彼が学校に来なかった理由
緋影は、呪いの館にあった人形(ドール)を自宅にお持ち帰りしてしまったのである。彼はオートロック付き1ルームマンションの4階の角部屋に住んでおり、訳あって彼は高校一年にして一人暮らしなのであった。
緋影がここにたどり着く間、それはもう恐ろしく大変で、すれ違う人々は恐怖で表情を歪ませ、逃げ出す者、体調が悪くなりうずくまる者、恐怖で足がすくみ動けなくなる者など、様々なトラブルを引き起こし緋影自身にも些細なトラブル(緋影にとって)が起こったものの無事?にここまでたどり着いたのであった。
人形(ドール)は緋影を睨んでおり(無表情)殺意を抱いている。もはや許すまじ状態の人形(ドール)はテーブルの上に優しく上向きに置かれたあとも、いつの間にかテーブルの端に座って、ずっとこうして緋影を睨み続ける。そう、どこに緋影が移動しようといつの間にか人形(ドール)は緋影の方を向いて無表情で睨んでいる。普通の人なら(まぁ、普通の人はこんな人形(ドール)持って帰らないが)この人形(ドール)――――――動いてる?となるところ、なんの疑問も持たないのが人形 緋影(ヒトカタ ヒカゲ)という人物なのである。
しばらく床に腰をおろしてスマホで何かを調べていた緋影だったのだが、何かを決意したのか急に立ち上がりジーッと変わらない無表情で睨んできている人形(ドール)の方を見る。
「ちょっと出かけてくるからな……おとなしく留守番してるんだぞ」
そう人形(ドール)に優しい?抑揚のない声で告げて、どこかに出かける緋影なのであった。一人取り残された、人形(ドール)は、とりあえず、暇なのでテレビをつけたのである。もちろんテレビはいつの間にかついて、チャンネルもいつの間にかコロコロ変わる。
まさしく心霊現象だ。
気に入った番組を見つけたのか、人形(ドール)はいつの間にかテレビの前に陣取り、ジーッとテレビを凝視するのであった。それから数時間後、玄関の扉が開き緋影が帰宅する。もう日も暮れて、室内は真っ暗で、いつの間にかテレビがついており、じーっとテレビを見ている人形(ドール)が目に入る緋影なのであった。
「……テレビつけっぱなしだったか……電気代もったいないことしたな」
あからさまな異変もとい心霊現象が起こっているのに、全く気にした様子のない緋影は、両手に持っていた買い物袋を床に置いて電気をつける。そして、おもむろに、テレビのリモコンを持って、テレビを消すのである。
突然見ていたテレビを消され、人形(ドール)は緋影の方をいつの間にか見ており、怒りの表情(無表情)で睨むのである。そして、緋影が買ってきたものを整理しようとテレビから視線を逸らすと、突如としてテレビがプツンとつくのであった。
流石の緋影も疑問に感じるかと思ったが、買ってきたものを取り出し、確認するのに夢中で全く気がつく様子がない。
緋影が買ってきたのは人形(ドール)に関する様々な本で、それらの本を机にどんどんと置いていくのである。
「ん? また、テレビがついてるな……さっき消したつもりだったが……」
本を出し終えると緋影はテレビがついていることに気がつく、つい先程までは緋影の方を見ていた人形(ドール)がテレビを見ていた。少し疑問に感じている様子の緋影だが、すぐにリモコンを手に取り、電源ボタンをポチッとテレビを再度消すのであった。
そして、リモコンを再度テーブルに置き、床に座り買ってきた本を一冊手に取り読み出す緋影の方を、またジッと無表情で睨んでいる人形(ドール)なのである。
またしてもいつの間にか緋影の方を向いている人形(ドール)のSAN値がピンチになるほどの怒りが込められた呪いと殺意の波動に対して、全く動じることなく本を読み続ける超絶鈍感な緋影に呆れ果てたのか、いつの間にかテレビの方を向いて、テレビをまたまたつける人形(ドール)なのである。
数時間後、数冊の本を読み終えた緋影は、またテレビがついていることに気がつくのであった。流石の鈍感でヤバい緋影でも、異常事態だということに気がつくと思いきや、なんの疑問も抱かない様子でリモコンを手にし再度テレビを消す。
「消したつもりだったが……まぁ、世の中自分の記憶は一番頼りにならないというからな」
やはり、人形 緋影(ヒトカタ ヒカゲ)という人間はヤバい奴なのであった。2回もテレビを消して、テレビがついたというのに、自己肯定感の低さなのか、ただ単に馬鹿なのか自分の勘違いで済ませてしまうのである。
この男、異変を探すゲームをやらせたら間違いなく前進しかしないだろう。それぐらいヤバイ奴なので、流石の呪いの人形(ドール)と呼ばれる存在も、表情が変わらない人形(ドール)のはずなのに、どこかコイツホントヤバイヤツとドン引きしたような表情に見えるのであった。
そんなドン引きしていた人形(ドール)と緋影の視線がバッチリ合う。いつの間にか緋影のことを、コイツホントヤバイと見ていた人形(ドール)に対して、緋影は疑問を抱くこともなくジッと見つめる。負けじと睨み返す(無表情)人形(ドール)は異界のオーラを発しており、普通の人間なら恐怖でSAN値が吹き飛ぶはずなのだが、緋影には全く通じないのであった。
「やっぱ、髪長いよな……まぁ、本で勉強したし……いけるか」
そう独り言を呟きながら呪いの人形(ドール)に詰め寄る緋影に対して、ヨルナ……チカヅクナ!! と呪いのオーラを放って抵抗するも為す術もなく緋影に両手で確保される呪いの人形(ドール)なのであった。
何するつもりなの?とちょっと怯えた様に見えなくもない無表情の人形(ドール)を膝の上に座らせる緋影は、いつの間にか右手にハサミ、左手に櫛を持っていたのであった。これは先程買ってきた散髪セットである。
人形(ドール)は心の声でヤメテェェェ!!と絶叫するも怪異に対して完全耐性のある緋影に通じるわけもなく、無惨にも散髪されるのであった。
物凄く長かった黒い髪は燃えるゴミ袋2袋にしっかり収められ、可愛く?おかっぱヘアーになった人形(ドール)は無表情のはずなのに、どこか物凄く不満顔に見える。そんな人形(ドール)の気持ちを全く理解してない緋影はやりきった無表情であり、無表情のドヤ顔だ。
「我ながら完璧だ……さて、風呂にでも入って寝ないとな……明日から忙しいからな」
そう言って緋影が突然服を脱ぎ始めると、今まで不満顔(無表情)で緋影の事を凝視していた人形(ドール)が、刹那の間に緋影から背を向けている。どうやら男性の裸を見るのが恥ずかしかったようで、表情が変わらないはずの人形(ドール)の顔が赤く赤面しているようにも見えないこともない(気のせい?)
そして、すっぽんぽんになった緋影は風呂場に向かって行くのであった。しばらくしてシャワーの音が響き始めると姿見が置いてある玄関にいつの間にか瞬間移動していた人形(ドール)は、姿見に写った自分をジッと見る。
おかっぱヘアーになった自分の姿に絶望したようで、おかっぱ姿の自分は、こけしのように見えて、物凄く気に入らない不満顔(無表情)の人形(ドール)であった。
「あれ、俺……鏡の前に置いたっけ……まぁ、いいや……結構上手く切れたと思うだよな……うん、似合っている、似合ってる」
さっぱりしたと風呂から出てきた緋影は、タオルで頭を拭きながら風呂場から出てくると、姿見の前に呆然と鎮座している人形(ドール)に気が付き、何でこんなところにと、少し疑問に感じるも、人形(ドール)に近づき、抱きかかえて人形(ドール)の顔を見て満足そうなのである。
なんか上機嫌な緋影対して、ものすごい形相(無表情)で殺意を向ける人形(ドール)なのだが、緋影は気にした様子もない。ジッと緋影の顔だけを見ていた呪いの人形(ドール)は、テーブルに運ばれ仰向けに置かれた瞬間に心のなかで悲鳴を上げた。
緋影がすっぽんぽんだったからである。生まれたままの姿をバッチリ見てしまった呪いの人形(ドール)は羞恥心と恥辱にまみれ呆然となる。しばらく、頭から蒸気を出して恥ずかしがった後に、殺意が湧き上がってきた呪いの人形(ドール)なのであった。
呪いの人形(ドール)は、仰向け状態からいつの間にかテーブルの端に座り直し心に決めたのであった――――――今夜こいつは絶対に殺ってやる――――と。
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