2分0秒小説『塞翁が馬券』

 朝のニュースの占いコーナー、蟹座のB型金運MAX!

 競馬だ!競馬しかない!

 ぶち込んでやる全貯金!っても知れた額だけど。

 オンラインで買おうとしたけど、スマホの調子が悪い。久々に競馬場に行こう。

 電車に乗る。寝過ごして通過「やっちまった」第一レースには間に合わない。遅れついでだ。この駅に確か朝ラーやってる店が……あった。すする。旨い。電車に乗り直す。

「チカンよ!捕まえて!」

「え?俺?」

 やってない。両手で吊革掴んでたし。それなのに駅員に突き出され、でも近くに居た人が証言してくれて、無事解放されたけど、もう昼を回ってる。競馬!

 走ってると、「おい!高橋」振り向く「え?伊藤?」。

「久し振り」

「ああ、卒業旅行以来だな」

「今何してんの?」

「いや、競馬場に行こうと」

「いや、じゃなくて、仕事」

「ああ、車屋」

「マジで!いや、俺今から車見に行くとこなんだよ」

「へー、じゃあな」

「待てよつれないなぁ。休みなんだろ?」

「ああ、だから競馬に」

「付き合えよ車選び」

「やだよ!今日は馬券買わなきゃいけない日だから」

「なんだよそれ。いいから付き合えよ、香織の近況、教えてやるから」

「え?まさか結婚したとか?」

「さぁな、知りたければ、俺に付き合え」

「ぐう」


 夕方、最終レースに間に合うか?あ、LINE入った……やべ、課長からだ。急に復活すんなよこのスマホ……うわ、既読にしちゃった。くそ、返信するしかねぇ。え?ちょっとこれ、簡単な話じゃないぞ。


 結局課長に電話して、取引先に電話して、クソッ、今から行っても最終レース間に合わん。でもまぁ、通信復活したし、ネットで馬券買えばって繋がらんのかーい!嘘だろ!そんな事ある?


 朝の占い思い出す。「何をやってもお金は減りません」って、あー、馬券買えてりゃなぁ、ノーリスクで大金getできた筈なのに……ツイてねぇ。

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