037_ガラクと方針転換
翌日を含めて2日間休養をとったガラクは寝込む前よりも体調がよく感じるほどに回復した。
それだけの休養によってそれほどまでに回復したと言う事実が、叔母のスクルが亡くなって以降、ガラクがどれほど無理を重ねていたか想像に難くない。
3日目などはもう大丈夫だからと出社しようとしたガラクをスクラがベッドに(物理的に)放り込み強制的に休ませたが、出がけに魔法関係の練習や勉強も禁止といい含められたせいで、最後の1日は何もすることが無く家でうろうろしながら物思いに耽るという、従来、あまり何もしないでいることのなかったガラクにとっては若干の辛い1日だった。
ただ、そのおかげで現状、自分がするべきと増やしてきたことが多すぎることは自認できた。
スクラは魔力操作の習熟度が一定レベルに達して魔法の練習に入り、それまでの生活を考えればできれば早く耐熱魔法が使えるようにしてあげたいという気持ちがあるものの、耐熱魔法自体は練習に危険が伴うタイプの魔法ではない。
また、これまでの経験からガラクは魔力操作を人に教えることで自分の習熟度も上がことを実感してた。
そのため、スクラについては今後は魔力操作の練習は魔法陣無しで1人でできるので魔力操作の練習は自主練習に任せ、魔力操作を教える側としてスキルを習得してもらうため、魔力操作の練習の際にガラクを練習台として人に魔力操作を指導するための技術を教えていくことにした。
耐熱魔法の練習はそれほど危険を伴わないので、そちらについても自主練習に任せ、週に一回程度のペースで上達具合のチェックをすることで問題ないだろう。
パリスの魔力操作の練習は業務の空いた時間に実施しているので、終業後まで行なうと習得スピードが速くなってガラクが対応しきれなくなる。
他の2人とペースを合わせる意味でも業務時間外は魔力操作の練習はせず、自宅に一緒にきた時は魔法の発動に関する勉強に専念してもらうことにする。
魔力操作の練習ペースを考えるとクロスタが一番習得に時間がかかると思われる。
その後の魔法習得の際の習得ペースを上げるために、会社で落ち合って送り迎えをするのではなく直接ガラクの自宅に来てもらう。
ガラクの負担を減らすこと、スクラの指導技術の練習になること、クロスタの生活にも余裕ができると思われることと、一石三鳥の素晴らしい手段として帰宅するまでの間にクロスタの魔力操作の練習をスクラに担当して貰うようにする。
クロスタが放課後に自宅に来てからガラクが帰宅するまでの時間では1日に実施できる練習量をこなすには時間が足りないので、帰ってから残りはガラクが練習を引き継げば習熟度の確認もできるだろう。
すでに副社長から教えて欲しいと言う打診もあり、今後は徐々に魔法を教える相手が増えていくことが想定される。
特に魔法を覚えるための一番最初の導入である魔力操作については一対一で指導をする必要があるにもかかわらず、現状では人に魔力操作を指導できる人員がガラクだけなのだ。
このままの状況が続けばガラクがまた潰れ、最終的には指導を受ける側も時間がかかることによって魔法が使えない中途半端な状態で何時迄も過ごすことになれば、あまり良くない未来しか想像できなくなる。
なので、ガラクは今回自分が寝込んだことを切っ掛けに、今のうちから人材を育成することは絶対に必要な措置だと考えた結果だ。
この結論については昨夜のうちにスクラには話をした上で、魔力操作の練習を再開する代わりに最初の指導を行った。
やっていることはガラクが今まで行ってきたことの全く逆なので、魔力操作ができるようになっているスクラにとっては感覚的に捉えやすかったようだ。
話をした際にはスクラがクロスタの魔力操作について指導をすると言う説明をした部分のみ微妙な表情を向けてきたものの、それ以外の説明については概ね好反応で、魔法について新しい技術を習うと言うこと自体が楽しいようだ。
今日からクロスタの魔力操作の指導を一回だけやってみるように指示したことについて、昨夜ガラクに対して練習したことを早速実践できることにワクワクが全く隠せていない状態で学校に向かっていった。
ガラクはその後ろ姿を見届けながら学校の友達にうっかりポロリしませんようにと牙神様に祈った。
スクラを見送った後にクロスタに今日から直接家に来て欲しいことと、ガラクが帰宅するまでの間にスクラと魔力操作の練習をしておくように連絡をしてから出勤した。
職場でパリスと合流後に同じように話をしたところ、ガラクが倒れたことの原因の一端はパリスにもあるんじゃ無いかと考えていたらしく、ガラクに対して謝罪した上でガラクのやり方に全面的に賛同すると回答してきた。
パリスとの魔力操作の練習等を終わらせ、資源が満載の運搬用のヴィークルで社屋に戻ろうと支度をしようとしたところでクロスタから何件か連絡が入っていたことに気がついた。
内容を要約すると詳しい説明求むと言う内容がちょっと不機嫌な雰囲気を載せて届いていた。
クロスタにしてみればガラクの都合で急に予定が変わったのだし、公私にわたり色々と世話になった恩返しの意味で教えているのにクロスタに予定変更の話をしたのだから
から文句の一つもあって然るべきだ。
むしろ他の2人から文句が出なかったことが不思議なくらいだと考えたガラクは、クロスタからの連絡に目を通した後すぐ、ガラクが帰宅した後に説明する旨を謝罪まじりで連絡を入れた。
いつも通りパリスにヴィークルに積んである資源の事務処理を任せ、帰宅の準備のために社屋内をロッカールームに向かって移動していると、事務員のモーラが声をかけてきて帰る前に副社長室に寄るように声がかけられた。
元より副社長室に寄って3日間で遅れてしまっている手続き書類を処理してから帰るつもりだったので、モーラに着替えたら向かうと伝えてほしいとお願いしておき、急いで着替えてから副社長室に向かった。
秘書はいつも通り顎で副社長室の扉を示し、ガラクも慣れたものでいちいち確認せずに扉をノックして入室した。
副社長はいつもと違って書類を睨みつけておらず応接セットの安楽椅子に座ってガラクを待っていた。
「この書類に目を通しながら聞きなさい」
そう言って溜まった書類を提示しながら話し始めた。
今回、ガラクが倒れたことについて副社長も一因になっていると考えていること。
そう考えた理由として、まずはガラクがまだ経験の少ない若い少年だと言うことを念頭に入れず、事務員や秘書に超人的な業務量を1人でこなしていると言われている副社長が日常的にこなしている業務ペースで仕事を振ってしまったこと。
また、先日教えてもらった技術があれば1日の業務量として運搬用ヴィークルを満載にする程度なら問題なくこなせるので日中はゆっくり過ごしているものと思っており、社屋に戻ってから帰宅するまでのそれほど長くない時間の中で、子会社の立ち上げが早い方がお互いの利益のためだと考えて準備万端で業務を詰め込んだ状態で待ち構えていたこと。
ただし、ガラク側の原因として、まずは経営者側である副社長に言い難いこととはいえ、日中に運搬用のヴィークルを早々に満載にしたあと、パリスへの技術指導や自分の技術向上のための修練などを行ってかなり精力的に活動していることや、終業後のクロスタへの技術指導が私生活面でかなり負担になっていることを副社長に伝えておかなかったこと。
それに自信のキャパシティを把握せずに状況に流されて作業量を増やし、挙句、自分のプライベートな時間を完全に圧迫してしまっていることを指摘した。
特に副社長のような有能な経営者や組織のトップに立つような者こそ、プライベートな時間にてストレスを発散することは重要視しており、今後は形だけとは言え子会社の経営者として人を差配する側の立場となるのだから、自己管理はより徹底する必要があると口をすっぱくして言い含められた。
今後は今回のことを反省し、子会社の立ち上げが多少遅くなっても今までよりペースを落とすことにすると言う。
副社長の言に対しガラクがどの位遅くなるのかと確認の意味で問うと、本来は後5日で手続き等が完了して法的に子会社が立ち上げっられるところだったが、寝込んだ時間と作業のペースを落とすことを考慮に入れると概ね追加で6日程必要とのこと。
そういった手続きに詳しくないガラクからしても、ペースを落とした後の期間ですら驚異的な短時間だとわかテロため、ガラクはそれでお願いしますと返した。
「それから、子会社の立ち上げの付随する話なんだけど」
内容を聞くと、子会社に所属する社員とパリスの扱いについてだった。
経営代行を行う人材については現在検討しているが、それなりに誠実で経営者としてそれなりに優秀な人材というとどこへ行っても低て数多なためなかなか難航しているらしい。
事務員についてはR/R社で経験も長く、普段からガラクと仲の良いモーラを子会社への出向と言う扱いで当面の間は派遣してくれるとのこと。
これについてはモーラも了承済みで、所属はあくまで本社であるR/R社であるため、本社からの基本給に加えて子会社から出向手当の支給をする形で現在より手取りをよくすることで合意を得てくれていると言う。
経理についても出稿の希望者を募っているが、こちらについては雇用しているのが男性の事務員ばかりのため、多少年収が上がっても年の若いガラクに使われるのを良しとしない者ばかりで芳しくないので、もしビッグマン関係の伝手で人を募れるのであれば並行して動いたほうが良いとのこと。
正直、ガラクには他に伝手がないが、先日のいざこざ関係で多少の便宜を図ってくれることを期待して連絡を入れてみるしかない。
従業員については本来は資源を用意するのに人では必要ないのは承知しているが、資源を子会社に回収しに行く本社の従業員との窓口として、目端のきくパリスを直接雇用してはどうかと提案があった。
本社としてはシーカーが1人減ったところで大きな減収になるわけでもなく、従業員の育成にかかる費用と言う意味ではまだ働きはじめてそれほど年月が経っていないので問題ない。
それに、ガラクとしても気心が知れた相手がそばに居た方が何かと助かるだろうとの配慮だそうだ。
もし提案通りにパリスを子会社で雇用したいのであればガラクから声をかけるようにと言われた。
今後も一緒に行動した方が何かと都合が良いので有り難く申し出を受けることにし、後ほどパリスには話をすると副社長には返答した。
後は書類手続きの説明と作業を時間まで淡々と進めて終了し退社した。
副社長に呼び止められたことにより帰宅するのに時間がかかってしまったガラクを出迎えたのは、ちょっとニヤニヤしたスクラとちょっと拗ね顔のクロスタだったので説明には時間がかかるかなと思ったものの、説明を受けてちょっと拗ねた表情が残っているものの、帰宅時は家まで送ってほしいというお願いがあった以外は概ね理解して了承してくれた。
いくら今までより早く魔力操作の練習が終わるようになったとはいえ、夕食を摂ってから帰宅することには変わらず、ガラクとしてはそんな時間に女性であるクロスタを1人で帰すつもりは毛頭なかったので話は全くこじれなかった。
話をしている途中で気がついたが、どうやら帰宅前にスクラがクロスタに話をしておいてくれたらしい。
後でスクラに何かお礼を考えた方が良さそうだと心に留め、今までよりも早めに3人で食事をし、クロスタを自宅まで送ってから就寝した。
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