第30話 かつて子どもだった私を訪ねて

2024年5月4日。土曜日。祝日。


朝、6時には起き上がっていた。

年とともに、目ざめが早くなる。

春先から夏にかけて、特にそうなる。

なんせ、朝日のあたる東向きにベランダのある場所だからね。


6時に起きて、しばらくの間、ひたすら仕事した。

まずはいつものルーティンをこなし、

それから、小説の続きを書いた。

まだ、公開していない。

もう少し書き足して、それから公開するつもりだ。


そうこうしているうちに、朝8時になった。

どうも、体が動くことを欲している。


自転車でわずか十数分のあの地。

あそこへ、行きたい。

強烈に、思った。

とにかく、行くことにした。

自転車に乗ること十数分。

私は、40年ぶりにの地に至った。

そこは、ある御寺の手前の子ども広場。


その御寺の住職をされていたおじいさん。

短期里親でお世話になった家の母親の父親。

その人の葬式に来て以来。

あの日その御寺を去って、40年と4カ月。

それまでよく来ていた子ども広場に自転車で乗り入れた。

あの階段を登れば、御寺の本堂がある。

だけど、御寺には登らなかった。


あの頃、そのおじいさんの家にいるお孫さんたちとよく遊んだ。

それが、この広場。

確かに、この地に何度も来た覚えがある。

野球なんかもしていた。

だが今は、とてもそんなことができる場所じゃない。

ガールスカウトの事務所になっているプレハブ小屋も建っている。

他にも、いくつかのプレハブ小屋。


子どもの頃は広く感じられた広場も、大人になれば狭く感じるという。

ただでさえそうなのに、今や建物も複数建てられてさらに狭い。

でも、あのときのおもかげは確かに、確かに、そこにあった。


その後私は、かつての通学路を自転車でゆっくり登った。

そう、この小学校。ここに、5年と2か月通った。

その学校の横に、墓地がある。

何度か、来た覚えがあった。

よく見ると、辻田家先祖代々の墓と銘打たれた墓が。

墓碑銘には、確かに、あのときお世話になっていた住職夫妻、

つまり、あの家の隣のおじいさんとおばあさんが眠る墓だ。

昭和7年、おじいさんがまだ30代半ばの頃に建立したことが明記されている。

戦前の第六高等学校で事務員を、戦後は岡山の税務署に勤められていたという。


いろいろ思うところはあるが、これで私、少しほっとできた。

帰りは、紅茶の店で朝食を兼ねてセイロンティーをいただいた。

これは1979年、私が小学生の頃にできた店。

久々に、オリエンタル風の洋朝食をいただきました。


今日は、朝から出向いてよかった。

なんせ、40年以上前の昔の私に出会えたのだから。

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