第13話 ファーストステージ〜地下迷宮〜その6


「ダメ。ここも行き止まり」


 甘栗、椎羅、米津、垣根はグループを結成し、脱出ゲームの攻略に苦戦していた。行く先々で行き止まりの連続。本当に出口はあるのか疑問になっている頃である。


「ねぇ、闇雲に進んでも意味無いんじゃない?」


 後ろから見ていた垣根は言う。


「立ち止まったって出口があるわけじゃないでしょ。進むしかないと思うけど」


 垣根の発言に米津は反応する。


「そうでもないかも」


 椎羅は掠れ声で言う。


「どう言うこと? 千穂李ちゃん」


 その時である。


 ゴゴゴゴゴゴッ! と、再び壁が移動して新たな通路が出現した。

 行き止まりだった道は進める状態に変化した。


「こ、これって……」

「おそらく一定の時間になると変化する仕組みになっていると思う。立ち止まることも時には攻略に繋がる」

「ナイス! 千穂李ちゃん。よし! 早速進むぞ」


 真っ先に走り出した甘栗に呼びかけた。


「待って。無闇に行くと……」


 椎羅が呼びかけたその時である。進める先に待ち受けていたのは戦車である。

 最悪のタイミングに一同、背を向けて走り出す。


「やー逃げろ!」


 慣れた手付きで四人は走り出す。

 四人組のグループ結成から戦車と鉢合わせをするのは三回目。

 段々、脱出を阻む仕掛けに慣れてきた様子だ。


「んー。そのまままっすぐ進めたら脱出できたんだけどなぁ」と俺はその様子を見ながら呟いた。


「戦車には死角がありますからね。そこを見破れば進めるんですけど惜しいですね」と藍華は俺の発言に対して補足を加える。


「まぁ、そのうち気付いてくれるさ。今は逃げることに必死。立ち向かう精神があれば攻略は容易い」

「そうですね。あの四人は良しとして残りの六人ですが……」

「ガスを撒いてくれ。それと各参加者の位置に死神を配置してくれ」

「承知致しました」


 期待外れと言ってしまえばそれまでだが、これ以上ゲームを続けても苦しませることになる。だったら一層リタイアさせてデスゲームから解放させてあげた方がいい。

 その証拠に参加者たちは殆ど動けずフラフラの状態だ。命の危険があると言う状況にも関わらず危機感がまるでない。煮るなり焼くなり好きにしてくれと言わんばかり諦めた様子が画面越しから伝わってくる。

 既に最初に監禁された三日間で限界だったのだろう。

 参加者たちのいるエリアに睡眠ガスが噴射された。

 意識を保とうとギリギリもがくのに精一杯と言う様子だ。

 そして用意した死神に大釜で狩る映像を配信した。誰がどう見ても体力の限界で蹲っていたところ仕掛けにより抹殺されたと思うだろう。


「藍華さん。病院の手配を。参加者たちの健康状態が心配だ」

「リタイアした参加者の入院費は経費では落ちませんよ?」

「構わない。俺の自腹でいい。こっちの都合でゲームに巻き込んだんだ。せめて最低限の対応はしてあげたい」

「……分かりました。すぐに病院の手配をします」


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 参加者十名のうち六名。疲労によりリタイア(配信画面には死亡によりリタイアと表示)

一名ゲームクリア(但し再びゲームに戻ったため脱出できなかった場合は失格とする)

 三名現在脱出中


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 途中経過が画面に表示される。

 注目のカードは団体行動を取る四名に絞られた。


「今、六名がリタイアってアナウンスで聞こえなかった? もしかして殺されたってこと?」


 途中経過は参加者の耳にも入る。

 それを聞いた栗見は反応する。


「多分、そうなるよね。つまり残りは私達だけってことだ」


 米津は至って普通の反応だった。


「……これはデスゲーム。負ければ死ぬ。他の人に構っている場合じゃないよ」

と、垣根は前向きな発言をした。


「……そう言うことか」

「え? なに、千穂李ちゃん?」

「攻略法、分かったかも」

 椎羅は先ほど戦車がいたエリアに向かって走り出した。

「ちょ、千穂李ちゃん。そっちは戦車が……」


 甘栗が呼び止めるよりも早く椎羅は戦車目掛けて突っ込んだ。

 すると身体を低く屈めて戦車の下部に回り込んだ。

 スッと戦車の死角に入り、強引に正面を突破した。


「なっ!」

「わ、私たちも行くよ!」


 次に走り出したのは米津である。自慢の身体能力を生かし先ほど椎羅が見せた下部に回り込む方法を難なくこなした。


「ええーい。ヤケクソだ」

「えー行っちゃうの? 行くしかないの?」


 戸惑いながらも二人に続き垣根と甘栗も同じように続いた。

 なんとか強行突破した四人だが、その先はまたしても行き止まりだった。


「ねぇ、自ら挟まれに行っちゃったじゃない! これじゃもう引き返そうにも引き返せないよ」


 困惑する垣根を余所に椎羅はじっくりと壁を睨む。


「……壁の色が違う」

「色が違うから何? どうするのよ!」


 嘆く垣根とは裏腹に椎羅は不審な壁に手を伸ばした。

 すると手は壁を透き通ってしまう。

 そのまま椎羅は身体ごと壁をすり抜けた。


「え? これ、壁じゃないの? ただの映像?」

「私たちも続くよ!」


 頷いて合図をすると全員で壁をすり抜けた。

 すり抜けたその先はゴール。脱出成功である。

 ファーストステージ・地下迷宮。最終結果。


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参加者十名のうち六名。疲労によりリタイア(配信画面には死亡によりリタイアと表示)

 うち四名。ゲームクリア(脱出成功)


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