
赤く染まった自分の顔を見られてはまずいと思い、私はとっさにレイ様を「膝車」で投げ飛ばしてしまった。
レイ様の体がふわりと空中に浮いた時点で私は自分が犯した罪に気が付く。
地面に落ちる前にレイ様を受け止めようとしたが、レイ様はピタリと両足を地に着け、心配する必要が無いほど綺麗に着地した。
「申し訳ありません…!」
この10日で、いったい何回地に頭を着けて謝るのだろうか。おそるおそる顔を上げると、そこには。
姿を変えたレイ様がいた。
「…!」
表情には出さなかったが、命の危険を感じて思わず息を呑んだ。
吊り上がった目尻に、ごつごつとした黒っぽい皮膚。頭には小さな角のようなモノが生えていて、指先も歯も鋭くとがっていた。
体格がまだ子供であるためどこか幼く見えるものの、立派な魔王が私を睨んで立っていた。
それでも、なぜだかわからないが恐怖心は感じなかった。
これはどうするのが正解だろう。
抵抗する意思がないと証明するため、私は両手を上げて目を閉じた。
魔王の怒りを買ってしまったため、クビどころか息の根を止められてもおかしくないと覚悟した。しかし何事もなかったかのようにレイ様は寝室に向かって歩き始めた。
「ほら、行くぞ。」
私を見つめてドアを開いている少年は、さっきの数秒の出来事が夢だったのかと思わせるほどに普通の少年にもどっていた。
その変わりように圧倒され、私は一気に現実に引き戻された。
私は今まで、彼の何を見ていたんだろう。
私に優しくしてくれるのも、女の子扱いしてくれるのも、それはあくまで表向きのレイであって、あいつの本来の姿は…。
魔王なんだ。
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