呪いの人形りんねちゃん学校に初登校編 りんねちゃんVS利賀優々子 因縁の始まり

 あまりの呪いの人形(ドール)の怖さに対して、おめめグルグルのおつむピヨピヨといった錯乱状態、恐怖で作画崩壊なギャグ顔になってしまい奇奇怪怪な動きをしていた優々子はハッと正気に戻ったようで、正面を向いて気まずそうな無表情を浮かべている緋影の方に優々子の顔がゆっくりと向く。


「………………!!!!!!!!! ひ、緋影!? そ、その人形(ドール)は……い、いったいなんなんですか?」


 小柄の優々子が長身な緋影の方を向けば、右前腕に鎮座している呪いの人形(ドール)とバッチリと視線が合うのは必然であった。ジッと優々子を見下ろして愉悦感に浸っている無表情ドールフェイスな呪いの人形(ドール)りんねちゃんのこの世のモノとは思えない存在感に圧倒され、恐怖で再び涙目になる優々子はガクガクと震えだし再度作画崩壊恐怖のギャグ顔になって呪いの人形(ドール)を指差し叫ぶのである。


 そんな、優々子の真っ当な質問に対して、クールで無表情な緋影なのだが、内心では自分のミスで見つかってしまった(緋影が思っているだけ)りんねちゃんの存在をどうやって誤魔化そうかと頭フル回転で必死に考えているようだ。


「………………えっと………………お持ち帰り…………じゃない、お出迎えしたんだ」

「…………今!? なにか不穏な言葉を発しなかったですか!? お持ち帰りって!? そ、それと…………そ、その人形(ドール)ッ!! ううううう、動いてないですか!?」

「何言ってるんだ? ゆゆ姉……人形(ドール)が勝手に動くわけ無いだろ?」

「ぜ、絶対に動いていましたよ!! 緋影だって見たじゃないですか!! その人形(ドール)がいつの間にか緋影の肩から顔を出していたの!!」

「…………まぁ、持ち方が悪かったせいだろ(それでゆゆ姉にバレてしまった訳で)……ゆゆ姉……さっきから変だし……疲れて体調が悪いんじゃないか? 今日、学校は休んだほうがよくないか?」


 狼狽しながらも必死に呪いの人形(ドール)のヤバさを涙目あわあわ恐怖顔で訴えている優々子に対して、抑揚のない声で無表情にバッサリと否定する緋影は、今までに見たこともないくらい慌てふためく完璧超人の義理の姉の優々子の醜態に対して本気で心配した様子でもあり、言い訳が何も思いつかなかったためこれ幸いとばかりこのまま誤魔化し話を逸らそうともしていた。


「………………で、では……緋影の家で一緒に」


 まだ、緋影とのラブロマンスを諦めていなかったのか、今まで恐怖で涙目を浮かべてホラーギャグ顔を披露して喚いていた優々子が、緋影の発言にハッとなり、これはチャンスとばかりにラブコメヒロインの気合が入った作画顔に戻すと、魅惑で天使な美少女フェイスと甘い媚びた萌声で緋影を誘惑しようとする。


 もちろん、そんな優々子に対して、呪いの人形(ドール)りんねちゃんのハイライトオフのジト目(ただのドールアイ)が突き刺さっているが、今の頭がメリークリスマスモード(通称頭メリクリ)な恋する乙女モードの優々子は気がついていない様子であった。


「…………流石にオレは学校に行かないといけないから……」


 義理の姉の魅惑の美少女誘惑アタックに対し、緋影は内心ドキッとした。なぜなら、一人暮らしがしたい(緋影が勝手にそう思っているだけ)義理の姉の優々子を家に招くと事実上占拠されてしまうと抑揚のない声で誤魔化し、華麗に危険を回避する緋影なのだ。


 なんとしても緋影の家に上がり込んで男女の関係になりたい優々子VS家を占拠され追い出されたくない緋影という二人の間に数秒の沈黙が――――――そんな二人の沈黙を打ち破るのは、闇のオーラを放っている呪いの人形(ドール)なのである。


 手っ取り早く既成事実を作って緋影の彼女になりたい頭がハッピーバレタインでラブストーリーモードだった優々子は、不意に緋影の胸にしがみつきものすごい形相(無表情)で呪いの圧を放っている呪いの人形(ドール)が目に映ると数秒後、じわじわと再び頭がホラーモードになる。


「ぴにゃぁぁぁぁ!!!! ひ、緋影!? や、やっぱり……そ、その人形(ドール)い、いつの間にか……う、動いてますよ!!」

「ゆゆ姉……人形(ドール)はいつの間にか動かないから……気のせいだって……」

「き、気のせいじゃないですよ!! だ、だって、さっきと姿勢が違いますよ!? こ、こいつ!! いつの間にか緋影にしがみついていますよ!!」


 いつの間にか緋影の胸に両手でしがみつき抱きついて、お前に緋影は渡さないという正妻アピールをしている呪いの人形(ドール)を指差し必死で呪いの人形(ドール)が勝手に動いていると喚く優々子に無表情な呆れ顔な緋影なのである。


(怖い、怖い、怖い!! な、なんなの!? ひ、緋影それ絶対ヤバいヤツ!! しかも、なんか生意気に緋影にしがみついてるし!! こ、こいつまさか……泥棒人形(ドール)!! 許さない!! 私から緋影を奪おうなんて!! たとえ不気味で怖い人形(ドール)でも許さないから!!)


 優々子は、なんとか愛の力で恐怖を乗り越えようと、プルプルと生まれたての子鹿のようになっていた両足に力をいれ、呪いの人形(ドール)りんねちゃんに立ち向かうことを決意する。


「ひ、緋影……と、とりあえず………………人形(ドール)を学校に持って行ってはいけませんよ」

(というより、その不気味な人形(ドール)早く捨てて!! しかも、まだ、私の緋影に抱きついてしがみついてる!! 羨ましい!! 許せない!! 人形(ドール)でも許さない!! 絶対に焼却炉送りにしてあげる!!)


 まだ、ぷるぷると恐怖で震えているものの生徒会長モードになった義理の姉の優々子に正論を言われ、やっぱりツッコまれたと内心で焦る無表情な緋影なのである。沈黙を保つ緋影が内心で困っていることをハッと察した出来る呪いの人形(ドール)りんねちゃんは生徒会長モードの優々子に対していつの間にか向き直り更に強い呪いの圧を放つ。


 生徒会長モードの利賀 優々子(トガ ユユコ)には効果抜群だ。今にも恐怖で白目をむいて泡を吹き倒れそうなところをぐっと必死でこらえ、美少女フェイスをかろうじて保つ優々子、愛する緋影の前で美少女フェイスを崩すわけにはいかないと愛のチカラで恐怖に立ち向かう。


 まぁ、散々恐怖でおめめぐるぐる、おくちあわあわのギャグ顔で喚き散らし、やらかした後なのだが――――――。


「…………………………そ、その人形(ドール)い、いつの間にか座り直して今にも呪い殺しそうな瞳でこちらを睨んでいます!? ぜ、絶対に動いてますよ!! 緋影!!」

「………………ゆゆ姉、人形(ドール)は動かないって……絶対」

「緋影!! 絶対に動いてますよ!! し、しかも……こ、この人形(ドール)……今度はまた、緋影にくっついて……は、早く!! は、は、離れなさい!!」


 緋影は、なんか怯えている優々子に対して、ゆゆ姉はホラー苦手だからなと、渾身の出来の自慢の人形(ドール)に対し、あれこれ言われ内心ちょっと傷ついたが、これ以上りんねちゃんを学校に連れて行っていることに対して追求されることはなさそうと安堵する。


 そんな無表情な緋影の胸に両手でしがみついて抱きつき、優々子に愉悦なドールフェイスを向けている呪いの人形(ドール)りんねちゃんに恐怖で震えながらも苛立つ優々子なのである。


(な、なんなの!? あの不気味な人形(ドール)!! しかも、緋影にあんなにくっついて……私に対して当てつけみたいに!! 絶対に許せない!! ど、どうにかして、あの人形(ドール)を緋影から引き離して焼却炉送りにしないと……)


 そう思いチラリと呪いの人形(ドール)の方を見ると、優々子の内心を知ってか知らずか、焼却炉送りにできるものならやってみろと言わんばかりの余裕しゃくしゃくで挑発的な無表情ドールフェイスを向けている呪いの人形(ドール)りんねちゃんにぐぬぬとなる優々子なのである。


 そして、呪いの人形(ドール)りんねちゃんが、ぐぬぬとなって睨んでくる優々子に対し、ちょっとした威嚇程度の呪いの波動を放つと、瞬時に優々子の足は生まれたての子鹿のようになり涙目になって必死に恐怖に耐えるのであった。


「…………ひ、緋影、あ、あなた、やっぱり呪われてますよ、と、取り憑かれてますよ!! そ、その人形(ドール)に!!!!」


 しかし、もはや恐怖に耐えるのも限界とばかりに優々子は恐怖でパニックになり彼女の顔面作画は完全に崩壊しており、あわあわ恐怖顔で必死に呪いの人形(ドール)を指差し、緋影に訴えるも彼は無表情で呆れているのである。


「こ、こうなったら、ち、力ずくで、緋影その人形(ドール)を渡しなさい!!!!」


 生まれたての子鹿みたいになている自慢の美脚に力を込め、窮鼠猫を噛むと言わんばかりに両手を突き出し緋影に飛びかかる決死の優々子に対して、呪いの人形(ドール)りんねちゃんの怒りの呪い攻撃が炸裂する。


 真っ黒い呪いの波動に包まれれ、不意に恐怖で優々子の意識が途切れバタリと地面に倒れ込みそうになるも、刹那の間に緋影が優々子を左手で抱き支えて転倒を阻止する。


「ゆゆ姉!! だ、大丈夫か!?」

「………………ひ、緋影!? わ、私、緋影に…………」


 あまりの恐怖で意識が一瞬途切れた優々子がハッと覚醒すると、目の前に最愛の緋影の心配そうなイケメンフェイス(無表情)が目に映り、彼の腕に抱き寄せられていることに気がついた優々子の顔面は、一瞬で赤面乙女顔になった。


 そんな幸せ絶頂という優々子が目をつむり、幸せを噛み締め、再び瞼を開くと眼前に怒りの無表情ドールフェイスが近距離で映る。呪いの人形(ドール)りんねちゃんはブチギレでどす黒い呪いを優々子に向けており、一瞬で再び気を失う優々子なのである。


「ゆゆ姉!!! ちょ、ゆゆ姉!? きゅ、救急車か!?」


 突如として、再び気を失った義理の姉の優々子に対して、さすがの緋影も少し目を見開いており、かすかだが同様が顔に現れていた。声にも強さが込められており、本気で心配している様子の緋影に対して、ちょっと、本気を出しすぎたとシュンとしている無表情の呪いの人形(ドール)りんねちゃんなのである。


 しかし、人種の中でも上澄みである利賀 優々子という人物が、緋影とのラブロマンスを終えずに呪いでどうにかなるなど絶対にないのである。


「………………ハッ!! 川の向こう側でくそおや…………敬愛するお父様が手を振っていましたよ」

「………………ゆゆ姉…………孔明さんはまだ生きてるだろ」

「……そうでした………………まだ、生かしていたのでした……まだ……」

(………………ゆゆ姉……一人暮らしをさせてくれない孔明さんに対して、そこまで恨んでいるのか……そ、そんなに一人暮らしがしたかったのか!? お、オレもめちゃくちゃ恨まれているのでは!?)


 急に目覚めて不穏な発言をしながら頭を抑えふらふらと立ち上がる義理の姉の優々子に、内心で恐れを抱くと同時にホッと一安心な緋影と、そんな、彼の腕に鎮座し、ちょっと動揺した様子(無表情で不動)の呪いの人形(ドール)りんねちゃんは、フラフラと覚醒し始める優々子を見ながら、こいつゾンビかといった表情(無表情)をしていた。


 本来なら、数日はうなされ冥府を彷徨うほどの力だったはずなのにと驚嘆している呪いの人形(ドール)りんねちゃんだった。


 そして、完全に覚醒した優々子はキッと緋影の右前腕に鎮座している呪いの人形(ドール)りんねちゃんを睨みつけ、ビシッと右人差し指を突きつける。


「緋影…………その人形(ドール)は危険です!! 危険すぎます!! 緋影!! 早くポイしなさい!! ポイ!!」

「………………りんねちゃんは…………危険なんかじゃないし」

「き、危険ですよ!! 絶対に!! 見てください!! あの邪悪そうな顔を!! 今にも人を殺しそうな顔ですよ!! 現に私は死にかけましたよ!! 緋影!!」

「………………りんねちゃんは…………可愛い」

「全く、微塵も可愛くありません!! そもそも可愛いのが好きなら私がいるじゃありませんか!! 私じゃダメなんですか!!!!」


 グイグイくる義理の姉の優々子に戸惑い、後ずさる緋影は愛の告白ともとれる優々子の爆弾発言に対して、少し考え込むと、困惑の無表情を浮かべ自分の頬を右人差し指でかく。


「………………ゆゆ姉人形(ドール)……さ、流石に人気者で学校でも可愛いと称されるゆゆ姉とはいえ……義理の姉をモデルにした人形(ドール)を作るのはちょっと……」


 義理の姉優々子の人形(ドール)作り、可愛い可愛いと惚気ける自分を想像し、自分でドン引きする緋影に対して、驚愕の表情を浮かべる優々子なのである。


「そ、そういうことではなく私が緋影の…………」


 優々子は、自分が緋影のモノになってあげますとストレートな発言をしようとした瞬間、呪いの人形(ドール)りんねちゃんから待ったとばかりに呪いの殺気がほとばしる。優々子は恐怖と同時に呪いの人形(ドール)の表情から緋影は私のモノ誰にも渡さないという意思を感じ取るのだった。


(……こ、この人形(ドール)や、やっぱり私の恋路の邪魔をしてる!?)


 全てを悟ったと、恐怖で後ずさり、プルプルと震える手で再び呪いの人形(ドール)りんねちゃんを指差す優々子は名探偵モードになっていた。


「わ、わかりましたよ!! そ、その人形(ドール)は呪いの人形(ドール)ですよ!! 緋影!! すぐにお寺に持っていきましょう!! その呪いの人形(ドール)絶対、真夜中に勝手に動いて緋影の事殺そうとかしますよ!!」

「…………はぁ、人形(ドール)がそんな事するわけ無いだろ…………なぁ、りんねちゃん」


 緋影がそう言いながら右前腕に鎮座するりんねちゃんを見ると、いつの間にか顔だけ明後日の方を向いており気まずそう(無表情)にそっぽを向いていた。勿論、今は殺そうとは思っていないが、数日前までは緋影のことを殺そうと必死になっていたことを思い出し、呪いの人形(ドール)りんねちゃんは緋影の信頼の眼差しを直視できないのであった。


「や、やっぱり、そいつ明後日の方見てますよ!! 殺そうとしてるんですよ!! 緋影、今からその呪いの人形(ドール)お寺に持っていきますよ!!」

「……ゆゆ姉……普通に考えてりんねちゃんが呪いの人形(ドール)な訳ないだろ…………なぁ、りんねちゃん」


 優々子の発言に呆れながら、緋影は再度りんねちゃんの方を確認するように見ると、いつの間にか、緋影の顔を見上げて彼の顔をガン見てしているりんねちゃんは、え? 私呪いの人形(ドール)じゃないのと驚愕(無表情)しているようであった。


「見てください!! その呪いの人形(ドール)も、緋影のことを見て私呪いの人形(ドール)じゃないのと驚いてますよ!! というか、やっぱりその呪いの人形(ドール)いつの間にか動いてますよ!! 緋影!!」

「いや、そんな訳ないだろ…………人形(ドール)は勝手には動かないって……あのな、ゆゆ姉……呪いとか幽霊とか……そういうオカルトはこの世には存在しないから」

「緋影!! 存在してますよ!! 今、目の前にオカルトそのものが存在していますよ!!! そいつは呪いの人形(ドール)なんですよ!!!! 緋影!!!!!」

「いやいや、ないない……ここ数日も特に変わったことは起きてないしな」

「起こってますよ!! 今、緋影の目の前で心霊現象が起こってますよ!! 現実を見てください!! 緋影!!!!! その、呪いの人形(ドール)も心霊現象起こしまくってますけど? って顔してますよ!! 緋影!!!!!」


 その後も、優々子は緋影に対して、りんねちゃんが呪いの人形(ドール)だと必死に訴えるも、緋影は全く信じてない様子で、自慢の可愛い人形(ドール)が呪いの人形(ドール)な訳が無いといった様子であり、当の呪いの人形(ドール)であるりんねちゃんですら驚いた(無表情)様子だが、だんだんと必死な優々子に対して余裕の正妻モードになり、これ以上の口論は面倒だと、呪いの圧を放って恐怖で優々子を黙らせる呪いの人形(ドール)りんねちゃんなのである。


(怖い、怖い、怖い、怖いって!! こ、こいつ……け、牽制してる!! 呪いの力で生意気にも牽制してる!! ゆ、許せない!!! で、でも、ど、どうすれば……)


 恐怖で後ずさり、再びぐぬぬとなって震えている優々子は、いつの間にか緋影の胸に顔をピタリとくっつけ余裕の勝利といった無表情で優々子を見下している呪いの人形(ドール)りんねちゃんの姿が目に映る。


 ぐぬぬとなんかよくわからないけど、悔しそうな表情を浮かべている義理の姉の優々子見て、とりあえず、ゆゆ姉に家を占拠されずに済みそうだと、一安心な様子の無表情な緋影なのである。


「……ゆ、ゆゆ姉……と、とりあえず……が、学校に行かないか?」


 そう提案し、このままでは埒が明かないと学校に向かって歩き出した緋影から、遅れ、数メートル後を悔しさと恐怖が現れた複雑そうな表情を浮かべながら、とぼとぼとついて行く優々子は人生で初めての大きな敗北感を味合わされていた。


 そして、この二人? の出会いこそ、長きに渡る緋影の正妻戦争の始まりであり、最強の呪いの人形(ドール)りんねちゃんと絶対無敵美少女の利賀 優々子の因縁の始まりなのであった。

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