第15話 桜散り、そして・・・

昨日からの雨で、多くの桜の花が散った。


桜は、自らの咲く気を彩るものである。

その桜の木は、その地を彩る。

確かに、その木に咲いていた桜の花は、散った。

まだ向こうにも、満開の木がある。

その木の桜もまた、間もなく散る。


だが、桜は散れど、まだその地にいろどりを与えている。

散った花弁は、街のアスファルトを、川べりの土手を、

屋根なしの駐車場に停められたクルマのボンネットを、

自らの身を捨ててなお、彩っているのである。


散りゆきし桜の花は、ほどなく、土へと帰っていく。

そしてまたいつか、どこかで、花を咲かせてくれるであろう。

今しがた、その地を彩ってくれたように、

またどこかで、必ず、花を咲かせてくれるはずである。


次の雨の頃には、今咲いている桜の多くも、また、

散ってなおその地を彩り、

やがて、土へと帰っていくであろう。


今日もまた、雨風とともに、桜の花が散っていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る