第11話 ファーストステージ〜地下迷宮〜その4
「どうなっている? 巻き添えを食らったらどうするんだ」
「申し訳ありません。私にも何が何だか……」
「今すぐ連れ出せないのか?」
「現在、戦車が地下迷宮内を移動しています。今飛び込んだら我々も巻き添えになる可能性があります」
「じゃ、戦車を止めて……」
駄目だ。今、戦車を止めたらせっかくの盛り上がりが盛り下がってしまう。
身勝手な参加者一人のためにゲーム全体の質を下げる訳にはいかない。
今の仕掛けは止めることは出来なかった。
「黒鉄様。コメントに動きがあります。椎羅千穂李の行動が興味深いとの声で溢れかえっています」
「なるほど。それを利用しない手はないな。仕方がない。どのような行動に出るのか少し泳がせてみよう」
ハプニングが時に良い方向へ動くのもデスゲームを盛り上げる要因になる。
だったらとことん利用するまでだ。
映像は
「死ぬ! あんなものをまともに受けたら死ぬよおおお!」
自分の足とは思えないくらい全速力で地下迷宮を駆け抜ける栗見だった。
移動をしながら戦車は連射する。
「出口。出口はどこ?」
進んだ先で栗見は誰かとぶつかる。
「「痛い!」」
「だ、大丈夫?」
垣根の後ろには米津七海の姿があった。
「あ、良かった。初めて別の参加者に会えた。私、栗見百仁華です。あなたのお名前は?」
「垣根五和。こっちが米津七海……」
「よろしくね。五和ちゃん。七海ちゃん。一人じゃ心細かったんだよ。協力して一緒に脱出しようね」
「脱出どころかゲームオーバーよ」
米津がそう呟いた瞬間である。それぞれ引き連れていた戦車に行く先を塞がれてしまったのだ。
銃口は三人に向けられる。別の参加者に合流できたのも束の間である。
既に三人の逃げ道は絶たれた。
「あんたと鉢合わせたことを一生呪うわよ。栗見百仁華」
「え? ほんとごめん!」
絶体絶命のその時である。
行き止まりの壁が回転し、誰かが手を伸ばした。
「こっち! 早く!」
選択の余地がない三人は顔を合わせて頷き、差し出された手の方向へ飛び込んだ。
寸前のところで戦車による連射攻撃を交わした三人は安堵する。
「助かったよ。あなたはもしかして同じ参加者の……」
「
「ありがとう千穂李ちゃん。まさかこんなところが隠し扉になっているなんて」
甘栗の人懐っこいところは誰に対しても同じである。
助けた早々、椎羅は背を向けて歩き出した。
「あれ? 千穂李ちゃん?」
甘栗に呼び止められた椎羅は振り返った。
「出口まで案内してあげる」と一言そう言って再び歩き出した。
「なんか怪しくない?」と垣根は不審な目を向ける。
「確かに。信用していいのかちょっと……」と米津も垣根同様な反応だ。
すると、甘栗は迷うことなく椎羅の後ろについていく。
「ちょっと、甘栗さん?」
「私はついていくよ。だって私達を助けてくれたじゃない。あの子は信用できると思う」
甘栗は行ってしまう。それを見た垣根と米津は顔を見合わせる。
「どう見る?」
「少なくとも七海についていくより信用できると思う。私、ついていこうっと」
「ちょっと待ちなさい。てか私の方が年上なんだから敬語使え! あんた中坊でしょうが!」
仕方がなくといった感じで垣根も米津も甘栗同様、椎羅についていくこととなった。
その様子を見ていた俺はますます椎羅の行動が分からなかった。
「別の参加者を助けましたね。仲間意識は無いと思っていましたが、これは意外です」と藍華は自分の感想を述べた。
「そうだな」
俺はジッと椎名千穂李の映る画面を目で追っていた。
「死神、戦車。次の仕掛けを発動しますか? それともこのまま素直に脱出させますか?」
「まぁ、せっかく用意した仕掛けを発動しよう」
「かしこまりした」
今回用意した仕掛けはソリットビジョンに映る死神。これは動き回らせるための脅し。そして戦車による死を体感させる演出。最後に用意したのが、迷路の改ざん。
仕掛けを発動した瞬間、壁がスライドして新たな迷路が出来上がる。
「な、なに?」
突然、全体の壁が動き出して参加者たちも不思議な様子だった。
せっかく覚えた通路がリセットされてしまう。
これでは脱出ルートが変わってしまう。
「藍華さん。ついでに脱出路を解放してくれ」
「はい。かしこまりました。脱出路解放します」
これにより通常の脱出が可能になった。
「脱出の方法はシンプル。これに参加者は気付いてくれるかな?」
俺は最後の仕掛けを発動し、後は高みの見物となった。
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