SF要素を取り入れた、未来的なホラー短編集。
通販サイトで見つけた、危険を察知して教えてくれる帽子の話。ドライバーの命を守る、自動運転AI の話など様々なお話がありますが、便利と思えるそれらの道具、人が暮らしやすくするために定められたルールの中には、ゾクッとするような落とし穴があったりします。
どのお話もとても魅力的ですが、個人的に気に入ったのは表題作でもあり、短編集のトリを飾る『ハヤカワくんのはやとちり』。
宇宙人やピラミッド、ノストラダムスの大予言等、オカルトが好きな少年だったハヤカワくんが大人になって体験する、不思議な出来事。何を言ってもネタバレになってしまうので詳しくは書けませんが、世にも奇妙な物語が好きな人なら気に入りそうな、「えっ!?」驚く結末がありました。
これほど短編集の最後を締め括るにふさわしいオチはありません。
いったい何があったのか。気になった人は、ぜひ読んで確かめてみてください。
まずはあらすじに書いてあることをそのまま引用しますが、本作は、作者様の気まぐれのお任せコース的な短編集です。
ドラえもんに出てくるような危険予測機を買った男。追い詰められ、親への殺意を少しづつ募らせていったタクシードライバー。突如未来人と遭遇した。などなど、それぞれ違った設定、切り口で書かれる6つの短編。
凄いのは、そのどれもがオチが秀逸だということ。
物語にとってラストをどうするかは、最重要課題のひとつ。これしだいで名作にも駄作にもなりますが、そのオチの力でこちらに書かれている6作全てが名作となりました。
オチまで進む過程も、最後はどうなるのだろうとハラハラさせる展開で読者のハードルを上げつつ、そうきたかと唸るような決着のつけ方、思わず今までの話を見返すような設定で、ハードルを見事に飛び越えてきいます。
ひとつひとつが独立した話になっているので、まずは章のタイトルを見てから気に入った話だけ読んで見るのも、ひとつの楽しみ方かもしれません。