最終話 ずっとずっと一緒かもね
「さぁ!ゆうとの花もゲットしたし、ゆうとも救えたし!WIN WINだな!もう外に出よう。すぐヤバ女のところに行こう。これ預けなきゃな」
ラボに行く間の街はまるで殺風景だ。路上には処理しきれなかった死体がゴロゴロ転がっている。
中には自分の子供を食べている人もいる。
こんなの今までなかったのに。
全部親父のせいで…
「おい。来たぞ」
うちの土地の範囲にはヤバ女の作ったバリアが張られているから、ここはしばらくは大丈夫だろう。
おれんちは基地になっているから、おれんちには今たくさんの団員がいる。
と言っても前はバーが基地だったんだけど、あんな事があって人も減っちゃったから、あまり人数は多くない。
基地にはおかぁがいるから、料理や家事はおかぁがやっている。ヤバ女の作ったお手伝いロボットも、そこで一緒に頑張っている。
「おい。来たぞ」
ヤバ女は何か作業をしている。変わりにララが返事した。
「はーい。どうしたの?」
こうしてみるとララも初め会ったときからずいぶん変わった。
髪はきれいになり、匂いもヤバ女の使っている洗剤のいい匂いがする。なんせ一番変わったのは喋り方が流暢になっている事だ。
「この花、崩れないようにしてほしいんだ。頼めるか?」
ララに手渡す。
「うん。博士に頼んでみるね」
少しの間ララと会話していると、
「はるきちゃん。このあと攻めてくるみたい。どうするの?」
ヤバ女には国の状況をリアルタイムで確認してもらっている。ここがチャンスだ。
敵陣と戦争している時に建物に侵入して親父を殺して、団の力で戦争をやめさせる。もうすぐ平和が訪れるのだ。
「一旦基地に戻って、体制を整えてから戦うことにするよ」
「とうとうなのね…」
ヤバ女とララは寂しそうな表情を浮かべている。
「大丈夫だよ!俺達は絶対帰ってくるから!じゃあそろそろ基地でみんなに話してくるよ。もうすぐだろうからな」
そう言って基地に行こうとすると、ララが抱きついてきた。
「絶対帰ってきてね。約束」
「ああ、やくそ…」
ドンッ
「はるきちゃん。絶対戻って来るのよ。」
ヤバ女が俺たちを包み込む。苦しい。が、悪い気はしない。
「はいこれ。」
ヤバ女がスマートな感じの腕時計っぽい機械を渡してきた。
「これを腕につけてね。これで安心できるわ。大丈夫、大丈夫よ」
最後にもう一回抱きつかれた後、じゃあなと言ってその場を後にした。
敵陣が攻めてきた。大丈夫。全員花にしてしまえばいい。
「みんな!行くぞ!!!」
そう言って敵陣と衝突した。
銃声や魔法の音がうるさくて集中できない。
こんなにうるさいのは初めてでうまく行動できない。だが負けてはいられない。早く帰ってゆうとに会いたい。
「うおおおおお!!」
「ふん」
一斉に攻めてきた奴らの武器を花に変えてやった。
そして困惑している兵士たちも花にしてやった。
勝てる、勝てるぞ。
味方が相手している敵も、隙を見てなんとか花にすることができた。
がしかし、この数、花にするだけではあまりにもきりが無い。
どうしようかと考えていたら左足を取られてしまった。
必死に抵抗するが子供の力では対処できない。
これからここを抜けて親父のいる建物に侵入しなきゃいけないのに。
みんなはと思うと、やはり数の関係で倒れ込んでいる者や、多分もう死んでしまっている者もいる。
やはり生き残りは少ない。
もうだめかと思ったが生き残りが助けてくれた。
その隙に俺はこの軍を抜けようとした。
が、しかし。
あまりにも数が多すぎて、足元がもつれて転んでしまった。
「うっ」
腹を蹴られて槍を向けられた。
「待って、違うんだ!俺は」
ドスッ
弁明途中で俺は喉を突かれてしまった。
「邪魔だな」
そう言われて俺は道の端っこに投げられてしまった。
ああ、痛い。
痛くて、呼吸をするのも苦しい。呼吸するたびに、傷口に痛みが走る。
散らばる花びらの上に転がる小鳥は、花びらを赤に染めていった。
「ああ!嘘でしょ!お願い…!どうか…」
呼吸ができない。するたびに痛い。最悪だ。
ああ、もう、早く殺してくれ。
あ、そうだ。ごめんなゆうと。俺、一緒にいられないみたいだ。親友同士、まだ、いっぱい遊びたかったな。
「博士、どうしたの?」
ララも一緒に。3人で遊びたかったな。
ヤバ女、確かにお前はウザったらしかったけど、
「ねぇ、どうしたの?博士」
ウザったらしかったけど、意外とそういうの、俺、嫌いじゃないぜ
みんな、絶対来世は、ずっと、一緒だよな…
博士は声にならない声を出している。
「嘘でしょ…?」
口元に手を当てて驚いている。
「ねぇ博士、どうしたの?」
博士はゆっくりとこちらを向いた。
「やっぱりね。子供は安全なところにいなくちゃ。ララちゃんは、ずっと…」
そこまで言って博士は両手で顔を覆い泣いてしまった。
博士の背中をさすりつつ、さっきまで博士がみていたモニターを見ると、そこには水平線のようにキレイな横線が、ツーと音を立てて伸びている。
あぁ、そういうことね。
私は衝撃が大きすぎて泣くことができなかった。
私はあの花の前に立って、ゆうとくんに教えてあげた。
「あのね、ゆうとくん。はるきくんね、」
あれ、さっきまで普通にいられたのに、目頭が熱い。
「あのね、」
嫌だ、認めたくないよ
「さっき、っ、」
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
「死んじゃった」
ラボに2人の泣き声が木霊する。
「ねぇ博士!どうにかならないの?!博士ならできるでしょ?」
博士はただ頭を横に振るだけで、何も言わなかった。
2人は体を抱き寄せて泣きわめいた。
そこにはただ1輪、赤黒い花だけが、時計の方を向いて、ふわりと咲いていた。
しせつぐらし ざくざくたぬき @gal27
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