浮気もハーレムも絶対に許さない! ヤンデレ人形(ドール)りんねちゃん

 昼休みの一年一組の教室に戻ってきた緋影は自分の席に座りながら、机の上にちょこんと座らせたりんねちゃんを眺めていた。そんな緋影のことを見上げジッと睨みつけながら『絶対にハーレムなんて認めません』という呪いの圧を放つ激おこぷんぷん丸なりんねちゃんなのである。


 その呪いの圧は黒い闇の波動として人の目に見えるほどのであり、ドス黒い闇のオーラが緋影を襲い包んでいた。この怪異現象に教室内に数名と残っていた生徒達も恐怖で慌てて教室から逃げ出していった。


 そんな、怒りレベル10の神魔王・大噴火レジェンドサイクロンフレアぁぁぁぁぁ!!!!!!状態の呪いの人形(ドール)りんねちゃんをジッと見つめる無表情の緋影なのである。


 『聞いていますか!?』『絶対にハーレムなんて許さない!』と緋影にヤンデレドールオッドアイで訴えている呪いの人形(ドール)りんねちゃんなのだが、超絶鈍感な緋影に通じるわけもなく、内心でりんねちゃんは相も変わらず可愛いなとしか思っていなのである。


 そんな緋影にユニバァーーーーーーース激激と最上級の怒りの呪いのオーラを放つりんねちゃんの呪いの攻撃は緋影には全く通じてないようで、ジッと怒り狂う無表情のりんねちゃんを眺めながら制服どうしようかと悩んでいる呑気な緋影なのであった。


 その光景をとある人物が一年一組の開け放たれたままの教室の入口から目撃し恐怖で震え上がるのだった。


(な、ななななな、なんだッッッぁぁぁ!!! あれはぁぁぁぁぁぁッッッ!!!! 人形(ドール)から放たれている……く、黒い影が男子生徒を襲っているッ……だとッ!!!!!)


 あまりの恐ろしい光景に恐怖し腰を抜かすと同時にピシッとメガネにヒビが入り、ビビリ散らかす生徒会副会長のメガネ男子なのである。


 『浮気したら呪い殺す!』と怒り『なんで効いてないの!?』と驚き『み、見えてない!?』と呆れるりんねちゃんだが、彼女は人形(ドール)なので勿論、無表情である。


 どうやって、察しの悪い鈍感な緋影にハーレムは許さないと伝えようかと『むむむ~』と無表情で悩むりんねちゃんは、ハッといい案が浮かんだようである。刹那、黒板に色とりどりのチョークで『浮気は許さない』『ハーレムは認めない』とデカデカと呪いの人形(ドール)が書いたとは思えない可愛らしいフォントで書かれていた。


 さぁ、黒板を見なさいと視線で緋影に訴えるりんねちゃんだが、全く黒板の方を見ない緋影なのである。あまりの鈍感さに遂に怒った(今までも怒り狂っていたけど)りんねちゃんは、実力行使と黒板消しを宙に浮かし緋影へと飛ばすも、彼はヒョイッといとも容易く回避しジッとりんねちゃんを見続けていた。


 ゴゴゴゴゴゴゴッと本気モードになるりんねちゃんは『フォイアー!』と緋影に砲撃?を開始した。


 白、橙、青、黄、緑、紫、茶、トドメの赤とヒュンヒュンシュンシュンビュンビュンギュンギュンと飛んでくるチョークを、華麗に見向きもせずに最低限の動作で神回避し、りんねちゃんを眺め続けながら無表情で物思いにふける緋影。完全不動の呪いの人形(ドール)りんねちゃんだが、心の中では地団駄を踏んでいるつもりであり『なんで避けるの!』『早く黒板見て!』と怒りの無表情で緋影を睨んでいる。


(な、ななななな、なんだッッッぁぁぁ!!! あれはぁぁぁぁぁぁッッッ!!!! あの男子生徒人間なのかッ!? あんなことが普通の人間に出来るのかッ!? や、やはり噂通り化け物なのかッ!!!!)


 腰を抜かし恐怖で怯える副会長のメガネのヒビがいつの間にか消えており、再び、恐怖でビシッとヒビが入る。この現象はギャグを超え、まさにホラーといえるだろう。


 もう仕方ないと、りんねちゃんは緋影が瞬きした瞬間に黒板を指差した。これなら、超絶鈍感な緋影も流石に気がつくだろうと勝ち誇った無表情のりんねちゃんだが、考えが甘かたのである。全くりんねちゃんがいつの間にか動いたことにも、黒板を指差して『見ろ!』と伝えていることにも気がついていない様子でジッとこちらを見つめている緋影に、驚愕の無表情になるりんねちゃんなのである。


 『見て!』『黒板!』といったりんねちゃんの怒りの圧に全く気がつかない緋影に、絶対に黒板を見せてやると意地になったりんねちゃんは、教室の入口に居るメガネ男子生徒の存在に気がついたようだ。


 りんねちゃんは、再び緋影が瞬きする刹那の間を狙って、腰を抜かし怯えている生徒会副会長の方に顔を向けるとゴゴゴゴゴッと視線と呪いの圧で『手伝え』と訴えた。


(あ、あの人形(ドール)い、いつの間にかこの私のことを見ている……だとッ!?)


 怯え恐怖する生徒会副会長と、やはり、全くりんねちゃんの顔がいつの間にか動いたことに気がついていない様子の緋影は、りんねちゃんの横顔を眺めながら可愛いなとしか思っていないようであった。


 『早く手伝え』といった視線で見つめ『黒板』『見せろ』と呪いの圧を副会長に放って訴えてくる呪いの人形(ドール)に恐怖でガクガク震える副会長なのである。


(ひぃぃぃぃ!!! な、なんかあの人形(ドール)怒っているんだが!? わ、私に何かをさせようとしているのか!? い、いったいな、何をすれば許されるのだッ!!!!)


 生徒会副会長に意図が全く伝わってないことを理解したりんねちゃんは、緋影と生徒会副会長の視界に映らない刹那の間に、再び黒板を指差した。無論、緋影は全く気がつかずに呑気にりんねちゃんの方を見ていたが、察しが良い生徒会副会長は、全てを理解した。


(こ、黒板をこの男子生徒に見せれば良いのかッ!?) 


 黒板には色とりどりのチョークで『浮気は許さない』『ハーレムは認めない』『呪殺すんぞ』とデカデカと可愛らしいフォントで書かれていた。それを見た生徒会副会長は、一瞬で理解した。(理解してない)


 この男子生徒は、なんてクズな男なのだろうと怒りが込み上げてきた。なるほど、この呪いの人形(ドール)は今までこの男子生徒に捨てられた女性の怨念なのだろうと勝手に解釈した生徒会副会長は、彼に泣かされた女性の無念を晴らさねばと勇気を出して立ち上がり、メガネをクイッと気合を入れると威風堂々と一年一組の教室に足を踏み入れるのだった。

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