第22話 ララの新居

「気を付けて、ララ。こいつちょっと、いや、だいぶヤバいから」


ララは納得していない様子だ。

会えばわかると言って俺はそいつにララを預けた。

そう、ここはヤバ女のラボ。

ここはおかぁが「うちの庭に地下を作ってひっそり暮らせば?」なんて冗談で言ったら、ヤバ女がほんとに作ってしまった秘密の空間なのだ。


「おーい。起きてるー?」


ヤバ女は手を止め、ぐるりとこちらを見た。


「あらぁ?はるきちゃんじゃあない!最近良く会いに来てくれて嬉しいわああぁ!!」


そう言ってこっちに走ってくる女を避けた。


「うぐぇ」


引っくり返ったカエルみたい。


「んもぅ!いっつもこうなんだからぁ…」


小声で何か文句を言っているが気にしない。


「そんなことよりさ、また頼み事があるんだ」


「まぁ!最近いろんなこと私に任せてくれて嬉しいわぁああ!全く、もしかしてはるきちゃん、私の事恋しくなってきたんじゃないのおおおお?!ちょっとおおぉお!!もう!可愛い子!!」


俺を締め付ける腕が痛い。まるで拘束されたときみたいだ。されたことないけど。


「それで、今日は…あら?!あなたもしかして!はるきちゃんの…」


言わせねぇよ?


「彼女じゃないよ。人材探しの協力者。今日はこの子について話しに来たんだ」


「あら?そうなの?こんにちは〜」


ララはよそよそしく頭を下げた。


「この子がどうしたの?もしかして、すっごく可愛いから…」


「彼女にしたいんじゃないよ…頼むから黙って話を聞いてくれ」


ヤバ女に匿ってほしいと頼んだ。


「なぁんだそんな事?全然いいわよぉ!任せて!さ、ララちゃん。疲れたでしょう?お風呂、入る?。」


ララは嬉しそうに頷いた。


「じゃあ私と一緒に入りましょうねぇえ!もうほんと可愛いんだからぁ!」


急に抱きつかれてララはどうしたらいいか分からなくなっている。ヤバ女はほんとに誰にでも抱きつくんだな。


「はるきちゃんも入る?」


「そんなわけ無いだろ!」


ヤバ女はフフッと笑って、


「じゃあ後は任せてちょうだいね。大丈夫!ご飯はちゃあんとあるから!」


「変なもの入ってないだろうな?」


「もちろん!最近料理勉強したのよ?だから安心してね?ララちゃん」


ララはすごく不安そうにしている。目で助けを訴えてきている。


「じゃあ俺、行くから」


「はぁい。また来てねぇ」


ララの「あ、え、え…?」と言う心配そうな声が聞こえたが、ヤバ女になれるには時間がかかるからな。



グッドラック、ララ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る