呪いの人形りんねちゃん学校に初登校編 呪いの人形(ドール)りんねちゃんVS利賀姉妹2
「寧々子……大丈夫ですか? でも……私からも一言だけ言わせてください」
あまりにも呪いの人形(ドール)が怖すぎて、足が産まれたての子鹿みたいにプルプルになっており、あわあわぴえんと支えを求める色々と大きな妹(他意はない)の寧々子に対して、優しく支えてあげる色々と小さい姉(他意はある)の優々子は慈愛に満ちた天使の笑顔を大切な妹へと向ける。
「…………あんなのと仲良しなわけないじゃないですか♪」
そして、優々子の満面な天使の微笑みからは、とてつもない怒りと圧が込められ、優しく愛らしい声色で言い放たれた言葉には怒気と悪意がマシマシであった。
もちろん、それを聞いた妹の寧々子がぴえんを超えてパオンと涙を流し恐怖するのは当然であり。
「ごごごご、ごめんなさい!! ちょ、ちょっと、こう……な、なんとなくそう思っただけで……わ、悪気があったわけじゃ………………って!? ね、姉さんまであたしの心読まないでよッ!! 怖いからッ!!!!!」
そう実の姉に許しを請う寧々子なのであった。呪いの人形(ドール)という怪異が人の心を読むのは当然怖いのだが、人という身で読心術を会得している実の姉にはさらなる上の恐怖心が芽生える寧々子なのである。
やっぱり、姉さんは化け物だと認識した寧々子に対して、さらなる強い圧を放つ優々子から慌て急いで距離を取る寧々子だった。
「ととととと、と、とりあえず……に、兄さん……その人形(ドール)……ほ、ほんとにヤバいって!! ホラー映画とかに出てくる本物の呪いの人形(ドール)じゃないの!? そ、それッ!?」
慌て、急に義理の兄の腕に鎮座している人形(ドール)の方を指差して話題を露骨に逸らす寧々子に対して、謎に騒いでいるかしまし迷惑姉妹を放置して学校に向かおうかと真剣に悩んでいた緋影は、こっちに矛先が向いたと嫌そうな無表情になる。
「………………ほら、寧々子もこう言っていますよ緋影!! 緋影は取り憑かれているんですよ!! その呪いの人形(ドール)に!! みみみ、見てください!! 今度は私の方を見て余計なことを言うなって顔してますよ!! こここ、怖すぎますよ!!」
「………………はぁ…………いいか、二人共…………普通に考えて人形(ドール)が勝手に動くわけ無いからな」
「動いていますよ!!」「動いてるって!!」
寧々子の話題逸らしは成功し、呪いの人形(ドール)を右前腕に鎮座させている緋影へと矛先が向き、利賀姉妹にグイグイつめられる緋影は、無表情で不動な様子だが内心ではめちゃくちゃ困っていた。そのことを察したデキる呪いの人形(ドール)りんねちゃんが緋影のことをお助けするため、煩い姉妹を黙らせるべく黒いこの世のものとは思えない呪いの波動を放つのだった。
ホラー映画よろしくと利賀姉妹は全身に悪寒が走り、あまりの恐怖感に声を揃えて悲鳴を上げながらお互いギューッと抱き合う利賀姉妹に対して、いったい今日はどうしたのかと無表情で呆れている緋影と、どこか無表情のドールフェイスなのにしたり顔でドヤ顔に見える呪いの人形(ドール)りんねちゃんなのであった。
(ゆゆ姉とねねちゃん……ほ、ほんと大丈夫なのか? 今日のゆゆ姉はテンションが異常だし、ねねちゃんもなんか変だし………………あと、ねねちゃんは胸をゆゆ姉に押し付けるのは止めたほうが………………その行為は………………命に関わるぞ)
呪いの人形(ドール)の呪いの波動に怯え恐怖でゆりゆりとお互い抱きしめあっている利賀姉妹なのだが、いつの間にか恐怖の涙顔から虚無の涙顔になっていく優々子の顔は、妹の爆乳に埋もれており、寧々子はそんな実の姉を更に力強く抱きしめる。
すると、今度は苦しそうな涙顔になり、どんどん顔面が青ざめていく優々子はギブギブと力いっぱい抱きついてきている寧々子を両手で叩いている。
百合の花が咲き乱れ美しき光景から、ギャグ漫画の一コマへと数秒で変化していった利賀姉妹に対し、ねねちゃんの胸はゆゆ姉を倒せる唯一無二の胸器(凶器)なのかもしれない……やはり胸とは最胸(最強)なのかもしれないと本気で考える緋影なのであった。
「兄さんッ!! その人形(ドール)絶対やばいよッ!! 普通じゃないってッ!!」
「………………ね、ねこ……は、はなしてくだ……さ……息が……できませんから……」
「うぇっ!!!! ご、ごめん!! 姉さん!!」
自身の爆乳の中で息絶え絶えな実の姉の優々子に気がつき、慌てて解放し必死で頭を下げ謝りながら、セーラカラーからチラッと覗こせるキレイなIの字の谷間を、新鮮な空気を大量に吸い込み生を実感している実の姉の優々子に対して見せつける命知らずの寧々子なのであった。
「…………はぁ、はぁ、妹の胸で殺されるかと思いましたよ…………なんですか!? その暴力的な胸は!! もはや凶器(胸器)ですよ!! 胸器(狂気)!!!!!」
「わ、わざとじゃないから!! 許して姉さん!!!」
息を整え、冷静さを取り戻し向けた視線の先には寧々子の谷間が――――――目を見開き凝視しながら笑顔で怒り狂う狂気の優々子に対して、慌てて谷間を隠し許しを請う寧々子に天使の笑顔を向ける優々子はボソリとこう呟く。
「………………今度やったら、そのいらない胸は取ってもらいますからね」
最胸の胸を両手で隠しながら、数歩後退り、恐怖でガタガタと震える義妹に対して流石に可哀想になり、義姉ならほんとに形成外科にねねちゃんを連れて行かねないと急遽助け舟を出すことにした緋影なのである。
「さ、さすがにそれは………………ねねちゃんが可哀想だから止めてあげたほうが……」
兄さんとキラキラと希望と期待に満ちた涙目な瞳で寧々子は義兄の緋影を見つめ、これで内心助かったと安堵した寧々子だったのだが。
「なにか言いましたか? 緋影?」
「………………な、何も」
寧々子悲報、援軍の義兄最弱役立たずなのであった。優々子の瞳孔が開いた瞳に見つめられながら笑顔でそう言われ、姉から顔を逸らす義兄の緋影のことをハイライトオフの絶望の眼差しで見つめる寧々子なのだ。
「……そんなことよりもですね………………いいですか緋影、寧々子もこう言っているんですよ。その呪いの人形(ドール)はやはり危険なんですよ!(いろいろな意味で)」
緋影が自分の圧に屈してる今こそ好機だと優々子は、話を変え再度緋影の説得に試みるようで、それに対してコクコクと激しく同意する寧々子は必死で話に乗っかるようであった。
「………………二人が人形(ドール)があまり好きじゃないのはわかったけど…………あのな、とりあえず、ドールショップの店員さんから教えてもらったんだが……人形(ドール)というのは自分の娘らしい……つまり、この子は俺の娘ということになるんだ」
利賀姉妹の義理の弟でもあり、義理の兄でもある緋影は無表情なドヤ顔で抑揚のない声でそう言いきってみせ、とにかく、りんねちゃんのことは誤魔化す気満々なのであった。
そんな緋影の言葉を聞き、今まで大人しくしていた呪いの人形(ドール)りんねちゃんはものすごく不服そうな無表情ドールフェイスだ。いつの間にか緋影の方を見上げており、視線で娘じゃない嫁と無表情ヤンデレドールフェイスで訴えているりんねちゃんなのだが、超絶鈍感な緋影に通じる理由がなかった。
もちろん、呪いのオーラが強くなっていつの間にか緋影の顔を見上げている呪いの人形(ドール)に気がつかない利賀姉妹ではなかった。
「に、兄さんのことを恐ろしい形相でいつの間にか見てるーッ!?」
「ぜ、絶対にいつの間にか勝手に動いていますよ!! しかも、この呪いの人形(ドール)なんか生意気なこと言ってますよ!!!」
ヤンデレ呪いの人形(ドール)に対して怖がる妹の寧々子となぜか無表情ドールフェイスから呪いの人形(ドール)の言ってることがわかる姉の優々子は怒っていた。
(この呪いの人形(ドール)生意気に人形(ドール)のくせに自分のこと緋影の嫁だと思ってるの!? 緋影のお嫁さんは私なの!! 呪いの人形(ドール)如きが緋影のお嫁さんを名乗るなんて1兆年早いのよ!!)
緋影の嫁と視線で訴えている呪いの人形(ドール)に心のなかで怒りを示す優々子だが、口に出す勇気はないらしい。
そんな利賀姉妹の言動に対して、緋影は腕に鎮座させている可愛くて愛らしい自慢の人形(ドール)のりんねちゃんのことを呪いの人形(ドール)扱いされて、ちょっと悲しくなり、りんねちゃんの方を見るとバッチリと視線が合う。
(やっぱ、りんねちゃんは最高に可愛いな……まったく、こんな可愛い人形(ドール)のどこが怖いのか……理解できないんだが……りんねちゃんはオレの大事な娘……どうにか二人にもそれを理解させられないだろうか)
そんなことを考えながら、緋影はりんねちゃんの頭を掴みクイッと正面に向かせると、自分は利賀姉妹の方に視線を向ける。すると、また、いつの間にか緋影の方をヤンデレ無表情ドールフェイスで見上げて視線で娘じゃない嫁と訴えているヤンデレ人形(ドール)りんねちゃんなのであった。
「いいか二人共……つまりはな……りんねちゃんがオレの娘ってことはだ…………りんねちゃんにとって二人はおばさ………………いや、なんでもない」
それ以上は言わせないと殺気のこもった利賀姉妹の視線が、オレなんか言おうとしちゃいましたか?と失言に気がついた無表情な緋影に突き刺さり、逃れるように顔を背ける緋影なのだ。流石にノンデリな緋影でも、現役JKとJCをおばさんと言おうとしたのはまずかったと理解出来たのである。
そして、呪いの人形(ドール)りんねちゃんの無表情のドールフェイスが訴えている。こんなおばさん達はいらないと――――――しかし、少し考えるりんねちゃんは自分が緋影の嫁だとすると――――――この二人は、義理の姉妹に!?
ハッとそのことに気がついたりんねちゃんはいつの間にか利賀姉妹をガン見していた。利賀姉妹と視線が合うと恐怖でギョッとなっている凸凹姉妹に対してりんねちゃんの無表情ドールフェイスがこんな姉妹はいらないと訴えていた。
「こ、こいつ!! 私だってあんたみたいな呪いの人形(ドール)と姉妹になる気も無ければ…………お、お、お……お……お…………」
そんな呪いの人形(ドール)に対して、めちゃくちゃ怒り動揺し、拒否するも、おばさんという単語が絶対無敵最強美少女であるというプライドから口に出せない優々子は怒りと恐怖で震えながら、キッと決意に満ちた眼差しを緋影に向ける。
「と、とにかくですね……そ、そのドールは危険です!! 緋影今すぐお寺に行きましょ………………」
勇気を出し緋影の左手を掴もうと詰め寄ってきた優々子に対して、恐怖の呪いの圧を放つ呪いの人形(ドール)りんねちゃんは、この泥棒猫がお前こそ緋影のお嫁さんになろうなんて那由多年は早いと無表情ドールフェイスで訴えており、それを受けて脱兎のごとく逃げ出し妹の背後に隠れて子兎みたいになる優々子は顔だけチラッと出し緋影に恐怖の涙顔を向ける。
「ひ、緋影、そ、その人形(ドール)…………わ、私のこと呪殺する気ですよーーーーーー!!! 呪い殺す気ですよーーーーーー!!!!!」
寧々子は自身の背後に隠れ恐怖で震えながら叫び緋影に訴える姉の優々子に対してボソリと呟く。
「……呪いの人形(ドール)の呪い攻撃…………姉さんには効果が抜群……みたい」
いつもは美少女フェイスを崩さない実の姉の優々子が恐怖で作画崩壊し、自分の背後で恐怖で震え泣き叫ぶという本来は絶対ありえないことが起こり調子に乗ったのか寧々子はさらにボソリと呟く。
「…………でも………………あくタイプってゴーストに強かった気が…………」
(ねねちゃんはいったい何を言っているのだろう? あくタイプ? ゴースト?)
人形 緋影(ヒトカタ ヒカゲ)という人物はネットに疎いのはもちろん、サブカルにも全く詳しくなかった。令和の高校生には珍しく彼はゲームもしなければ、漫画やアニメも基本的には見ないのである。
そんな義理の弟とは違いそれなりにサブカルにも詳しく、ゲームもそれなりに嗜む優々子には、寧々子が何を言っているのかすぐに理解できたようで、天使の笑顔を浮かべ寧々子の腕にしがみついていた両手に力が込められる。
「寧々子……それはどういう意味ですか?」
(あ、ヤッバッ……調子に乗りすぎた…………って、痛い、痛い!! 姉さん小さいくせにどんだけ握力強いのよ!?)
ギチギチと、小さいお手々で考えられないほどの握力で自分の右腕を両手で握りしめてくる姉の優々子に対して、ヤバいヤバいといった表情になる寧々子は必死に誤魔化そうとする。
「えっと………………と、とりあえずさ…………兄さんからあの呪いの人形(ドール)を引き離したほうがいいじゃないかな」
「………………そう…………ですね…………」
「………………な、なにかな姉さん?」
「では………………………………寧々子行きなさい!!」
「うっぇ!?………………………………はい」
姉が人差し指をビシッと呪いの人形(ドール)りんねちゃんの方を指して行けと言うなら、妹とは嫌でも姉の命令を断ることなど出来ないのである。覚悟を決め寧々子の両手が構えにゃんこポーズになり、緋影の腕に鎮座する呪いの人形(ドール)にじりじりとにじり寄る。
もちろん、彼の腕に鎮座していた呪いの人形(ドール)から寄るな乳牛女と呪いの圧を放たれ、顔面蒼白、畏怖嫌厭となり、くるりと半回転、素早く撤退を決めた寧々子は優々子のもとに戻る。
「寧々子………………どうして帰ってくるのですか?」
「姉さん………………あれは無理だよ………………兄さんのことは…………うん…………潔く諦めよう」
「寧々子!? あ、諦めてはいけませんよ!! 義理とはいえ、あなたの兄ですよ!! 家族を見捨ててはいけません!! それに寧々子、あなた……ホラーが好きではないですか!! 本物の呪いの人形(ドール)がいるのですよ!! ホラー好きとしてなんとかしてください!!」
「ムリムリ無理無理!!! 怖い、怖い、怖いから!! あれは本当にヤバい奴だから!! ホラーはあくまで第三者として楽しむのが好きなわけで、ホラー作品の登場人物になりたいわけじゃないの!! 私はまだ白目向いて呪い死にしたくないから!!」
「緋影を助けないといけないのです!! 寧々子!! あなただけが頼りなんですよ!!」
悟りを開いた顔で空を見上げ、見捨てる決断を下した寧々子の両腕を掴みガクガクと揺らしながら必死に説得する優々子と恐怖から絶対に呪いの人形(ドール)にこれ以上関わりたくない寧々子なのである。
そんな、目の前で騒ぎ失礼な利賀姉妹に対して、緋影はほんとに二人をこのまま放置してこそこそと学校に向かおうかと真剣に考え実行しようかと思い悩んでおり、彼の腕に鎮座しているりんねちゃんはというと無表情ドールフェイスがどこかケタケタと愉悦笑いをして楽しそうにも見えなくもなかった。
「………………それに兄さんなら大丈夫だよ………………うん」
「………………」
「…………今、姉さんも兄さんなら問題ないのではって内心思ったでしょ?」
「………………お、思っていませんよ!!」
「じゃあ、姉さんが行けばいいじゃんか………………あ、ごめんなさい。調子に乗りました!!」
人形 緋影(ヒトカタ ヒカゲ)という人物は優々子からしても、異質であり、怪異という異常事態だろうと――――――なんなら、戦場だろうとなんとなく無事に生還しそうなイメージを利賀姉妹は持っていた。そのため、緋影なら呪いでどうこうなりそうにはないかもと内心で思ってしまった優々子だが、それでは、この呪いの人形(ドール)を緋影から引き離すことが出来ないのである。
それは、優々子的にはなしであり、なんとかオカルト好きの寧々子にどうにかしてほしい他力本願な姉の優々子なのだが、頼りの寧々子はもう義兄を見捨てる気満々であった。
(こ、この姉妹………………し、失礼すぎるだろ…………りんねちゃんを何だと思っているんだ? こんなに可愛いのに呪ったりするわけ無いだろう)
好き放題言われ、それを聞いていた緋影は無表情だが、内心ではちょっと不満であり怒ってもおり、ちょこんと右前腕に鎮座しているりんねちゃんの方を見ていた。
「はぁ~、まぁ、ゆゆ姉はホラー苦手だからな……しょうがないけどさ……ねねちゃんまで怖がることないだろ?」
「いや、兄さん……ほんと、その人形(ドール)絶対にヤバいって!! ホラー苦手な姉さんはともかく、あたしが言うから間違いないって!!」
呆れ果てる緋影に対して、とりあえず、姉さんが怖いから説得を試みてあげる優しき妹の鏡である寧々子の会話に不満があるのか優々子が不服ですって顔で会話に割って入る。
「ふ、二人とも……いいですか? な、何か勘違いしていませんか? 私は別に……ほ、ホラーが苦手なんてことはありませんから………………わ、私に苦手なことなんてないんですからね!」
(いや、ゆゆ姉がホラー苦手なのはみんな知ってるから……)
(いや、姉さんがホラー苦手なのみんな知ってるよ……)
完全無敵の美少女生徒会長の利賀 優々子唯一の弱点がホラーということは、公然の秘密となっており、学校の人でも生徒会長はホラーが苦手ということを知っている者は多いのである。ホラーの話題が始まればいつもの天使の笑顔が若干崩れ、顔面蒼白、冷や汗ダラダラの怖さ誤魔化しの笑顔を浮かべてれば、それはバレるというものである。
(まぁ、あんなこともあれば…………流石のゆゆ姉でもホラー苦手にはなるよな………………しかし、こんな可愛いりんねちゃんを呪いの人形(ドール)なんて……まぁ、人形(ドール)って苦手な人は苦手なんだろうな……ねねちゃんまで苦手なのは意外だったけど……)
緋影がそんなことをぼやっと考えていると、目が泳ぎまくって必死にホラーが怖くないと宣っていた優々子の視線がキッと余裕綽々と緋影の右前腕に鎮座しこちらを見ていた呪いの人形(ドール)に向く。
どうやら、ホラー苦手ということにされるのはプライドが許さないようで(実際苦手なのだが)それは違うと証明するために、憎き呪いの人形(ドール)りんねちゃんを自らの手で捕まえる覚悟を決めた優々子なのである。
「し、仕方ないですね…………ね、寧々子でも無理なら……や、やっぱり、ホラーが苦手ではないこの私が実力行使でやるしかありません!! この泥棒呪いの人形(ドール)覚悟しなさ………………ッッッ!!!!!」
そう言って、緋影腕に鎮座している呪いの人形(ドール)に襲いかかる優々子なのだが、すぐさま、どこからともなく野球ボール(軟式)がものすごい速度で優々子の眼の前を通り過ぎ、それに驚きびっくりして転倒、尻もちをついてしまう優々子なのである。
「ひ、緋影!! い、今!! や、野球ボールがわ、私の目の前を!! そ、その呪いの人形(ドール)の仕業ですよ!! 緋影!! その呪いの人形(ドール)を早く手放しなさい!!」
「ゆ、ゆゆ姉……とりあえず、落ち着いて……というか、早く立ち上がったほうが良いと思う」
華麗なる尻もちM字開脚を披露し新品セクシーな真っ黒のおパンツ丸出しで慌てふためきながら呪いの人形(ドール)を指差し喚く優々子から視線を反らし無表情な顔面を右手で覆う緋影は、気まずそうに遠回しに注意し、妹の寧々子は珍しい姉の失態に対して内心で少し楽しそうに眺めていたのだが、後が怖いので教えてあげることにした。
「……………………ほ、ほら、姉さん…………スカート、スカート」
パンツーマルミエだよと妹の寧々子が姉の優々子に言葉と視線で伝えると、あわあわとパニクっていた優々子の視線がゆっくり下に、数秒後、顔を真赤にし、恥ずかしさから頭沸騰、プシューとなり、スカートを両手で抑えて真っ黒勝負パンツを隠す。
「くぁwせdrftgyふじこlp」
とても表現できない悲鳴をあげる優々子に対して、ついにバグったのかとドン引きな緋影と、ちょっと可笑しくなる寧々子なのである。そんな二人に気がつき慌てて立ち上がるとキッと呪いの人形(ドール)を睨む優々子に対して、呪いの人形(ドール)りんねちゃんが呪いの圧を放つ。
そして、突然優々子が走り出し、この場から逃走するのであった。
(ああああぁぁぁぁ、あ、あの呪いの人形(ドール)絶対に許さない!! 許さない!! 許さない!! わ、私をこんな目に合わせて…………絶対に私の緋影から引き離して焼却処分にしてやる!!)
恥ずかしさと恐怖から物凄い速度でこの場から走って逃げ出した優々子は、心のなかでそう固く決意し、学校まで恐怖の涙目で猛ダッシュするのであった。
(あの姉さんがいとも簡単に……も、もしかして、これって人生一発逆転大チャンスなのでは!? 今までは姉さんが怖くて兄さんのことは半ば諦めていたけど………………)
寧々子は姉の優々子が走り去っていくのを眺めながらぼんやりとそんなことを考えていた。
そんな、義妹爆乳ギャル寧々子からメスオーラを感じ取った呪いの人形(ドール)りんねちゃんは寧々子のことをガン見していた。ものすごい形相(無表情)でこちらをガン見している人形(ドール)に気がついた寧々子は、ビックっと身体を恐怖で震わせると慌てて距離を取る。
「じゃ、じゃあ、兄さん!! あたしも行くから!! じゃあね!! あ、また会おうね!!!! 兄さん!!」
「あ、ああ」
慌て、手を振って義兄の緋影に愛らしく別れを告げ、駆け出していく寧々子に対して、終始、本日の利賀姉妹の奇行に戸惑う無表情の緋影なのである。
(……あ、危なッ……あの呪いの人形(ドール)ものすごく怒ってたような…………でも、兄さんあんな危険な呪いの人形(ドール)どこで手に入れたんだろ? 後でちょっと調べてみよっかな)
そんなことを考えながら、寧々子は慌て駆け足で自分の通う中学校に向かって行く、そんな義妹の後ろ姿を見送った緋影の表情はあいも変わらず無表情であるが、どこか疲れたようにも見えた。
(………………なんとかやり過ごせたか………………しかし、なんでゆゆ姉もねねちゃんも朝からオレのこと待っていたんだ? もしかしてオレのことを心配して……いや、いや……ないな……二人から………………オレは……嫌われてるしな)
そんな、哀愁漂わせる緋影の無表情な顔を盗み見ていた呪いの人形(ドール)りんねちゃんの無表情なドールフェイスは憐憫な気持ちを示していたのであった。
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