第8話 幸せ
目を覚ますとそこには友達がいた。ずっと隣りにいてくれていたのだろう。
「うおっ起きたか。もう手離してもいいか?腕が限界なんだよ」
僕はハッとして手をほどく。
「ごめん」
「いいよ。気にすんな。」
友達はニコニコしながらそう言った。
「なぁ、ちょっといいか?」
僕は「うん」と頷いた。
「そう言えば前も話したけどさ、俺、大統領になりたいんだ!大統領になって、戦争を終わらせて、前みたいに平和な世界にしたいんだ!それから…」
夢について語る彼の目は今まで以上に輝いていた。まるでどこか明るい未来を見ているかのように。
「そうだ。俺だけ喋っててもあれだな。お前は夢ないのか?」
僕の夢か…
「僕の夢は、君がいて、パパとママがいて、外に出て…」
僕は外の事を思い出すと、急に外に出たくなった。でもこの施設のような場所に来て、一回も外に出してもらえなかった。外はすごくきれいで、あたたかくて…
「おい?大丈夫かよ?」
友達の一言で気付いた。僕、泣いてたんだ。
「僕っ…僕は……」
僕の夢は
「僕は戦争前の世界で、君と一緒に過ごしたい…」
そう言った途端、視界が強く揺れ、思わず目を瞑ってしまうほどひどい頭痛に襲われた。
うぅ…いたた…
「おい!おいって!………!」
友達の声がかすれていく。
頭痛が治まり目を開けると、視界が白く眩しい。目を細めつつあたりを見回すと、綺麗な花がたくさん咲いている。
「これは…」
見覚えがある。そうだ。僕の家はお花屋さんで、ここはお母さんが手入れしている花園なんだっけ。なんで忘れていたんだろう。施設に来るまでの記憶を。
「ゆうと!手伝ってくれない?」
遠くから聞き覚えのある声が聞こえる。声のする方に目をやると、茶髪ロングにウェーブがかかった髪型の女性が立ってこちらを見つめている。
お母さんだ。
僕は、本当に何で忘れていたんだろう!
僕は嬉しいあまりお母さんに飛びついた。
「ちょっとゆうとどうしたの?」
困惑するお母さんをおいて僕は思いっきり幸せを感じた。
しばらく抱きついたあと、僕はお母さんの手伝いをした。花に水をやり、花束をつくって、お客さんの接待をした。あぁ懐かしい。懐かしいのに、まるで風のように体が動いていく。
あぁ、僕今、すっごく楽しい!
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