第21話 人材探し

街でしばらくぶらぶら歩いていたら、ガタイのいい作業員の男が休憩しているのを見つけた。

「あの人にしよう」

そして俺は男に声をかけた。

「あの…」

「どうした坊主。力仕事なら任せな。俺にかかれば、重いものを持ち上げるなんて容易いことだからな」

男は高らかにガハハと笑った。愛想が良くてこっちまで自然と笑顔になってしまう。こんな人に人を殺害する事を頼むのは少し気が引けるが、声をかけてしまったからには一通り話さなければならない。

「それで?どうした。何か用があるんだろう?」

こうして俺は一通り話した。

「…フハハハ!!!おいおい坊主嘘だろ?戦争?この国はすげぇ平和なんだぞ?それなのに急に戦争って。しかも俺にその軍人になってほしいって?おかしな話しだ」

「俺は本気で言ってるんだ」

予想通り、この国はもとから平和だから戦争なんて誰も考えたことがないし、行ったところで馬鹿にされるのも当たり前だ。この男はダメだ。他をあた…

「おい坊主。ちょっと待てよ」

男に呼び止められる。

「お前、もしかしてとんでもねぇガキだったりしねぇか?」

俺は確かに大統領の息子兼後継ぎだから、凄いと言えば凄いのかもしれない。

「なんかお前、言っちゃあ悪いが、嫌な感じがするんだよな。…まぁいい。今回のことは信じきれねぇが、また何かあったら話しかけてくれよな」

またなと言う男にうんと応えてその場を後にした。


さぁどうしようかと考えながら次の人材を探し歩いていると、ぽつんと座った少女がいた。とても汚れていたし、力も無さそうなので、特に気にすることなくスルーしようと目の前を通ると足に衝撃がかかった。

驚いて振り返ると、少女が俺の足を掴んでいた。そして小さな声で

「わたし…わたし…」

と繰り返していた。このまま手を振り払って無視しようとしたが、可哀想でできなかったら話を聞いてやることにした。

「なんだお前」

俺が問いかけると

「わたし…わかる……あなたの、お父さん」

俺は大統領の息子だからな。知ってる人がいてもあまりおかしくない。

「戦争…殺害、計画…」

俺は驚いた。なんでこいつが知ってるんだ。この事は世間には一切情報を与えていないというのに。

「お前!その情報どこで…」

思わず肩を揺らして叫んでしまった。

「……わかる、よ。これ」

そう言って少女は先程まで抱えていて見えなかった水晶を取り出した。

「なんだそれ」

「これ、考えてる、こと、わかるの。だから…わかった」

今の世の中にはそんな便利なものがあるんだなぁ、なんて関心している場合ではない。問題は少女が味方につくかどうかだ。戦力にはならなそうだが、ここまで知られてしまえば、他人に情報が漏れてもおかしくない。

「お前、その情報、どうする気だよ」

「…誰にも、言わ、ないよ…?こ、こわいかお、ししないで…」

少女は酷く動揺している。きっと過去に何かあったのだろう。あまり深掘りはしないでおこう。

「わ、わたし、一緒、に、」

「お前は何ができる?そんなにボロボロだし、体格も小さいし、戦える状態じゃないし、やめといたほうがいいと思うぞ」

少女は4歳くらいに見える。俺より年下じゃあ戦力にはならない。

「だから、戦わない。でも…サポー、ト、する…!」

少女が言うには、一緒に仲間探しをしてくれるらしい。まぁ仲間がいるのは心強いし、一緒に仲間探しをすることにした。

「わたし、がんばる…!なまえ、ララ」

「俺ははるき!よろしくな!ララ!」

ララは嬉しそうに笑った。


そしてララと一緒に街を歩いたが、あまり話を信じてくれる人が少なく、そのまま1日が終わった。 

「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙‼いないよお゙お゙お゙お゙お゙!!」

俺は庭の芝生に倒れ込んだ。もうこのままみつからないままなのか不安が押し寄せる。

「はるき、くん。また、あした、さ、がそ、?」

ララが慰める。

「そんなこと言ったって…あ」

「どう、したの?」

「こい、ララ」

「、?」

今日はララも一緒に頑張ってくれたんだ。住める場所ぐらい用意してやりたい。でも俺ん家じゃ親父にバレた時にうるさくなる。基本的に親父は「汚いガキなんか連れてくるな」なんて言う人だからララなんて見つかったらララが危ない。

でも唯一家で親父の知らない場所がある。そこにララを匿おう。

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