034_ガラクと紆余曲折(その2)
ガラクはクロスタに目配せをした上で、これから話すことはクロスタすら社長や副社長に秘密にしていた話であること、その上で副社長から社長にすら秘密にしてほしいことを話し、クロスタからも絶対に秘密にすることを念押ししてもらって了解の言質を得た。
「まずはこれを見て欲しいんです」
そういうと、副社長の目の前で収納魔法を発動し、その中から衣服の隙間には隠せない片手でギリギリ持てるくらいの大きさのカーボン素材のボックスを一つ取り出して見せた。
「急に空中に黒い物体を出したかと思ったら、こんなボックスを取り出して見せて、手品か何か?」
今までの経験から、初見だとそういった反応が返ってくることは予想できたので、そのボックスをそのまま副社長との間にある応接テーブルの上に置き、同じくらいの大きさのボックスを順番に5個ほど取り出して並べていく。
明らかに服の中には隠しきれないサイズの資源が目の前に積み上げられていくのを見て、副社長の表情は呆れ顔から怪訝を経由して畏怖へと移行していった。
「詳細は話せませんがこの黒い円盤の中に大量の資源を収納することができます。収納量に限界があるのかどうかわかりません」
副社長は未だ信じられないような恐ろしいものを見るような表情のまま、収納魔法に関するする詳細を求めてきたため、居住区の外に堆積している廃棄物の中の最大のコンテナも収納できること、現状、会社が数年かけて処理する廃棄物が収納されており監禁したいこと、そのためには廃棄物処理業社としての体裁があった方が良いと考えていることを話した。
「それだけの資源をどのくらいの期間で収集できるの?」
それは当然の疑問だと思いガラクは素直に回答した。
「実際にやったことはないですが、おそらく1日」
ガラクの回答を聞き副社長の隣でクロスタも驚愕していたが、副社長は何かを考え始めてしまった。
しばらくして再起動した副社長は改めて確認してくる。
「ちょっと待ちなさい、これからの会話はお互いのために録音するわ。私以外に使用できないようセキュリティのかかったクローズな機器だから流出も心配ないわ・・・まず子会社についてあなたの希望は?」
先程まであくまで娘の友達を見守るような目つきだった副社長の顔つきが変わり、ビジネスモードとでもいえばいいのか真剣な表情に切り替わっていた。
「僕達の希望としては資源は毎日決まった時間に子会社の敷地に出すのでR/R社で買い取ってほしいです」
「資源の買取金額は固定だから直接売りにいった方がいいんじゃないの?」
「色々とやりたいことがありまして、その金策のためなので時間が惜しいんです」
「納品する資源の状態は?」
「R/R社で使用している運搬用のコンテナを敷地内に設置してもらえれば、買取所にそのまま持って行けるように分別して詰めておきます。それをR/R社側で運び出しと販売、コンテナの再設置をしてもらえればと思います。指定してもらえれば週の何日目にどの資源をどの程度の分量でといった対応も可能できます」
「職員はどのくらい必要なの?」
「資源の回収は僕1人でできるので回収のための従業員は入りませんが、経理や厚生などの事務を処理してくれる職員は必要な人数雇用したいです」
そうガラク側の希望を話したところで副社長は腕組みをして少し考えるように目を閉じたかと思うと徐に話し始めた。
「ここまでの話を聞く限りできるだけ色々な手間が少ない方がいいなら、年間契約にして毎月の納品量と支払い額を固定額にして余分に納品した分は別途査定とした方がいいわね。そうすれば経理のための事務員も最低限でいいし、納品量の管理も兼務させれば2人程度で事足りるわ。職員数が少ないから庶務的な処理をする職員は1名の合計3名もいれば問題ないでしょう」
そう一気に話をしたかと思うと、
「事務員の雇用に伝手なんてあるの?」
「伝手ですか・・・、ビッグマンのロードにお願いすることもできますが既に問題が起きた後なので避けたいですね。なので、できれば副社長から信用できる人を紹介してもらうのがベターだと思ってます」
「うーん、要望を一つづつ聞いていくのは面倒ね。まず考えられる要望を全部言いなさい」
そいう言われたガラクは、作っておいたメモを見ながらガラクが必要と考える設備などについてあげていった。
・ガラク自身はR/R社へ卸す資源をコンテナに詰める業務以外には携わらず、組織運営の舵取りがで切るような人材を紹介してほしいこと。
・社員は少ないが資源回収とは別の作業を行う必要があるので社屋はR/R社と同等かそれ以上のサイズが必要であること。
・社屋の情報セキュリティの強化が必要で、ビッグマンのロードに業者を紹介してもらう予定だが副社長としては問題が無いか。
・会社設立までの間、資源を積むためのヴィークルを1台貸してほしいこと。
「今の話のうち、組織の運営ができたら基本的に自分で仕事してるからてフリーの人なんていないわ。第一、組織規模が小さいくて契約が年間で1本しかないならそれほどの業務量じゃないわ」
「それでも必要ならクロスタにでも組織運営や経営関係のチップをいくつか使わせて定期的な監査を任せるか、ビッグマンに人の派遣を依頼する方が現実的ね」
ふむふむと頷きながら聴いていると話題はどんどん移っていく。
「社屋については現在予定している子会社の設立についてはR/R社が設立資金を全額出資とする予定だったけど、あなたを代表とした子会社で運営するのであれば、資本金の割合をあなたが過半数を出した形にした方が都合がいいから、できるだけ多く資本金を出してちょうだい。足りない分をR/R社と私個人が出資した形にすればどうにかなるでしょ」
資金について話を聞くと、先日、副社長に買い取ってもらったアンティークの代金だけではとても足りないとのこと。
ガラクの出資金を増やすために、可能なら設立までにもう少し纏まった金額を準備して出資し、残額はR/R社と副社長個人からの出資、残額は毎月の支払金の中から返還して最終的に出資をガラクのみとすることを目標とするのが良いと言われた。
対外的にはこれまで準備した設立前の子会社をガラクが買い取って設立することとなるようだ。
「建物の規模にについては今準備しているもので問題ないと思うけど、回収方法に多大な秘密があるんだから何らかの方法で視線をシールドしないとダメね」
他にも、今後の業務拡大の可能性を考えて初期投資としてそれなりのおおきさがあったほうがいいこと。
子会社設立のために手付を払っている居住区内としてはかなり広い土地を確保しているが、一旦、R/R社で支払いを完了した上で子会社売却に含める形となるとのことを教えてもらった。
なお、社屋の建築については建築ユニットでサイズやレイアウトを決めた上で業者に発注すれば、工事自体は数日で完成するものらしい。
「情報セキュリティについては全くの門外漢だし、機密にすべき内容なんてせいぜい金銭の流れなんかしかないから、ビッグマンのような組織が依頼するような超一流の業者に伝手はないわ。ビッグマンに伝手があるなら全面的にそちらに頼りなさい」
そもそも一般的な企業が使用する情報セキュリティのパックがあって、それでを上回るセキュリティを必要とする企業はほとんどないそうだ。
そういった情報セキュリティー構築について個別対応するような専門の企業もあるにはあるが、基本的に顧客となるのは支配者層であるため、普通に生活していたらその企業に就職でもしない限り伝手などできようがないとのこと。
「最後の会社設立までの間のヴィークルの貸し出しについてだけど、別に資源運搬用のヴィークルがフル稼働している訳でもないし問題ないわ。分別した資源を積んで戻ってくれるなら、査定に色つけてあげるわ」
資源回収後の分別は別の従業員が行なっているので、既に分別した状態なら人手を別の資源に回せるので結果的にはプラスになるため多少色をつけても問題ないとのこと。
「ところで、最後に聞かせて欲しいんだけど・・・」
副社長は多少言い出しにくそうな気配を出しながらもまっすぐに聴いてきた。
「さっきの技術って提供してもらうわけには行かないかしら?」
未知の、それも明らかに儲けに直結する技術を目の前にして聞かずにはいられないだろう。
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