第20話 ヤバ女

「…こんにちはー。来たよ?」

あの後の事は覚えてないが、ゆうとが頑張ってねと言ってそのまま帰ってしまったのは覚えてる。その後俺なりに考えた結果、結局ヤバ女に相談することにした。今はその女のラボに来ている。

ラボは俺の家の庭の、草にまみれたわかりづらいところに正方形の蓋がしてあるところの下に行けばある。つまり地下だ。

なぜ俺の家の庭にいるのかというと、トキじいさんと同居している時に、実験に失敗して爆発おこして追い出されたから友達に(おかぁ)に相談して来たんだと。

「あー!はるきちゃああああんぅよく来たねぇえええ!」

ヤバ女が薬品をいじる手を止めこっちに腕を広げて走ってきたから俺は横に避けた。

「うぐぇ」

ヤバ女が壁にぶつかる。あんなにでかい胸も衝撃を受けるとぺちゃんこになるんだな。あとちょっと痛そう。

「酷いじゃないのぉ…」

細い腕で体を支え、おき上がる。

ヤバ女のルックスはとてもいい。顔立ちはいい方だし、肌は白いし、腕は細いし、太ももはむちっとしてるし、胸はでかいし、髪は綺麗なままだ。こんな生活してても風呂には入っている。

いつ風呂なんか作ったんだ。

ヤバ女は一人で家電は作れるくらいの才能があるからおかしくはないのかもしれない。

「もう!久しぶりに会ったのよ?少しは優しくしてくれてもいいじゃない!私も女よ?いい?いつか好きな人ができたら優しくなさい」

急に説教が始まった。

「俺はお前の事好きじゃないんだよ」

つい反論してしまった。がしかし

「あら?!もしかして反抗期?!やだ~まだこんなに小さいのに〜ほんとに可愛い子なんだからぁ!」

そう言って抱きついてきたからもう俺は諦めて抱きつかれる事にした。やっぱりヤバ女はヤバ女だな。ほんと今すぐ帰りたい。

「あのさぁ、俺、相談しに来たんだけど?」

そう言うとヤバ女は

「え待ってもしかして!はるきちゃん私に会いに来たってこと?!もうやああああああ!!!ほんっとぉおおおおうに可愛い子ねぇええええ!!!!」

うるさい。

「それで?私に何の話?」

急に冷静になるとほんとにびっくりするからやめてほしい。

ヤバ女は椅子に座り直してこっちを向いた。

俺も勧められるように目の前の椅子に座った。

「俺、次期大統領になるんだけど…」

ひと通りヤバ女に説明した。

「…て言うことなんだけど」

ヤバ女はポカンとしている。

「…えっと?えーっと………私に、バレない毒薬を、作って欲しいのね?」

ヤバ女は珍しく動揺している。

大体のことは自信満々に「任せてちょうだい!」とか言って作ってくれたりするのに。

「無理そうか?」

「毒薬だけなら作れるけど…バレないようにするっていうのは難しいかもしれないわね…」

ヤバ女でもだめならどうしようか。もう諦めるしかないのかもしれない。

「ねぇ。あなた、さっき戦争がどうとか〜って話してたじゃない?それなら、それを利用して、軍の人達に協力してもらえないかしら?」

「軍の人達?だって軍の人達って親父が上に付いてるんだぞ?バレたら…」 



「死んじゃうんだから関係ないでしょ?」 



…は?

やっぱりヤバ女はヤバ女だ。いやヤバ過ぎる。言っていることに間違いはないが、あんまり真面目な顔して言うものだから、いや、ヤバ女だもんな。

「しかもこの国すごく平和じゃない?だから戦争したくないなんて言う人が大半いてもおかしくない話でしょ?」 

「でもどうやって利用するんだ?みんな集めるのに時間かかっちまうよ。」

「そぉおおおぉんなこと心配することないわよぉ!私にまかせて!」

「なにするんだよ?」

「少しずつ…少しずつね。はるきちゃん。よく聞いてね。あなたが軍を率いるのよ。今から私が、はるきちゃんのオーラを引き立たせるような薬を作るから。それを飲めばみんな言う事聞きやすくなるわよ」

俺が軍を…か。俺にそんな重要な事できるだろうか?第1こいつの作るものなんて食えるもので作ってあっても食べたくない。

「それ…副作用は」

「さぁてそうなると…はるきちゃん。あなた魔法が使えるようにならないとね。いい感じに圧力がかけられないわ」

スルーされた。ほんとに飲みたくない。

「俺魔法使えるよ」

「………え?はるきちゃんもしかして…」

まずい

「魔法使えたのぉおおお?!もう!あんなに小さい時は使えるの?って聞いたらポカンとしてたのにぃ!!!成長したのねえええ!!!!!」

やっぱり抱きつかれた。この女、スキンシップが激しい。

「なぁんだなんだ使えたのね!それで!何ができるの?はるきちゃんの魔法!」

俺はどうやらヤバ女に魔法を見せたことがないらしい。確かに俺の魔法はあまり実用性がないから見せるも何もない。

「思った花を出せる魔法だよ」

「ヤダなにそれなんかロマンチック」

乙女心。

「そうねぇ…どうせなら何かものを変えれるようにしましょうか。私、薬の技術はまだまだだから、できてももとの魔法がベースになるようなものじゃないと作れないのよねぇ…どうする?やっちゃう?」

「頼む」

「任せてちょうだい!」



それからしばらくして薬は完成した。

早速飲んでキッチンにあったスプーンを花にしてみた。

これ、使える。

そう思った俺はもう一つのオーラの薬を飲んで街へ出た。

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