第12話 遊び

友達に手を引かれるがままに家の中に入ると、左右に廊下が広がっていて、眼の前には大きな階段があった。


「こっちだよ!」


そう言って階段をあがって左に曲がると、一番奥の右側にある部屋に案内された。


「入って入って!」


部屋に入って中を見回すと、ベッドが置いてあった。小さくて丸いベランダもついていて、机があるいかにもって感じの部屋だ。


「いい部屋だね。花瓶の花もきれいだし」


「だろ?この花、俺好きなんだよ」


そう言ってはるき君は花瓶に生けてある白百合によく似た謎の花を眺めていた。

その顔はまるで325番に瓜二つだった。

出会ったときから思っていたのだが、もしかしたらはるき君は、施設で出会う前の325番なのかもしれない。

でもそしたら施設に入った時に初対面だった記憶は何だったのだろうか?


「どうしたんだよ。そんなにジロジロ見るなって。なんか照れるだろ?」


僕はどうやらボーっとしていたらしい。


「これ、なんて言う花なのか気になっちゃって」


僕は適当に嘘をついた。特に意味はないが。


「あぁ、この花?そういえばお前俺ん家来るの初めてだったな。これは俺が造った世界に1つだけの、俺の大好きな花だ。名前はないけどな」


「え?!はるき君魔法使えるの?」


僕は驚いた。まさかはるき君が魔法を使えるなんて。

施設にいた時は、「魔法使えんのかな?」なんて言っていたのに…

あれ、辻褄が合わない。

やっぱりこの時計があらわれてからなにか変だ。

トキじいさんは「時間軸を動かせる時計だ」なんて言っていたけど、もしかして時間軸の移動となにか関係があるのか?

それとも施設に入る前の記憶がなかったから、それのせいかも?


「おーい!聞いてるのか?さっきからボーっとしてどうしたんだよ!体調でも悪いのか?」


僕はハッとして


「ごめん。聞いてなかった。もう一回頼める?」


そういうとはるき君は笑って


「もう!友達だから特別にもう一回話してやる。でも、これ聞き逃したらもう一回はないからな!」


久しぶりに見たなぁ…この笑顔。やっぱりこの笑顔は僕を安心させてくれる。

まずい、聞き逃してしまうところだった。僕ははるき君の話に集中した。


「お前に言ってなかったっけ?魔法使えるって。てっきり話したと思った。ちなみに俺の魔法は、頭に思い浮かべた花を生成できる魔法だぜ!だからときたまお前んとこのお母さんに花を生成してあげてたんだけど、覚えてないか?」


「え?あぁ、だからたまに来てくれてたんだね。助かってるよ。ありがとう」


初耳だ。そんな事あっただろうか。そんな事を考えていると、


「なぁゆうと。ちょっと真面目に俺の話、聞いてくれるか?」


はるき君はこちらを見つめている。

僕は頷いた。


「よかった。それじゃあ本題に入るけど…」


そう言ってはるき君は話し始めた。

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