021_ガラクとクロスタ(その2)
金策の相談をした後は、クロスタにとって色々な意味で希望に満ち溢れるガラクから魔法を習う話を進めることにする。
現在、魔力捜査の練習をするための魔法陣は一つしかないので、スクラと相談してクロスタに魔力操作を教える時間を捻り出す必要がある。
平日の夕方はスクラに魔力操作を教えて、学校のない公休日に家に来てもらってクロスタに教えるのがタイミング的にはちょうど良いと感じる。
将来的にスクラの魔力操作の習熟度が魔法陣を必要としないレベルになって魔法を教える段階になれば、魔力操作の練習にはガラクの立ち合いが不要となるはずなので、そこからは二人の訓練を並行することもできるようになるので魔力操作の訓練の頻度を上げればいいと考えた。
「クロスタは学校に行ってるから、基本的には公休日に家に習いにくるのでいいかな?」
すると、それを聞いたクロスタはちょっと怪訝な顔をしながら念の為の確認をとる。
「実際に魔法を使えるようになるのはいつ?」(その頻度だと結構な時間が必要になると思うけど、実際に魔法が使えるようになるのにはどのくらいの期間が必要なのかしら?の意)
そう言われて大まかに考えると、最初の魔力操作を教えるための魔法陣は1つしかないので、スクラに教えるている日と被らないようにする必要があるため、だいたい魔力操作の練習だけで1年程度はかかると思われる。
「・・・1年くらい、かな?」
それを聞いて、クロスタの目つきがキツくなる。
「遅いわ!もっと早く使えるようにならないのっ!?」(すごく嬉しいんだけど、もうちょっと早く魔法が使えるようになる方法ってないのかしら?の意)
「そう言われても・・・」
スクラは耐熱などの魔法が使えるようになることにより、体質的に抱えざるをえない耐熱スーツの着用がという生命維持のために必須な生活環境が大幅に改善するという大きなメリットが存在しているため、本人のやる気と相まってできるだけ優先的に魔法を覚えさせてあげたいし、そのためにも魔力操作の練習を早く終了させてあげるべきだと考えられる。
対してクロスタについては、仕事を紹介してもったり今回の金策の件などで世話になったことについて恩を返すという理由で魔法を教えるつもりはあるものの、スクラのように生活環境や生命維持に差し迫った問題を抱えているわけでもないため、比較した場合にどうしても優先順位が低くなってしまう。
「なぜ!?」(無理を言ってるのはわかってるけど、できれば早く魔法が使いたいなぁ。の意)
問われれば答えることは問題ないので、先ほど説明した内容に加えて初期の魔力操作の練習には魔法陣が必須であること、魔法陣は1つしかないこと、スクラの魔法習得は生活改善に直結するため優先したいことを説明した。
「だったら、もう一つ魔法陣があればいいじゃない」(わがままを言って申し訳ないんだけど、魔力操作の練習のための魔法陣をもう一枚作ることはできないのかしら?の意)
言われて魔力操作のための魔法陣をもう一つ作ることについて検討してみる。
クロスタの魔法を早く使いたいという気持ちもわかるし、魔力操作を覚えるための魔法陣は作成に成功した実績があるので、ノウハウの蓄積をするためにあえて同じ魔法陣を作成すること自体は問題ないと考えられる。
ただ、箱に入ってた魔力結晶の残量がまだあるとはいえ、魔法陣を二つ作るのにかなり消費した。
にも関わらず、最初に作成した魔力結晶を作成する魔法陣がどの程度の期間で使用可能なサイズまで魔力結晶を精製してくれるのか判明していない。
できれば今の魔法陣が最初の魔力結晶の精製を完了し、不明点が判明するまでは魔力結晶の無駄遣いを避けたい。
また、今後の魔法陣作成の効率化という意味でも力仕事を肩代わりしてくれるゴーレム作成に関する作業や研究の方をできれば優先したいのが本音だ。
クロスタに対して、そういった現状を詳しく説明するものの、やはり魔法という未知の技術に興味が尽きないのかなかなか諦めきれないようだ。
「魔法は必ず教えるから、スクラの魔力操作が練習に魔法陣を使わないところまで進むか、魔力結晶の精製期間がわかるまでは我慢してくれないかな?」
結論としては魔法陣を別途作る余裕があるのかどうかわからない現状で、クロスタが早く魔法が使いたいという希望を聞くためだけに予定を変えるつもりのないガラクは、少し強めの口調でそういうと、少ししょげた顔をして黙って頷いた。
今日、クロスタと話しておくべきことは大体終わったので、学校の共通の同級生の話などの世間話をしてから執務室を出た。
クロスタの表情を見た副社長が若干ガラクに強めの視線を浴びせていたのに怯えつつ、二人はそれぞれ帰路についた。
帰宅後、夕食を摂りながら今後の魔力操作の練習の予定について、クロスタに魔法を教えることになったから公休日はそちらを優先したいのでスクラは平日のみで我慢してほしいと話をしたら、憤怒の行そうでテーブルから立ち上がり、
「なんでそうなるの!」
と言う怒声を皮切りに説教がスクラによる説教が開始した。
その説教は魔力操作の練習と並行して行われスクラが就寝するまで続いたが、内容を要約すると、
① お兄ちゃんにあんなに良くしてくれてるクロスタちゃんに対してそんな態度を取るなんてあり得ない、あれだけお世話になってるんだから、魔法を教えた程度じゃ恩返しにならない。
② そもそも1日に1時間程度しか練習できないんだから、 是非、平日のクロスタちゃんの都合がいい日、できれば毎日でも魔力操作の練習のために来てほしい、その送り迎えもすると提案すべき。
③ 練習は帰宅後すぐクロスタちゃんの練習を開始してその間にスクラは夕食、クロスタちゃんを送って戻った後かガラクの夕食後にスクラが練習すればいい。
④ クロスタちゃんのためにその程度の無理はすべき。
⑤ちゃんと頭を働かせれば私でも考えつく内容になぜ思い至らないのか。私が寝たら即連絡を入れて謝るべき。
と言う内容で延々と説教が繰り返され、しまいには就寝前に連絡を入れるのを監視されてクロスタに連絡がついてからベッドに向かうと言う徹底ぶりだった。
言われるがままクロスタに連絡を入れたものの、どう切り出せば良いのかわからないまま数秒すると相手が通話に出た。
『ど、どうしたのよ。何か用?』(こんな時間に連絡してくるなんて珍しいじゃない。何か急用でもあったの?の意)
「さっきのこと、謝りたくて・・・」
『え!?謝る?何を??』
「実は・・・」
それからガラクはスクラに怒られた内容、魔力操作の練習については平日でクロスタの都合の良い日に終業後迎えに行くこと、スクラもう喜ぶので遠慮せずに毎日でも来てくれると嬉しいこと、来れる日は前日に教えてくれると助かることを伝えた。
『え?ガラクの家に行っていいの?毎日?え?じゃぁ明日でもいいの?本当に?』
若干、混乱しているのか口調が戻ってしまっているクロスタの質問にガラクは一言答えた。
「良いよ」
通話の向こうから何やら超音波のような音が響いたかと思うと、バタバタッと言う音が通話の向こうで離れて行った
かと思うと、かなり離れた音声で『ママー!ママー!』と言う声が聞こえ、部屋に人がいないことを検知したのか通話が自動的に切れた。
しばらくすると、クロスタから返信が来たので通話に出ると、今度はガラクがものすごく謝られた。
「大丈夫だよ。それで、最初の魔力操作の練習はいつにしようか?」
クロスタの都合もあると考え、最初の練習日について話題を振ると、ガラクに問題がなければ明日にでもお願いしたいと即答してきたため、就業時間を目処に会社に来て一緒にガラクの家に向かう約束をして通話を終了した。
通話終了後、明日クロスタを安全に送り迎えをするのであればヴィークルを使用するのが望ましいが、ヴィークルモドキは一人乗りなので乗せることができない。
クロスタと話をしている間に当然のことながらスクラは就寝している。
ヴィークルモドキ自体は駆動装置など何もないヴィークルっぽい形を模して素材を繋ぎ合わせただけの塊を移動魔法で動かしているだけのため、ある程度形の整った素材さえあれば作成にそれほど時間を要しない。
今から箱の魔法を発動させた状態で急いで作成すれば、明日、クロスタの送り迎えに使用するためのヴィークルモドキの準備をするには十分な時間がある。
なので、せっかくパリスが箱を出して魔法が使い放題の作業場所を準備してくれたのだからと理由づけをしてビッグマンのビルに向かった。
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