第6話 ロケットワンダー!

「ロケットワンダー1号機発射」

「発射します」


 小型観測機だと味気ないので、名前を付けてみた。

 小型観測機にもいくつか種類があってさ。今回選択したのはその中でも最もシンプルなペンシル型のものである。

 そんで、ペンシル型の小型観測機ってのも何か味気ないのでロケットワンダーって名前をつけたんだ。

 ……自分のネーミングセンスの無さに穴があったら入りたい。

 ロケットワンダーには超小型カメラが搭載されていて、順次撮影した画像を送信してくれる。

 スパランツァーニの「発射します」の合図と同時に地面に立てたロケットワンダーが火花を散らして空へと打ち上がった。

 空へと登っていくロケットワンダーを目で追うも、すぐに見えなくなる。


「さて、映像を確認するか」


 宇宙船のモニター室へ入ると既に二つの映像が映し出されていた。

 どちらもホログラムで表示されているので実体はない。観測機の数を増やせばそれだけ表示されるホログラム映像も増えていく。

 一つは先ほど発射したロケットワンダー1号の映像で、もう一つは惑星軌道上を周回している観測衛星のものだ。

 どうなるかなあ。


「え……」


 発射させてから僅か15分ほどでロケットワンダーからの映像が途切れた。

 状況からロケットワンダーが撃墜されたことは分かるが、何故撃墜されたのか見当がつかない。


「観測衛星はロケットワンダーを捉えたかな?」

「録画映像を出します」


 お、おお。観測衛星の方が捉えていたのか。

 映像を見てみると信じられない光景が映っていた。

 直径15センチくらいの火の玉が突如出現し、ロケットワンダーを粉々に破壊していたのだ。

 火の玉はロケットワンダーより低い高度に現れ、超高速で移動していた。


「う、うーん。場所は隕石が出現したところに近いのかな?」

「20キロほど離れていますね」

「ひょっとして、何者かによる迎撃なのかもしれないよな」

「可能性はあります。自然現象の線も捨てきれませんが」

「よし、次々にロケットワンダーを飛ばしてみよう」

「畏まりました」


 二号機発射。16分後撃墜。撃墜原因は火の玉。

 三号機発射。14分後撃墜。撃墜原因は落雷。

 四号機発射。17分後撃墜。撃墜原因はなんと氷の玉。

 五号機発射。13分後撃墜。撃墜原因は火の玉。

 六号機発射。18分後撃墜。撃墜原因は落雷。

 …………。

 と十五号機まで全部撃墜された。


「こいつは確実に誰かが意図的にロケットワンダーを撃墜している、で確定だな」

「状況分析の結果、98%の確率で人為的であると出ております」

「ロケットワンダーが領空侵犯したから撃墜された、のかなあ」

「どうでしょうか。観測衛星の画像を昨日より解析しておりますが、空を飛ぶ機体は発見できていません。生命体ならいます」

「それって鳥だよな?」

「鳥に似る生命体と翼竜に類する生命体もいます」

「さすがファンタジー惑星。飛竜やらドラゴンみたいなのも空を飛んでいるのか」


 しかし、鳥や飛竜がいるからといっていくつかあるだろう国家が「領空」という概念を持っているのかは疑問だ。

 うーん、とはいえロケットワンダーが撃墜されているからなあ。

 更に宇宙船を隕石で攻撃してきたのもロケットワンダーを撃墜したのと同じ存在で確定となった。

 はっきりした領空についての国際規約やら国内法があるのなら、少し面倒なことになる。

 そこから導き出される答えは――ズバリ、自分優先、我が身の安全確保だ!

 別に俺と攻撃者の国が何らかの契約やら条約を結んだわけじゃないもん。

 

「火の玉や落雷を制御している発信源があるはずだ。場所を特定したい」

「領空侵犯は気にしない、でよろしいでしょうか?」

「今更だと思うんだよね。ファーストコンタクトで隕石で攻撃されたわけだし」

「承知いたしました。十五号機までの撃墜地点を分析いたします」


 ピピピと音がなり、ロケットワンダーの撃墜地点と推測される攻撃者の位置予測が表示された。

 赤い点が撃墜地点で青く塗られた円形が攻撃者の予測位置になる。

 予測位置がまだまだ広すぎるな……。

 

「スパランツァーニ、予測位置をもう少し精微なものにするための案はあるかな?」 

「対応力を推し測るのはいかがでしょうか?」

「おお、アグレッシブだな。それで行こう。観測機はあと何台残ってる?」

「残り80機です」

「そんなにあるのかよ!」

「長期航海、植民用の宇宙船ですから、これでも宇宙船破損時に観測機を失っています」

「それじゃあ、一気に行ってみま……いや、半分の40で頼む」

「畏まりました」


 さて、同時40機発射でどれだけ撃墜できるか見ものだ。

 目標地点は青く塗られた攻撃者の予測位置である。


「発射します」


 同時に40機が編隊を組んで飛んでいく。

 お、おおお。

 一気に5機撃墜された。火の玉と落雷だ。更に氷の玉でも1機落ちる。

 そして、憎き隕石も現れ10機が巻き込まれ破壊された。

 これで終わりかな? 第二射が来るまでどれくらいかかるのか見ものだぜ。

 2分35秒後、第二波が来るもののまだ残り15機ある。

 第三波で残り5機になるが、予測位置の青い範囲は当初の10分の一くらいまで小さくなっている。

 全機撃墜されたところで作戦終了となった。


「映します」


 スパランツァーニの無機質な声と共に大きいスクリーンが出現し街と城の様子が映し出された。

 上空から街と城を撮影し、彼女がモデリングしてくれた画像のようだ。

 親指と人差し指で拡大縮小ができるようになっている。

 街はまさにファンタジーといった感じで、よくゲームで見かける中世ヨーロッパ風味ってやつだ。

 石畳の道に赤と黒の屋根、教会らしき尖塔もある。道行く人は拡大してみないと判別がつなかいな。

 石造りの建物の屋根が鋭角で、雪が降っても落ちるような作りになっているのかな?

 俺にとっては物語の中の風景のようでとても興味を引かれる。

 街の中央は小高い丘になっており、そこには堅牢な城が築かれていた。

 ロケットワンダーを撃墜した要因は城であるとまで特定できている。城に踏み込んで「おはなし」しなきゃならんな。

 まずは街の中に紛れ込むべく準備をしようか。

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