第102話 知らぬ間に消えていった芳香

今年もまた、あの香りがやって来た。

そう、金木犀の香り。

10月の連休が過ぎたころ、

その芳香は私の住む街にやって来た。


嗚呼、今年も出会えた。

そのうれしさに、私は一人歓喜した。

少し時期が遅れたが、何とか間に合った!

その喜びの構図は、あたかも、

消費期限が近づいたウナギを半額で買えた時のような。


しかし、遅ければ遅くまでというわけにもいかぬのか。

1週間かそこら、確かにあの芳香は身の回りにあった。

その芳香を浴びつつも、呼吸のズレで吸えないときも。

でも、その芳香を浴びる喜びはしっかりと味わえたよ!


金木犀の咲く道もまた、季節外れのミストレルのように、

知らぬ間に、振り向かせるまでもなく消えていった模様。


あの芳香は、今年も1万ボルト超だったなぁ。

そろそろ、冬将軍閣下のお越しになる時期か。

立冬は、来月初旬の7日木曜日。

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