第24話 ずっと一緒
「つまり、俺たちの目的は親父を殺すことだね。前と変わらないよ」
はるき君はまだお父さんを殺していない?だから僕はまだ施設にいるままなのか。
「あのさ、なんで仕事部屋じゃなくて、みんなのいた部屋に軍人がいたの?」
「まぁそれはあれだ。戦争で負けそうになってるからみんな必死なんだよ」
あっさりと返されてしまった。
なんだかあまり興味がないように見える。
前はあんなに僕の事大事そうにしてたのに。
まぁそれも僕の思い込みかもしれないけどね。
「負けそうってどういう事?あのバーの人達がいっぱい人を他のところで集めてくれてたんじゃないの?」
「くれてたよ。けど…今はこいつらと残った数人しかいないんだ。」
「なんで?結構な人いたんでしょ?しかもあのとき勝てそうって言ってたじゃん…僕はやっと救われると思ったのに…!」
僕はやっと救われる、そんな事は夢のまた夢だったのであろうか?不思議な少女ララちゃんも一緒に人探ししてくれてたのに。何があったのだろうか。
「俺はゆうとを救いに来たんだ!本当だよ!だから話を聞いてくれって。」
はるき君は僕の手を取り目を見て大声で言った。
それに圧倒されて僕は動けなかった。
「まず、男達だけどな。あいつら、うちの国が負けそうになってるから、団を抜けて自国に戻っちゃったんだ。」
「はるき君はなんでお父さんを殺さなかったの?」
「そうだよ」
僕は平和な世界を望んで時計を使ってここに来たんだ。
こんなの、平和でもなんでもない。
もしかして、ときじいさんが言ってた、時間がどうこうの話なのだろう。
この時間軸のはるき君は諦めてしまったのだろうか?
「殺せなかったんだ。案が何も思い浮かばなかった。団を出動させようと思ったけど、この有り様じゃあな…」
やっぱり諦めていたのか。そうだよね。
「でもなんでここに来たの?」
はるき君は誇らしげに言った。
「だから!こんな状況だからこそ!ゆうとを助けに来たんだよ!」
はるき君は自信満々のようだ。
相変わらず後ろのローブの人達は何もしないで突っ立っている。
「だから…」
そう言った瞬間、横腹に大きな圧がかかる。何が起きたかと思い圧のかかった方を見てみると、はるき君の手にナイフが握られていた。
圧に押されそのまま床へ倒れ込んでしまった。
「え。はるき君何して…」
なんだか胸が熱い。気づいたらはるき君の握ったナイフが僕の腹に突き刺さっていた。
痛い。
だがはるき君はナイフを抜いてくれない。
「は、るきくん?」
「あのな、ゆうと。」
そう説明しながらナイフを思い切り抜いた。
痛い。
「この国はもう終わりだ。平和すぎたんだ。だから兵士の成長も遅くて、危機感を持たない人もいたんだ。」
痛い。熱い。僕はうめき声をあげるも、気にせずにはるき君は話している。
「だからな、ゆうと。こんな生き地獄で知らない間に殺されているより、俺の手元にゆうとが残るほうがいいだろ?そっちのほうが俺は好きだけど、ゆうとは?」
痛い、痛い、痛い。熱い熱い。
「ゆうとも俺の顔見れたほうがいいだろ?なんせ俺たち親友なんだから。」
「ゔぅぅ…ああああァ…」
痛いよ。
「ゆうとの心臓はキレイだね。血色が良い。流石いい飯食ってるだけあるわ。」
はるき君が何をしているのか分からない。痛くて何も頭に入ってこない。苦しい。
「じゃあねゆうと。ゆうとと喋れなくなるのは寂しいけど、いつでも俺と一緒だからな」
ドスッ
ゔぁ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ァァァ
最後に胸にとんでもない痛みが走った。
はるき君は、これで本当に僕を救った気になっているのだろうか?
逆に僕は苦しめられている気がするが、もうそんなのどうでもいい。どうせ僕は、このあとすぐ死んじゃうんだから。
「わぁ!キレイ…こんなにキレイに咲くんだね!しかも…すごい!ほんとにキレイ!やっぱり素材がいいからな!」
ああ、意識が遠のいていく。
「ゆうと。これからずっと一緒だぞ。」
うん。そうだね。
「ねぇ!これ崩れないようにケースに入れておいてよ!後でヤバ女に壊れないようにしてもらうから」
…
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